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リズムチェックかパルスチェックか? [CPRの基礎]

 以前書いた記事のアップデートです。テキストが新しくなっていたためです。気付いていませんでした。

 一次救命処置を行い、病院に到着し、電気ショックも行っている、、、、、、さあ、先ほどのショックから2分たちました!となると、心電図モニターを見て、心室細動が続いているのか、はたしてPEAになったのか、心静止なのか、、、、、、、となります。

 その時に脈拍を触れるべきか?と言うのが今日のテーマです。2分ごとに行うこの処置を、リズムチェックとか、パルスチェックとか言っています。ACLSのテキストには以下のようにあります(英語版しか持っていないので私の意訳)。P.123にあります。

 2分間のCPR後にリズムチェックを行うが、胸骨圧迫の中断を最小限にすることに注意する。
 パルスチェックを行うのは脈が触れそうなリズム(organized rhythm)が存在する場合のみ(リズム解析(リズムチェック?)中が望ましい)であることを忘れない。

 つまり、通常はリズムチェック(心電図モニターの波形を見るだけ)をするのですが、心室頻拍か無脈性電気活動か心拍再開したかと言う波形になった場合にのみ、太い動脈を触ってみると言うことです。この脈をみる行為は「パルスチェック」という名前がついています。脈が触れるかもしれないと考えた場合には「リズムチェック」後に「パルスチェック」を加えるのです。リズムチェック中に行うと書かれていますが、まずVFか心静止以外だと認識ないとパルスチェックできません。

 パルスチェックには、胸骨圧迫を止めて少し待ち(モニターの波形は完全なリアルタイムじゃないですよね)VF、心静止ではないという判断をし、脈を触れるため自分の指を患者さんの頚動脈に近づける、脈が触れるかどうか感じる、、、、、と言う一連の行為が含まれます。慣れた人ならあっと言う間でしょうが、慣れていなければある程度の時間が必要です。この間は当然胸骨圧迫を止めていますから、胸骨圧迫の中断は1秒でも短く!と考えると、どうなのかなと思います。
 また、特に脈を探す時間と、脈が触れているのか?判断する時間が意外に時間がかかります。医者が複数いると、複数の血管を触れたりして、どちらも同じ判断なら良いのですが、偉い方の先生が脈が触れると言ったりなんかするとちょっと大変です。胸骨圧迫を再開するのに躊躇しますから。

 私が関わっている講習会では、脈を必ず触れながら波形の診断をしてもらっています。たぶん少数派であることは認識していますが、理由は以下の通りです。

・胸骨圧迫を止める前に脈を触れる体制をとっておけば、脈を探す時間に胸骨圧迫を中断する必要がありません。脈を触れる行為が胸骨圧迫の中断を長くすると言う認識はありますので。
・脈を触れる行為をすべき波形なのかどうかの判断をしなくて良いです。
・救急蘇生法の指針ー医療従事者用ー2015のP.39には「リズムチェックとは、心電図(ECG)の波形確認を行うとともに、必要に応じて脈拍の確認を行うことである。」と書かれていました。必要に応じて毎回脈も触れちゃいましょう!と言う考えです。
 しかし、2020年度版では改訂になっています。P.39に「リズムチェックとは心電図の波形確認あるいは解析を行うことである。リズムチェックの結果、心室の活動を示すようなQRSが認められた場合には、頸動脈の触知による脈拍の確認が必要である。心室細動(VF)や心静止が明らかな場合は、脈拍の確認は不要である」とあります。

 どちらも間違っているわけではないと思いますが、パルスチェックなのか、リズムチェックなのか、パルスチェックを含んだリズムチェックをすべきなのか?非常にややこしいですね。

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心肺蘇生中に対光反射をみるべきか? [CPRの基礎]

講習会の時に、受講生の方が対光反射を見なきゃ!と言っていました。否定するものではないのでそのままスルーしましたが、果たして対光反射は意味があるのだろうか?と思ったので調べてみました。

結論は以下の通りです。


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低体温の心肺停止患者さんに処置を控えるべきか? [CPRの基礎]

 低体温の患者さんは代謝が低下しているために薬はやってはいけないとか、電気ショックも効果がないからダメとか、色々なことが言われています。講習会で低体温の患者さんのシナリオを出すと、そういった質問が出て、色々困るので(講習会で一番伝えなければならないこと以外の事に注目されるのはよくないです)避けるべきかと思います。

 しかし、質問されたら応えなければなりません。「この心停止の患者さんが低体温だったらどうしたらいいんですか?」と。

 私の答えは以下の通りです。

 低体温は気にせず普通に治療しましょう。
 もちろん、低体温があれば体温を上げる治療を並行して行う必要があります。
 体温をどうやって上げるかは別の機会に勉強してください。

理由を知りたい方はこちらを。


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心拍再開後の昇圧剤はノルアドレナリン? [CPRの基礎]

 週末は神奈川県で講習会でした。私はディレクターだったのですが、ディレクター見習いの方がおられ、私は指導(と言ってもいるだけ(^^))でしたので楽ちんでした。

 色々なインストの方の指導を見学させていただきました。色々勉強になりました。

 そこで、心拍再開後の治療について説明をしているところに遭遇しました。インストラクターの方が「ガイドラインでノルアドが推奨されている」と言っておられて、あれ?そうだったっけ?と心配になり、調べてみたのでここに書いておきます。

 先にいつもの通り結論です。

 ガイドラインとは敗血症のガイドラインと思われます。日本の心肺蘇生のガイドラインに血圧を上げる方法についての記載はありません。
 昇圧剤はノルアドレナリンが一番無難だと思われますが、強く推奨するエビデンスはありません。
 たぶん、まずやることは晶質液(細胞外液補充液、つまり生理食塩水や乳酸リンゲル液など)の輸液です。
 そして、講習会で血圧を上げる方法について議論しない方がいいでしょう。

詳しく知りたい方はこちら。


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2回目のアミオダロンは4〜5分後に打ちましょう、、、、、、、たぶん。 [CPRの基礎]

 こちらの記事のアップデートです。

 アミオダロンは初回300mgを投与し、2回目は150mgを投与、3回目の投与はない等と書かれているのですが、その投与間隔について記載がなかなか見つかりません。前回の記事では4分ごとに投与しましょう(私見)と書きました。5年弱経ち、ガイドラインもアップデートしているので記事も新しくしますが、結論はほぼ同じです。

 日本のガイドラインには以前と同じく記載がありません。

 ヨーロッパのガイドラインも変化はなく、3回目の除細動後に1回目のアミオダロン300mgを投与し、5回目の除細動後に二回目の150mgを投与するとあります(P.118)。ちなみに、アドレナリンは3番目のショック後とあって、ヨーロッパのガイドラインはアドレナリンとアミオダロンを同時にいくみたいです(threeとthirdと表現が変えてあるのですが意味があるのでしょうか?)。
・Give amiodarone 300mg IV(IO) for adult patients in cardiac arrest who are in VF/pVT after three shocks have been administered.
・Give a further dose of amiodarone 150mg IV(IO) for adult patients in cardiac arrest who are in VF/pVT after five shocks have been administered.
・Give adrenaline 1mg IV(IO) after the 3rd shock for adult patients in cardiac arrest with a shockable rhythm.

 AHAは新しいACLSのテキストが現在手元にありませんので、明後日アップデートします。

 そして、他のサイトも色々調べてみましたが、その結論として4〜5分後になりました。こちらのnoteに色々追加で書いたので気になる方はnoteをご覧ください。
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最新のガイドラインでアドレナリンやバソプレシンはどうなったか? [CPRの基礎]

 2020年のガイドラインが出たのに、その話題について何も書いていませんでした。ブログを書くのは結構意欲が必要ですが、さぼっていて済みません。

 さて、今回はヨーロッパ蘇生協議会(ERC)のガイドライン2021からです。日本ではAHA(アメリカ心臓協会)のガイドラインが有名ですが、色々な国がCoSTRという基礎となる資料を基に、ガイドラインを出しています。CoSTRがAKB48で、アメリカではAHA(関西ではNMB48)みたいな感じです。

 今回は血管収縮薬について紹介します。英語が苦手な方は最後に訳を載せていますのでご安心を。

Give adrenaline 1mg IV (IO) as soon as possible for adult patients in cardiac arrest with a non-shockable rhythm.
Give adrenaline 1 mg IV (IO) after the 3rd shock for adult patients in cardiac arrest with a shockable rhythm.
Repeat adrenaline 1 mg IV (IO) every 3-5 min whilst ALS continues.
Consistent with the ILCOR treatment recommendation, the ERC does not support the use of vasopressin during cardiac arrest.
 
 ちなみに、ERCは3連続ショック(2000年ガイドラインまで行われていたもの)を以下の場合に行っても良いとしており、その場合には電気ショック1回と考える(つまり3連続ショックをした場合には、5回電気ショックをした後アドレナリン投与)とのことです。

The use of up to three-stacked shocks may be considered only if initial ventricular fibrillation/pulseless ventricular tachycardia (VF/pVT) occurs during a witnessed, monitored cardiac arrest with a defibrillator immediately available e.g. during cardiac catheterisation or in a high dependency area.
If 3 stacked shocks have been given for a witnessed and monitored shockable cardiac arrest, these initial 3 stacked shocks should beconsidered as the first shock with regards to timing of the first dose of adrenaline.

日本語がいい方はこちら。


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急性冠症候群が疑われる場合に酸素を投与すべきか? [CPRの基礎]

 いつもこの言葉から始めてすみませんが、久しぶりの投稿です。

 蘇生のガイドラインが2020年度版として新しくなりました。日本のガイドラインも昨年出るはずでしたが、色々で少しずつ出ています。今回は急性冠症候群についてのガイドライン2020を紹介します。

 2015年のガイドラインでは、酸素を投与すると心筋梗塞の病変が大きくなる(あるいは酸素を投与しないと小さく済む)という論文があったため、酸素はルチン投与すべきでないとされており、これが誤解されて、酸素投与はしてはいけないという風に広まってしまった気がします。

 確かに酸素は血管収縮作用があり、また酸素が細胞に悪さをする場合もあるようですので、酸素投与にはリスクが伴うのは事実です。しかし、酸素がなければやはり細胞に悪さをします。

 ガイドラインには酸素投与をしてはいけないとは書かれておらず、ルチンに投与すべきでないと書いているのみです。

 ルチンとは、女性を見たら必ずLINEのIDを聞くとか、最初はビールとか、何も考えずに反射的に取る行動のことです。若い女性に限ってIDを聞くとか、今日は居酒屋なのでビールとか、何か考えがあって行うのは全く問題がありません。

 しかし、救急隊の方の中には、酸素をやるべきでないと思っている人がいて、胸痛の患者さんですが、SpO2が95%でしたので酸素はしてきませんでした!と胸をはって答える人がいます。患者さんはかなり胸を痛がっていたのに、、、、、、

 新しいガイドラインはこちらのP.23をご覧ください。

 推奨の文章はあまり変わっておらず以下の通りです。

低酸素血症のない(注1)AMI(急性心筋梗塞)またはその疑い患者(注2)に対して、ルーチン(注3)の酸素投与(注4)をしないことを提案する。(弱い推奨、エビデンスの確実性:非常に低い)。

注1:試験によって異なるが、正常酸素飽和度の定義をSpO2≧90%とする(これまで報告されたRCTの中でDETO2X-AMIの登録症例数が一番多く、inclusion criteriaがSpO2≧90%であったため)。なお、低酸素血症はPaO2≦60mmHgのことであり、SpO2では90%以下が該当する。
注2:AMI患者のうち、MIの既往、高度のCOPD、呼吸不全、心原性ショック、中心性チアノーゼ、その他の原因による呼吸困難を除外したもの。
注3:SpO2が90%以上であっても、頻呼吸や起坐呼吸、心原性ショックには酸素投与が必要。
注4:試験では6L/分以上の酸素マスク投与

続きを読みたい方はこちら


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蘇生をいつ中止するのか? [CPRの基礎]

心肺蘇生は成功するよりも不成功に終わる方が多いです。治療に全然反応しない場合には、残念ながら、どこかで蘇生を辞めざるを得ません。いつ頃辞めるのが良いのか?多くの医療スタッフが悩む問題です。

一つの方法をご紹介します。それはカプノグラフィーを使う方法です。ヨーロッパ蘇生協議会のガイドライン2015に書かれています。蘇生を開始してから20分後の呼気二酸化炭素分圧が10mmHg以下であれば、蘇生の中止を検討しても良いかも知れません。

原文はこちらのP.112にあります。以下は引用です。

Low end-tidal CO2 values during CPR have been associated with lower ROSC rates and increased mortality, and high values with better ROSC and survival. Failure to achieve an end-tidal CO2 value >1.33 kPa (10 mmHg) after 20 min of CPR is associated with a poor outcome in observational studies. In addition, it has been used as a criterion for withholding extracorporeal life support in patients with refractory cardiac arrest.

日本語がいい方はこちら。


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VFからPEAになりました。さっきのアドレナリン投与から3分たっていないのにアドレナリンを打って良いのか? [CPRの基礎]

 前回の記事の続き?です。蘇生の講習会では以下のようなことがあります。

 心室細動(VF)のシナリオを実習中。電気ショックを1回行っても心室細動が続いていたので、もう一回電気ショックを行い、アドレナリンを投与しました。そして、先ほどの電気ショックから二分たちました。
 受講生A 「リズムチェックをします!おっ!波形が変わりました。サイナスリズムですね。でも脈が触れません。PEA(無脈性電気活動)です。」
 受講生B 「胸骨圧迫を再開します!」
 受講生A 「PEAですので、アドレナリンを投与します。ルートはすでに確保されていますので、アドレナリン1mgを投与して、生食20mlで後押し、点滴の入った上肢を10〜20秒挙上してください!」
 受講生C 「先ほどのアドレナリン投与からまだ2分しか経っていませんが、、、、、、」

 優秀な受講生Aさんは、「では、アドレナリンを今から1分後に投与することにしましょう。」とか「いや、PEAではアドレナリンの投与が優先されますから、1回ぐらいはいいです。」とか言うでしょう。しかし、慣れていない受講生Aさんだったりすると「えっ!?PEAのアルゴリズムを見ると最初にアドレナリンとあるし、、、、、(どうしよう??)」となるかも知れません。

 どうしたら良いのでしょうか?

答えを知りたい方はこちら。


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