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CTについて [医学関連]

 CTは知らない人がいないぐらいの有名な検査ですが、ちゃんとした知識を持っている人は少ないのではないでしょうか。今回は概略ですが、是非知っておいていただきたいことをいくつか書きます。

 CTはイギリス人のハンスフィールドという放射線科の先生が発明しました。ハンスフィールド(あるいはハウンスフィールド)先生は、CTの発明によりノーベル賞を受賞しています。それまでは断層撮影(トモグラフィー)というレントゲンの検査があったのですが、大まかな断層写真しかとれませんでした(断層写真とは、実際には切りませんが、人体をある面でスパッと切った場合にどんな風に見えるかと言う写真です)。コンピューターを用いてもっと精密に、そしてより簡単に撮像できるようになったのがCTです。CTはcomputed tomographyの略で、日本語で言えばコンピューター断層撮影です。開発にはあのビートルズが関係しています

 つまり、CTはレントゲンの進化したものであり、つまりレントゲン写真でしかないということです。CTで何でも分かると思っている人がいて、CTで異常がなければ心配ないんだと思っているのかも知れませんが、CTで分かる病気はわずかです。分かるのは、水頭症とか、ある程度以上の出血とか、大きな腫瘍ぐらいでしょう。細かいことは書きませんが、だいたい5mm以下の小さい病変は分かりません。ましてや機能的な異常(塊としての病変を作らない)は全く分かりません。

 よって、大切なのは医者の頭です。患者さんの話を聞いて診察し、どのような病気が疑われるかを考え、CTが役立ちそうかを考えた上で撮像します。CTだけをむやみに撮像しても病気の診断能は上がりません。この辺りも色々長くなるので書きませんが、「頭を打って心配なので診て欲しい」ならばいいのですが、「心配なのでCTを撮って欲しい」は是非辞めて欲しいです。CTが必要かどうかは医者が決めることで、本当は非常に高度な判断です。

 さて、世界にはどのぐらいのCTがあるのでしょうか。CT保有台数上位10カ国のみの統計ですが、CTはアメリカと日本だけで7割を占めています。人口の割合は分かりませんが、世界の人口が60億人とすれば、日本とアメリカで3億人ぐらいでしょうから、いかに沢山のCTが日本とアメリカにあるかが分かりますね。

CT保有台数.jpg

 人口100万人当たりCTの数は、日本がダントツで107.17台、二位のオーストラリアは64.35台、アメリカは4位で42.64台、CTを発明したのはイギリス人ですが、34位で9.46台です(資料:GLOBAL NOTE)。

人工あたりのCT.jpg

 日本には、CTが異常にたくさんある国だという事がお分かりいただけるでしょう。

 アメリカは人口が日本の二倍ぐらいいますし、お金がかかりますので、そんなに簡単にCTを撮ってもらえないでしょう。よって、日本は最もCTが撮像される国民だと言うことです。では、CTが気軽に撮像できない他の国では、人がどんどん死んでいるのでしょうか?そんなことはありませんね。

 またお金の問題もあります。日本の医療保険はいっぱいいっぱいのようです。保険料を上げるか、支払いを制限するか、どちらしかないようです。風邪薬や湿布などの制限が始まろうとしていますね。
 頭部CTを撮像すると、撮像するだけで約11000円かかります(交通事故だと多くは二倍なので約22000円)。自分で支払う金額を3割負担だとすれば、4000円弱であり、残りの8000円ぐらいは保険から出ます。医者が必要ないと決めても、どうしても撮って欲しいと言った場合保険からこのお金が支払われ、回り回って保険料の値上げに繋がるかも知れないと言うことを覚えておいてください。

 だからCTを撮像しなくて良いとは言いませんが、是非この事をよく知っておいてください。そして今後どうしていくのが良いのか?皆で考えていきたいですね。

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