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肺塞栓に気をつけましょう [研修医教育]

 救急の分野で是非読むべき本は?と聞かれたら、私はこの本を必ず挙げます。皆さん是非お読みください。


ER・救急のトラブルファイル―診察室のリスクマネージメント

ER・救急のトラブルファイル―診察室のリスクマネージメント

  • 作者: 太田 凡
  • 出版社/メーカー: メディカルサイエンスインターナショナル
  • 発売日: 2007/03/01
  • メディア: 単行本



 これだけで終わってはいけないので、少し書いてみます。この本は、ERで実際にあったと思われる失敗例を紹介しています。最初の章は患者さんとの対応の問題、第二章は肺塞栓、第三章は医師間のコミュニケーションの問題という内容です(以降心血管系、頭部外傷、、、、、、、と第14章まであります)。

 前書きに書いてあります(私は前書きを読むのが好きです。前書きを読んで、その内容によって、その後を読むかどうか決めます)。この本の症例は、全てカンファレンスで取り上げた物で、カンファレンスで取り上げる場合、必ず担当医には今度のカンファレンスで先生の担当した症例を取り上げますと伝えてあるので、今回の症例について何も言われていないと言うことは、自分の担当した患者さんではないと言うことなのですが、カンファレンスが終わると多くの医師が、その患者の詳細について確認に来るのだそうです。つまり、それは俺の患者じゃないのか?と言うのです。それぐらい皆同じような失敗をしているのだと言うことです。

 そして興味深いのは、第二章は肺塞栓だと言うことです。それだけ肺塞栓は失敗が多いのでしょう。

 さて、今から患者さんの診察をお願いします。50歳の女性が呼吸困難で来院されました。意識清明で、呼吸数が35/分以外にバイタルサインに異常を認めません。SpO2は97%でした。
 ルームエアーでの血液ガスデータを示します。

pH 7.451
PCO2 20.7 mmHg
PO2 103.2 mmHg

 この患者さんを過換気症候群だと診断して、家に帰してしまう方はいないでしょう。何しろ今肺塞栓の事を書いていたのですから。しかし、いきなりこう言った患者さんを診察したら、肺塞栓を疑えますか?肺塞栓だったらSpO2はもっと低いはずだと思っていませんか???

 A-aDO2を計算すると21で、まあ高くないと言えば高くないし、年齢×0.3以下が正常だと言う基準を使えば高いですし、、、、、、、担当された先生は、すぐに肺塞栓を疑って造影CTを撮像したところ、両肺動脈に塞栓を認めました。

 過換気症候群の患者さんのSpO2は99%以上だと思います。それ以外は肺塞栓を否定できません。肺塞栓は怖い病気ですから、やはり救急外来ではA-aDO2を計算するために血液ガス分析を行ったり、造影CTを行ったりする必要があるかも知れません。

 また、この値を見たら、やはり酸素投与をした方が良いでしょうね。SpO2が97%もあるのに酸素がいるの??と言う意見もありかも知れませんが、この患者さんは、肺塞栓によって低酸素になったので、頑張って過換気をしてPCO2をなんとか下げてPO2を挙げているわけですから、今のままの頑張りを強制するのは良くないと思います。酸素投与をして直ちにヘパリンを投与するべきですね!

ちなみに、、、、、、


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血液ガスについてのブログを始めました。 [研修医教育]

 救急外来では血液ガス分析を頻繁に行っています。たぶん一番オーダー数が多いのは救急部でしょう。

 よって救急医は、血液ガス分析について精通していないといけません(が、出来てない、、、、、、)。よって、ブログを作ることで勉強しようと考え、以下のブログを作りました。

https://kekimura99.blogspot.jp/

 良かったらご覧ください。本当は以前個人的なことを書くために作ったのですが、ほとんど放置で記事も数個しか書いてませんでした。これから頻繁にアップする予定です。ご意見頂ければ幸いです。

 可能であれば、血液ガスについての本を出せたらいいななんて思ってます(^^)。


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ボタン電池を飲み込んでしまった場合 [研修医教育]

 ボタン電池はとても便利な物で、この電池があるために色々な電子器具が使えます。ただ、これはとても小さいために、救急外来にはボタン電池を飲み込んでしまったという人がたまに来られます。

 水銀やリチウムが含まれているから中毒になるのではないか?
 電流が流れて穴が空いてしまうのではないか?

 等と心配になりますね。今回はそれについて書いてみます。

 まず、英語が得意な方は、こちらのガイドラインを是非ご覧ください。良くまとまっていて参考になります。

 釈迦に説法かも知れませんが、これはアメリカのガイドラインであり、レントゲンを撮らなくて良い条件を一生懸命述べていますが、日本では不要だと思います。レントゲンを撮らなくて満足してくださる患者さんやご家族はいないと思います。日本の医者は、レントゲンを撮らなくて良い条件は?と言うことを考えなくて良いので、日本はいい国ですね!

 それから、金属の中毒になるのでは?と言う心配は不要です。ガイドラインにも「Blood or urine concentrations of mercury or other battery ingredients (unnecessary)(水銀やその他電池の成分の血液、あるいは尿検査は不要」とあります。

穴が空いてしまうのでは?と言う点について


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インスリンはブドウ糖と一緒に点滴しましょう [研修医教育]

 今調べていたのですが全然ヒットしないので、これは私の考えだけですのでその点ご注意ください。

 糖尿病性ケトアシドーシスなどでインスリンを持続で投与したい場合、点滴ルートが複数あるのなら、必ずブドウ糖の入った点滴を流しているルートからインスリンを投与すべきだと習いました。

 もしインスリンが入っているルートには糖が入っておらず、他の点滴がもしもれたり、自己抜去されたりしたら、インスリンだけが投与されて低血糖になる危険があるからです。

 しかし、最近看護師さんにそのことを伝えたら、聞いたことがないと言われました。が、たぶんですが、ブドウ糖とインスリンは同じルートから投与した方が良いです。もちろん持続投与はあまりすべきじゃないのかも知れませんが、もし行うならそうした方が良いと言うことです。

 インスリンは点滴バッグや回路に吸着されるからアルブミンと一緒に投与しなさいと研修医の時に習いましたが、今はそんなことする人いないでしょうね(^^)。


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TIAは意識障害を伴いません(原則として) [研修医教育]

 こちらの記事のアップデート版です(と言うかまじめに書き換えただけ(^^))。

 一過性脳虚血発作と言う病気があります。英語ではtransient ischemic attackと言うのでTIAと言う事が多いです。脳の一部の血管が突然つまってしまい、脳の機能障害が発生したのですが、短時間で詰まった原因が改善(多くは血の塊です)するために、脳の機能障害も消えてしまうと言う病気です。

 名前から、どうしても一時的な意識の消失という印象を受けてしまいます。私も偉そうに書いていますが、TIAは短時間の意識消失を伴うと数年前まで思っていました。

 きちんと理解しておきましょう。短時間の意識消失は「失神」です。これはほとんど脳が原因ではありません。血圧が一時的に低下したというのが原因であり、出血や心臓(不整脈も含む)、薬の影響、迷走神経反射などを考えます。クモ膜下出血のこともあるようですが。

 TIAは意識消失を伴う必要はありません。と言うか、ほとんど伴いません。是非覚えておきましょう。

 意識障害というのは、脳幹の障害あるいは両側大脳の広範囲の障害が起こらないと発生しません。
 脳梗塞が両側の大脳に一度に起こると言うことは考えにくいでしょう。
 脳幹に行く血管も複数あります。こちらも両方がいっぺんにつまって、短時間で回復するという病態は考えにくいです。

 よってTIAでは意識障害を伴うことはほとんどなく、もし脳幹のTIAであれば、意識障害は長く続き、麻痺などの脳神経障害が残っていることが多いそうです。

 TIAは脳梗塞の前触れと言われていて、見つけたら直ちに抗血小板療法(心房細動が原因と思われれば抗凝固薬)が必要です。救急外来で見逃さないようにしましょう。

 こちらの判例をご覧いただければ、きっとしかり勉強しようと思うはずですので是非ご覧ください。

 医師も人間で、全てのことを知っているわけではありませんし、ミスもあります。ただ、自分の反省も含めて、分からないことがあれば、それを放置しないことが大切です。

 判例の場合、当直の先生は、夜中に検査できないからと言って帰すのではなく、誰か分かる人に電話で相談するのがよかったでしょう(私も時々当直していますし、コンサルトの困難さについてはもちろん理解しています)。
 次の日に診た先生はある程度仕方ないでしょうね。MRIまで撮像していますから。ただ、TIAは意識障害を伴うことがまれだと言うことを知らなかったのが悲しいことなだけです。これは医学教育の問題ではないかと思います。ただ、この先生も、なぜこの患者さんがお釣りをこぼすような事が起こったのか?追求する必要があったでしょう。

 しかし、過去の交通事故のせいだと決めつけてしまいました。これも有り得る話です。忙しい外来の時にはなおさらです。アンカリングエラーと言うようですね。

 我々臨床医は、患者さんに起こった問題について、徹底的に追求すると言う事を忘れないようにしたいですね。実際は忙しくてなかなか出来ないのですが、忙しいからと言うことで許してくれると言うのはこちらの勝手な理屈ですよね。

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血液検査は絶対量を示しません。 [研修医教育]

 突然ですが、学生時代に腎臓内科の先生が何かに書かれていたことをよく思い出します。患者さんの塩分制限についてです。

 腎臓が悪い患者さんは塩分の制限が必要です。腎臓から塩分を排泄する能力が低下していますから、体に塩分がたまってしまい、心臓に負担がかかったり呼吸が苦しくなったりするからです。夏の暑い時や体調が悪くなった時に腎臓が悪くない人でもご飯が食べられない場合があります。そういう時には、いつも食べられない濃い味の食事を摂っても良いんですよと言う内容の文章でした。なるほど、そうだよね。濃いものでも少量だったらいいよねって思いました。泡盛はアルコール濃度がとても高いですが、少量なら酔わないかも知れませんし、ビールでも大量に飲めば酔うでしょう。

 血液検査にも同じ事が言えます。ナトリウムが高い、SpO2が100%、Hbが15である。これは体内にナトリウムや酸素、Hbがたくさんあることを直接は示しません。あくまで濃度だけです。採取した血液内の濃度が高い、それだけです。

 しかし、カリウムがそうであるように、なんとなく検査の値が高いと、体内でそれが増えていると思い込んでしまいます。

 今回はそれについて考えてみましょう。

 まずカリウムです。カリウムも他の検査と同じように、検査の結果は濃度を示すだけで、体内の総量を直接示しません。しかし、カリウムは細胞内に多く含まれる電解質ですので、血液中の濃度が低い場合には、例外を除いて体内の総量は少なくなっています。血液中のカリウム濃度が低下すれば、細胞内からカリウムが出てきて補正するはずで、そう言う機能があるにも関わらず血液中のカリウム濃度が低いのです。細胞内のカリウム量は少なくなっているはずです。
 これは、カリウムが細胞内に多い電解質だという特殊な条件があるからこそです。

 ナトリウムは細胞内より細胞外に多いため、ナトリウムの濃度、つまりナトリウムと水の比率しか示しません。高ナトリウム血症であっても、ナトリウムは足りない場合、正常な場合、過剰な場合があります。血液検査以外でナトリウムの総量がどうかを想像しなければなりません。それは病歴やバイタルサイン、浮腫や胸腹水の有無、尿量などから想像します。

 SpO2は別の所で書いたと思いますが、末梢へ運ばれる酸素の量は以下の通りです。

 末梢へ運ばれる酸素の量=心拍出量×動脈血酸素含有量
 動脈血酸素含有量(CaO2)=ヘモグロビン結合酸素+溶存酸素
 ヘモグロビン結合酸素=1.34×Hb×SpO2
 溶存酸素=0.003×PaO2

 つまり、末梢に運ばれる酸素の量は、SpO2以外に、心拍出量、ヘモグロビン濃度、PaO2の3つが関連しています。SpO2が100%であっても、心拍出量が減少していたり、Hbが低下していたりすれば充分な酸素が運ばれません。SpO2が100%であっても酸素を投与してPaO2を増やしたりすれば、溶存酸素が増えて、末梢組織に運ばれる酸素の量は増えます。

 Hb値についても同じです。急性出血の時には、濃度が低下しませんから、正常値だったりします。低下してくるのは輸液をした後だったり、時間がたって細胞外液で血液が薄まってきた時です。Hbの値が良いから出血はしていないとは言えないのです!脱水があったりすれば、本当はHb量が減っているのにHb値は正常だったりします。

 血液検査の結果は濃度しか示しておらず、全体量を直接示すわけではないことをよく覚えておきましょう。

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SpO2か?SPO2か?それが問題だ [研修医教育]

 救急外来ではSpO2(えすぴーおーつー)と言う言葉が飛び交います。

 これはパルスオキシメーターという器械を使って血液中の酸素を測定したもので、この値が90%を切ると結構ヤバいです。パルスオキシメーターについては別に記事を書きますので、よかったらご覧ください(明日以降)。

 この値をSPO2と書く人がいます。たぶん、間違いだと思いましたが、ちゃんと調べないといけませんので調べてみました。

 こちらのリンクをご覧戴けば解決するのですが、SpO2やPaO2などの最初の記号は大文字です。一次記号と言うようです。
 Sは飽和度、Pは分圧、Vは容量と言うことです。

 二番目の文字は小さく書きます。二次記号と言うようです。これはどの部位の事を言っているのかを表すようです。それが気体であれば大文字、液体であれば小文字だそうです。
 aは動脈血、Aは肺胞、Tは一回換気と言うことのようです。

 三番目はその物質の名前です。O2は酸素、CO2は二酸化炭素と言うことです。が2も本当は小さい字にしないといけないのでしょうね。

 よって、SaO2は動脈血酸素飽和度、PAO2(二次記号のAは小さい字にします)は肺胞気酸素分圧、VT(Tも小さい字です)は一回換気量と言うことになります。

 さて、では二次記号のpはどう言う意味か?と言うと、経皮的という意味のようです。経皮的ではありますが、動脈血なので液体だから小文字になります。SpO2が正しいようですね。

 SVO2(本当はSVバーO2)のvは大文字ではなく小文字だったのですね。知らなかった!!サントリーが今のロゴを発表した時に、どうしてUとNは小文字なんですか?と質問されたら、SとOも小文字ですが何か?と言われたと言うエピソードを思い出しました。

 この動画サントリーの公式な者だったのですね。知りませんでした。


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成人用の点滴回路は20滴で1mlです [研修医教育]

 ええっ!!?!知らなかったシリーズ!!です。

 病院では点滴が頻繁に行われます。こちらのリンクのようなチャンバーと呼ばれるところで水滴がポタポタと落ちますよね。チャンバー内をどのぐらいの早さで点滴薬が落ちるかで、患者さんにどのぐらいの早さで薬剤が投与されるのかを調節しています。

 点滴の回路には小児用と成人用(他にも色々ありますが)があります。小児用は成人用に比べてゆっくり点滴を落とすために使います。決して小児にのみ使うわけではありません。小児用では、1分間にチャンバー内で落ちる水滴の数ml/時の速度で点滴が投与されます。例えば1秒に一滴落ちるように看護師さんが調節したら、1時間に60mlの点滴が落ちるという訳です。
 どうしてそうなるかと言えば、計算すれば分かるのですが、この小児用の回路では、60滴が1mlになるように作られているからです。

 成人用は15滴で1mlだったり、20滴で1mlだったりしていたようです。私が研修医の時に働いた病院では、15滴で1mlのものだっだようです。点滴の落ちる速度は、チャンバーで1分間に落ちる水滴の数×4ml/分だと思っていました。しかし、こちらのリンクによれば、平成21年に20滴で1mlに統一されたようです。点滴の滴下数を合わせることをしないので知らなかったとは言え、いけませんでした。

 現在は、成人用の点滴回路は、1分間の滴下数×3ml/時になると言うことです。医療職は日々勉強しなければいけませんね。だんだん歳をとってくると勉強するのが辛いですが(^^)。

 FBにこの事を書いたら、知らなかったと言う人が結構いたので、ブログの記事にしてみました。


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当直時はミスをするものだと考えて仕事をしましょう [研修医教育]

 研修医(研修医がもう20年以上前の私でも)の先生の大事な仕事の一つは当直です。当直は本来寝る時間に仕事をしていますから、疲れたり、判断が鈍ったり、その他色々でミスをしやすいです。

 救急外来を受診され、医師が入院の必要はないだろうと判断した患者さんの200人に一人ぐらいは入院が必要だったそうです。つまり0.5%の確率で誤診をすると言うことです。

 誤診の頻度については色々言われています。昔東大の有名な先生が退官する時に、私の誤診率は30%程度だと言ったのを、一般の人はそんなに誤診するのか!?と思ったが、医師は、やはり名医だなと思ったというお話があります。

 よって、この0.5%が高いのか低いのかは分かりませんが、もし、この様な比率でミスが発生すると仮定した場合、当直を何回かして、患者さんを延べ200人診た場合、ミスをする可能性はどのぐらいなのでしょうか??

 計算については、こちらのサイトをご覧ください。簡単に言えば、ミスを一度もしない確率は1−0.005の200乗(指摘を受けて訂正しました)ということです。それを100%からひけば良いです。

答えを知りたい方は、、、、、、、、


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急性腹症の患者さんに痛み止めを使ってもよいのか? [研修医教育]

 急性腹症は、激しい腹痛により救急車で来院するような病気の総称です。原因は色々なので、早期の診断が大切です。

 しかし、私が研修医の頃は、腹痛があるからと言って、鎮痛剤を使ってしまうと所見が軽くなったりして診断に影響するから、診断がつくまで痛み止めは使ってはいけないと言われていました。例えば手術が必要なほどの患者さんはお腹が板のように硬くなることがありますが、痛み止めを使うとそれが消えてしまって、手術の開始が遅れて患者さんに不利益が及ぶというのです。しかし、自分が激しい腹痛を感じた時、それに同意できるのでしょうか???そして、以下のように、鎮痛剤を使っても診断に影響はないという文献もあるようですから、是非鎮痛剤は使って欲しいですね。

「成人の急性腹症を対象とした、オピオイドによる鎮痛薬の影響を検討した8つのRCTのシステマティックレビューによれば、成人の急性腹症症例において鎮痛薬(オピオイド)を使用しても、診断、治療に影響を与えず、有意に患者の腹痛、苦痛をやわらげる(レベル 1)。」(急性腹症診療ガイドライン2015、P.164

 私の指導医は、こう言ったガイドラインが出る前から、「痛いのは可哀想だから、早く痛み止めを使ってあげて!」と言う先生でした。「診断に影響が出るのでは?」と聞いたら、「痛いものは痛み止めを打っても痛いでしょう!」って言ってました。

 以下はガイドラインの項目です。参考までに抜粋します。

急性腹症の腹痛にはどのような鎮痛薬を使用すべきか?

原因にかかわらず診断前の早期の鎮痛薬使用を推奨する。
痛みの強さによらずアセトアミノフェン 1,000 mg *静脈投与が推奨される(レベル 1,推奨度 A)。
痛みの強さにより麻薬性鎮痛薬の静脈投与を追加する。またブチルスコポラミンのような鎮痙薬は腹痛の 第 1 選択薬というよりは疝痛に対して補助療法として使用される(レベル 1,推奨度 A を参照)。
急性腹症ではモルヒネ,フェンタニルのようなオピオイド(レベル 1,推奨度 A)やペンタゾシン,ブプレ ノルフィンのような拮抗性鎮痛薬(レベル 2,推奨度 A)を使用することもできる(CQ92)。
NSAIDs は胆道疾患の疝痛に対しオピオイド類と同等の効果があり第 1 選択薬となりうる(レベル 1,推奨度 B)。
尿管結石の疝痛には NSAIDs を用いる。NSAIDs が使用できない場合にオピオイド類の使用を勧める(レ ベル 1,推奨度 A)。

 尿管結石の時には第一選択でNSAIDsとは知りませんでした(^^)。

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