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在宅介護と救急医療の問題点 [医学関連]

 在宅医療と救急医療はあまり関係がないように思う方がおられるかも知れませんが、意外に関係があるのです。今日はその中の一番最後の問題について知って頂ければ幸いです。

 癌の末期などで自宅で過ごすことがあります。積極的な治療をすると患者さんが苦しむので、もう自然に任せていきたい、、、、、、、心臓が止まった場合には、当施設から担当者が自宅に伺いますので連絡してくださいとお話ししておきます。もちろん、電話の所に分かりやすく電話番号を貼っておいてもらいます。もちろん心肺蘇生なんてしません!

 しかし、いざという時は、人が亡くなることに慣れている人なんて少ないですし、急変したと感じることも多いようです。私はいつも低空飛行の状態とか、崖に向かって歩いている状態だと行っているのですが、その時が来るまでは比較的落ち着いているように見えます。しかし、確実に死に向かって歩いているので、突然変化することがあります。
 よって、ご家族は患者さんが急変したと感じて動揺し、119番に電話をしてしまう事もあるようです。そうなると悲劇と言って良いと思いますが、悲劇が起こります。

(1)救急隊員によって心肺蘇生が行われてしまいます。
(2)救急担当医によって検査が行われてしまいます。
(3)警察が殺人容疑で捜査に来てしまいます。

 (3)についてはこちらのブログをお読みください。

 (1)についてです。死体を搬送する場合には、医師が書いた死亡診断書か死体検案書が必要です。それ以外は警察でなければダメではないでしょうか。搬送途中に警察に捕まったら色々困るのではないでしょうか(まあ救急車を警察が検問することはないでしょうが)。よって、救急車は死体を運べませんから、心肺蘇生を行います。ご家族も動揺していて「心肺蘇生はしないことになっている」というような情報は伝わらないかも知れません。病院へ搬送するまで、あるいは担当していた医師に連絡がつく(つまり今心肺蘇生を中止して良いですよと医師から指示をもらわないといけない)までは心肺蘇生が行われてしまいます。最後まで苦しまないようにしたいという患者さんとそのご家族の希望は叶えられません。

 (2)についてです。夜や緊急時に対応する医師は主治医でないことが多いです。かかりつけの患者さんだったり、診療情報提供書があって、どんな状態か分かれば良いのですが、そうでない場合には、やはり検査をせざるを得ません。癌の末期で急変したと言っても、心筋梗塞を起こしたかも知れませんし、例えば電解質異常なら点滴などで簡単に治るかも知れません。また警察を呼ぶことになるのであれば、検視の時に検査データを見せて欲しいと言われますので検査をせざるを得ません。細かいことですが、緊急で採血やCTをすると、自己負担で数万円します。
 また、今まで診たことがない人を診察して、その人が亡くなった場合、特に心肺停止状態で来院した場合、生前に診察をしていないので死亡診断書が書けないと言って警察に連絡する場合があります。これは知らない医師もいるので我々の問題なのですが、心肺停止状態の患者さんが来院しても、死亡後に診察をすれば死亡診断書(正確には死体検案書ですが)は書けます。そして、死亡診断書でも死体検案書(書式は全く同じです)でも、警察に連絡せず書いて問題ありません。警察に連絡するのは、異常死の場合です。癌の末期とか、訪問診療を行っている先生が診ていた病気の経過であると判断すれば、そのまま死亡診断書か死体検案書を書いて良いのです。これについては厚生労働省のホームページに資料があるのでご覧ください。
 しかし、厚生労働省がこのような文書を出すという事は、警察に連絡しなければならないと思っている医師がいるという事です。また、これを知っていても、後で実は殺人事件だったと分かったとか、何かあった場合に、何故警察に連絡していないのだ!と批判されるのが怖いので、連絡してしまうことがあります。この前の岐阜の熱中症の件でも警察に連絡したのが遅かったと批判されていましたよね。

 そして、警察に連絡されてしまうとどのような悲劇が起こるかは、先ほどのリンクをご覧ください。警察は一課が来ます。つまり殺人事件ではないか?と言う事で来るのです。以前他院から搬送されてきた患者さんで、死因が分からなかったので警察に連絡したら、先方の病院に警察が入ってしまい(警察が自宅や入院していた病院などを調べに行くとは知らなかったのです!)とても怒られた経験があります。

 ではどうすれば良いのか?となると答えは見つかりませんが、自宅で介護する場合、突然心臓が止まることもあるし、その場合にはここに連絡してくださいね、警察や救急隊じゃないですよなどときちんと説明しておくことも大切でしょうね。ちゃんとそう言ったことをされているとは思いますが、くどいぐらい何度もする必要があるのかも知れませんね。


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