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外傷が重症かどうか、患者さんの身体の状態だけで決めてはいけません。 [研修医教育]

 自分では常識だと思っていたのですが、そうではないことがたくさんあり、多くの人に知って頂くために色々書くことにしました。何でお前は知らないんだ!と言っても仕方ないですから(私も知らないことばかりですし)。

 今回は高エネルギー外傷についてです。以前どこかで書いた気がしますが、外傷という言葉の意味についてです。外傷は、人体が(我々はヒトを相手にしていますから)何らかのエネルギーを受けたという意味です。例えば、熱湯を浴びてしまったのですが、何ともないと言う状態であっても、熱エネルギーを受けたので、熱傷です。殴られたのですが、何ともないという場合も、打撲という外傷です。
 つまり、外傷(英語ではtrauma;トラウマと言います)は、人間の身体の反応を問わない言葉だという事です。そう言う意味では精神的なトラウマは正しい用語だという事になるでしょう。

 何故こんな事を考えるかというと、外傷は受けたエネルギーが大きいと重症だと考えなければならないからです。

 熱傷は5日ぐらいは進行することがあるそうです。受傷当日は少し赤いぐらいだったけれど、翌日には水疱が出来ているなんて事は良く経験します。
 交通事故で特に異常がなかったけれども、翌日体調が悪くなって検査をしたら脳出血があったとか、腹腔内出血があったとか、そんなことはよくあります。

 それらの外傷患者さんでは、たぶん相当熱いものに触れたのでしょうし、交通事故なら相当のスピードだったのでしょう。外傷では特に受けたエネルギーの大きさを考えなければならないのです。

 ポットで沸かしたばかりのお湯とか、天ぷら油とかなら相当の熱エネルギーでしょう。低温であっても一晩中当たっていたとかならエネルギーは大きいでしょう。駐車場からバックで出ようとした車とぶつかったのと、高速道路で事故をしたのとではエネルギーの大きさは違うでしょう。

 よって、救急関係者は高エネルギー外傷という言葉をよく使います。定義は色々で、細かいことを覚える必要はなく、疑いで充分です。

 高エネルギー外傷だと考えたら、本人がピンピンしていても入院してもらいましょう。もちろん、その前に当然全身を調べて異常がないかチェックが必要ですが。

 以下に私の失敗例、経験例を挙げましょう。

・車が電柱をなぎ倒して田んぼでひっくり返ったと言う若い男性は、研修医だった私には異常がないと思えましたが、腹腔内出血があり、緊急手術となりました。大網と大腸は30cm程度の長さに渡ってくっついているのですが、それが血管一本しか繋がっていませんでした。
・ピザの宅配便の患者さんが事故って来院。左肩が痛いだけでした。脾損傷の時に左肩が痛くなるのはKehr徴候と言って有名な所見だったのですが、まだ27歳の青年外科医でモテモテ(だったら良かったのですが)の私はそれを知らず、帰宅させようとしていたところ、会計の前でふらついて倒れて、脾損傷だと分かり入院してもらいました。保存的治療で済んだので良かったですが。

 外傷の患者さんが来られたら、色々な事から受けたエネルギーの大きさを想像し、高エネルギーと判断したら即入院です。以下に受けたエネルギーが大きいと思われることをいくつか書いておきます。参考にしてください。

・患者さんの身体(から判断してはいけないと良いながら、これを書くのはいけないかも知れませんね)
 骨盤骨折がある 骨盤は丈夫な骨です。骨盤骨折=高エネルギー外傷と考えてください。
 折れにくい肋骨が折れている 第1、2肋骨は鎖骨に守られていますし、第11、12肋骨は遊離肋と言って動くので折れにくいです。これらが折れていたら高エネルギー外傷と考えて良いと思います。
 横突起骨折がある それほど折れるとは思えない部位にあります。

・車が横転した 車は相当傾かないと倒れない構造になっているようです。1トン以上ある思いものがひっくり返るという事は、相当なエネルギーを受けています。こちらの資料を見ていただくと、横転した事故では死亡率が高いことが示されています。
・車が大破した 車の破損状況を救急隊の方は見せてくれます。研修医の先生方は、是非見せてもらいましょう。

 と言う事で今年もよろしくお願いいたします。

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