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頭部外傷患者さんや出血傾向のある人に経鼻エアウェイを入れてはいけないのか? [CPRの基礎]

 経鼻エアウェイという器具があります。柔らかいチューブで出来ていて、鼻から喉の奥(声帯よりも少し頭側)まで入れて、気道を確保します。鼻から入れるだけなので、簡単な気道確保法の一つとして、蘇生の講習会(ACLSやICLS等)では必ず使い方を習います。

 ちなみにトリビアみたいな物ですが、鼻中隔が左に寄っている人が多いそうで、鼻の穴の中は右側が広い人が多く、経鼻エアウェイはもちろん、経鼻胃管なども第一選択は右の鼻の穴です。経鼻エアウェイの先端は斜め切りになっています。鼻中隔を傷つけないようにと言う配慮だという噂ですが、よって基本的に右の穴から入れるように作られています(たぶん)。

 さて、本題です。蘇生の講習会などでは、頭部外傷(鎖骨以上の外傷と書かれている物もあります)や出血傾向のある人には禁忌だと教わります。

 じゃあ、そう言う患者さんが来たらどないすんねん!と思います。結論から言えば、そう言う患者さんでも使って良いです。ただ、禁忌と書かれていることを行う場合、カルテに理由を記載するのはもちろんですが、患者さんやご家族にきちんと説明するべきです。医師は禁忌となっている治療を行ってはならないという法律はありません。どうしてもこれが必要だという想いがあれば、禁忌であっても使うべきです。

 が、個人的には経鼻エアウェイはそこまでして使う器具ではないので、頭部外傷患者さんや出血傾向のある人に使う事はないと思います。

 頭蓋低骨折の患者さんに経鼻エアウェイを入れて良いか?と言う点に関しては、いつものUpToDateからです。「Basic airway management in adults(成人における基本的な気道管理)」という文献です。

 Although there are two case reports of intracranial NPA placement in patients with basilar skull fractures, such extreme complications are rare and can only occur with devastating disruption of the basal skull, improper insertion technique (angling the NPA cephalad in the naris, instead of following the floor of the naris), or both.

 頭蓋低骨折の患者さんに経鼻エアウェイを挿入すると、頭蓋内に入ってしまうと言われているが、そのような報告は二つしかない。そのような極端な合併症はまれであり、頭蓋底が激しく損傷され、不適切な挿入手技で行われた場合にのみ発生する。(こちらの文献を引用していますので英語が得意な方は是非ご覧ください。無料で全文が読めます!)

 普通は発生しないので、必要ならば頭部外傷患者さんに経鼻エアウェイを入れても良いでしょう。

 鼻出血は30%に認められるそうですが、出血はなんとか止めることが可能です(普通は)。どうしても必要ならば、出血傾向にある人に経鼻エアウェイを入れても良いでしょう。大出血をするよりも、経鼻エアウェイを挿入することが必要だと判断しているのですから。


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