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心室細動に対して、アドレナリンをすぐに投与して良いのか? [CPRの基礎]

 心肺蘇生の講習会でよくあるシナリオです。

 心停止になったことを認識し、直ちに胸骨圧迫を開始。
 心電図モニターがついたので波形をチェックしたところ、心室細動。
 直ちに電気ショックを行い、胸骨圧迫再開。
 二分間の間に点滴ルートを確保し、アドレナリンの準備を、、、、、、、
 二分たったので、心電図モニターをチェック。心室細動が続いています!
 直ちに電気ショック。さっきよりエネルギーを上げて!!すぐ胸骨圧迫再開!!
 さっき準備したアドレナリンを投与して、20mlの生食で後押しし、点滴が入っている上肢を10ー20秒挙げてください。

 と言うのがアルゴリズム上では(ERC以外、これについては後述)正しいのですが、4行目のアドレナリンの準備を、、、、、、と言うところで、「アドレナリンを投与してください!」という人がいます。まあ、間違ってないでしょう、、、、、、と言う事で許容していました。一回ショックしただけでアドレナリンを打てというガイドラインにしてしまうと点滴がとれなかったりした場合に困るからという理由もあると考えていました。

 しかし、1回目のショックをしてすぐアドレナリンを投与してはいけないようです。

 UpToDate "Supportive data for advanced cardiac life support in adults with sudden cardiac arrest"より。

 The early administration of epinephrine within two minutes following the initial defibrillation for VF/VT may be detrimental. In a prospective cohort study of 2978 patients with in-hospital cardiac arrest and a shockable rhythm (1510 patients with epinephrine administered within two minutes of defibrillation and 1468 propensity score matched patients without early epinephrine administration), patients who received early epinephrine had a significantly decreased likelihood of survival (odds ratio 0.70; 95% CI 0.59-0.82)

「成人の突然の心停止に対する二次救命処置を支持するデータ」

 心室細動や無脈性心室頻拍に対して電気ショックを初めて行った後の2分間にアドレナリンを投与することは有害な可能性がある。2978人の患者を対象とした前向きコホート研究がある。1510人に対して初回電気ショック後2分以内にアドレナリンを投与し、1468人にはアドレナリンを2分後以降に投与した。この研究では、アドレナリンを早期に投与された場合、生存率が有意に低かったことが示されている(オッズ比が0.70;95%信頼区間0.59-0.82)。

 そうだったんですね!知りませんでした!!やはり最初はアドレナリン準備ですね!!ACLSの2015年度版のテキスト99ページにも、「2回目のショックを与えた後でアドレナリンを以下のように投与する」とあります。

 しかし、AHAのガイドライン2015には、以下のように書かれていて、ショックが必要な波形の場合のアドレナリン投与のタイミングを推奨するエビデンスは不十分であるとしています。一体どっちやねん!!

 There is insufficient evidence to make a recommendation as to the optimal timing of epinephrine, particularly in relation to defibrillation, when cardiac arrest is due to a shockable rhythm, because optimal timing may vary based on patient factors and resuscitation conditions.

 そしてERCです。ヨーロッパのガイドラインでは確か2005でしたが、リズムチェックー薬剤投与ーショックー胸骨圧迫シークエンスというような言葉がありました。薬剤投与はショックの直前だというのです。だから初回の薬剤投与は、三回目のショックの直前です。AHAよりも1サイクル後になっていました。2010年のガイドラインではその言葉は消えていました。2015でも同様ですが、3回目のショック後と明確に記載しています。P.107-109に書かれています。

 Continue CPR for 2 min, then pause briefly to assess the rhythm; if still VF/pVT, give a third shock (150–360 J biphasic). Without reassessing the rhythm or feeling for a pulse, resume CPR (CVratio 30:2) immediately after the shock, starting with chest compressions.
 If IV/IO access has been obtained, during the next 2 min of CPR give adrenaline 1 mg and amiodarone 300 mg.
 2分間心肺蘇生を継続し、短時間のみ圧迫を中断し、リズムを短時間でチェックする。心室細動や無脈性心室頻拍が続いていれば、三回目のショック(二相性の除細動器であれば150ー360Jで)を行う。ショック後は、リズムの再評価や脈拍のチェックをせず、胸骨圧迫から心肺蘇生を再開する(圧迫と換気の比率は30:2)。
 点滴ルートが確保されていれば、このショック後の2分間でアドレナリン1mgとアミオダロン300mgを投与する。

 アドレナリンとアミオダロンを一気に投与するというのもすごいですね。ERCのガイドラインは以前アトロピンが載っていた時も、PEA(無脈性電気活動)や心静止にアトロピンとアドレナリンを同時に投与とかなっていました。興味深いですね。

 結局、心室細動や無脈性心室頻拍に対するアドレナリン投与は、遅めが良いと言うことなのでしょうか。今後のコースでは、電気ショックを一回しかしていない時にアドレナリン投与の指示を出したら、「先生!!アドレナリン今切らしてます!」とか言った方が良いのかなあ。


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