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背板は必要か? [CPRの基礎]

 以前の記事のアップデートです。

 病院の中で患者さんが心停止するのは、病室が意外に多いそうです。文献によれば、一般病床が54%と一番多かったそうです。蘇生のトレーニングは、床とか硬いベッドの上で行います。きっと硬いところで心肺蘇生をするのがいいのでしょう。

 では、普通のベッドの上で患者さんが心停止した場合、背中に板を入れて硬くした方が良いのではないか?と言う疑問が出てきますね。

 以下の本の45ページにも出てきます。





 今回はこの事について考えてみましょう。

 日本蘇生協議会のガイドライン2015の43ページには、以下のようにあります。

 「ベッド上の胸骨圧迫はしばしば浅くなりすぎることが報告されている。柔らかいベッドの上でCPRを行う場合は、胸骨圧迫の効果を最大限に発揮させるために、可能ならば背板を用いてCPRを行うことは理にかなっている。背板は患者の頭部から骨盤部までを保持する大きさであると胸骨圧迫の深さが増す。背板を使用する場合は、胸骨圧迫の開始の遅れや胸骨圧迫の中断を最小にすべきで、背板を敷くときにカテーテルやチューブが外れないように注意する。脱気できるマットレスであればCPR中は脱気すべきである。 CPR を行うために患者をベッドから床に下ろすことの危険性と利点を検討した研究はない。」

 よって背板を入れるのは良いのでしょう。

 ヨーロッパ蘇生協議会のガイドライン2015の54ページには以下のようにあります。これはCoSTRと呼ばれる蘇生のガイドラインの元となる資料にある文章と似ています。

 The reader is reminded of our 2010 recommendation that CPR should be performed on a firm surface when possible. Air-filled mattresses should be routinely deflated during CPR. There was insufficient evidence for or against the use of backboards during CPR. If a backboard is used, rescuers should minimize delay in initiation of chest compressions, minimize interruption in chest compressions, and take care to avoid dislodging catheters and tubes during backboard placement.
 「可能な場合には、心肺蘇生は硬い所で行うべきである」と言う当協会の2010年の推奨を読者は覚えているだろう。脱気できるマットレスは心肺蘇生中はルチンに脱気すべきである。心肺蘇生中に背板を使用することに賛成する充分なエビデンスも反対するエビデンスも存在しない。背板を用いるのであれば、背板を入れる時に、救助者は胸骨圧迫の開始の遅れを最小限にし、胸骨圧迫の中断時間を最小限にし、カテーテルやチューブが抜けないように注意をすべきである。

 アメリカ心臓協会はどうかというと、成人に関しては記載がありません。小児に関しては、硬いベッドなどの上で蘇生を行うべきと言う記載を見つけることが出来ます。

 入れても良いし、入れなくても良いけど、まあ、入れておいた方がいいじゃない?と言う幹事になるのでしょうか。
 どちらにしても、背板を入れることは最優先ではありません。まずBLSをちゃんとやって電気ショックを行ってから行うことでしょう。もちろん、除細動器が直ぐに手に入らないのであれば、行っても良いでしょうが、背板を取りに行く人員があれば、除細動器を取りに行ってもらった方がよいでしょうね。


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