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乳酸アシドーシスの患者さんに乳酸リンゲル液を投与して良いのか? [医学関連]

 今日も昨日の文献からです。

 Ringer’s lactate is often avoided in septic patients secondary to the fear of worsening lactic acidosis. This is also untrue, as the content of Ringer’s lactate is sodium lactate, not lactic acid. Administration of Ringer’s lactate will cause an excess of lactate, which will be utilized by the body for energy. However, in today’s practicing culture, there tends to be an emphasis on blood lactate levels.[3] This emphasis can lead to confusion in the interpretation of lactic acid levels. The adverse effect of worsening a lactic acid is not seen with Ringer’s lactate. 乳酸リンゲルは、乳酸アシドーシスを悪化させるのではないかと恐れて、しばしば敗血症の患者さんで使われない。これも正しくない。乳酸リンゲルの成分である乳酸は、乳酸ナトリウムであり、乳酸(lactic acid)そのものではない。乳酸リンゲル液の投与は乳酸イオン(lactate)の過剰を起こすが、乳酸イオンは生体のエネルギー源として利用される。血液中の乳酸(lactateなので乳酸イオン)値は、現在の臨床では非常に重要視されているが、乳酸イオン値の解釈に混乱を招く可能性がある。乳酸リンゲル液の投与により、乳酸そのものの上昇は認められない。


 それから乳酸リンゲル液を投与しても乳酸イオン値は上昇しないという文献もあります。動物実験ですが、肝切除をしても大丈夫だったとかです。乳酸イオンは1日に1200mmol/L作られるらしいですが、乳酸リンゲル液1Lには28mEqの乳酸イオンが入っています。1日量の約40分の1ですので、大したことないのかも知れません。

 また乳酸イオン値上昇は、色々な病態の予後と関連するなどと言われていますが、それは乳酸イオンを上昇させるような病態が悪いのであり、乳酸イオンが上昇するのはその結果であって、乳酸イオンを外から入れても大丈夫だという意見もあります。例えれば、CRPが高い患者さんに、外からCRPを点滴しても悪いことは何もないでしょうと言うことです。

 以下の本のP.432-436には、ピルビン酸から乳酸イオンが作られる時には、水素イオンが消費される(ピルビン酸+NADH+水素イオン→乳酸イオン+NAD)ために、アシドーシスにはならないという文献が紹介されています。乳酸アシドーシスでアシドーシスになるのは、乳酸イオンを作るためにATPが分解され、その際に水素イオンが放出されるためではないかとのことです(ATP+水→ADP+リン酸+水素イオン)。こちらの資料には、TCA回路はATPを早く作ることが出来ないので、代謝が亢進した時には乳酸が大量に作られると書かれています。
 グルコースを分解するにはNADが必要で、そのNADを作るために乳酸が作られるのだそうです。


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 よって、乳酸リンゲル液を避けるべき病態はありませんので、救急外来で迷ったら乳酸リンゲル液を点滴することをお勧めします。もちろん、これこれこう言う理由で生理食塩水の方が良いとか、この人はブドウ糖が良いと判断された場合には、乳酸リンゲルでなくて良いと思います。酢酸リンゲルや重炭酸リンゲル液も使って良いと思いますが、あえてそれらを使うべきだと言うエビデンスはまだないと思われます。
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