胆のう炎の診断にGOT、GPTは必要か? [医学関連]
今回は医学の専門でない方には難しい(いつもか(^.^))かもしれません。
私は外科医なので、内科の先生から相談を受けます。相談と言っても、恋愛の相談ではありません(当たり前)。手術などの処置が必要な患者さんがいるので診て欲しいと言う相談です。
例えば、「胆のう炎の患者さんなのですが、経皮的ドレナージが必要でしょうか?」と言うものです。必要でなくても、胆のう炎の患者さんは診療させて頂いていますので、後はやっておきますと言っています。
その時に、「肝胆道系酵素は上がっていませんが、胆のう炎と思います」と言われる事が多いです。
胆のう炎と言うのは、胆のうの出入り口が閉塞し、胆のうが腫れている状態です。胆のうは総胆管と言う肝臓から十二指腸へ向かう通路の脇道です。例えれば、総胆管が高速道路で、胆のうがサービスエリアです。サービスエリアに車が殺到したり、あるいは何か不具合があって混雑している状態と考えて下さい。
混んでそうだからもう少し我慢して先に行こうか、、、、と考えれば、何にも不都合はありません。同じように胆のう炎を起こしている場合でも、総胆管には問題がありません。肝胆道系酵素と言うのは総胆管に異常がないと異常が出ませんから上昇(するのが異常です)しないのが当たり前です。
しかし、「胆のう炎で肝胆道系酵素が上昇する」と思っている方が、少ないですがおられるようです。
今回はこのことを考えてみましょう。理屈は先ほど述べました。胆のう炎を起こしていても、肝胆道系酵素の異常は来ません。来ているとすれば、胆のうが腫れて総胆管を圧迫し、総胆管が細くなっている(Mirizzi症候群と言います)とか、そう言った事が考えられます。
以前紹介した「論理的診察の技術」P.139-145には(やっとここも読みました)、GOT、GPT等の肝逸脱酵素の有用性について述べられています。
急性胆嚢炎の診断に最も役立つのは、Murphy徴候で、陽性尤度比が2.8、陰性尤度比が0.5だそうです。他はあまり有用なものはありません。
「GOTまたはGPTの上昇」は、陽性・陰性尤度比共に1です。つまり上昇していても、上昇していなくても、その病気の確率が変わらないと言うのです。
他にもALPが120以上と言うのでは、陽性尤度比は0.8(120以上だと逆に胆のう炎の確率が下がっちゃいます)、陰性尤度比は1.1。
よって急性胆嚢炎の診断には、これからも画像診断が必要であろうと書かれています。確かにそうだと思います。「考える技術」P.14には、腹部超音波検査の陽性尤度比30、陰性尤度比0.1とあります(CTは陽性尤度比79、陰性尤度比0.21)。
私は胆のう炎の診断を、診察所見と画像診断のみで行っています。血液検査は最初に出てきたドレナージをするかどうかの参考にする程度です(が採血はもちろんします)。
内科医を目差す若い先生は、胆のう炎の患者さんを外科医にコンサルトする場合、「肝胆道系酵素は上昇していませんが」ではなく、「肝胆道系酵素が上昇していないので」胆のう炎だと思いますと言いましょう。
私は外科医なので、内科の先生から相談を受けます。相談と言っても、恋愛の相談ではありません(当たり前)。手術などの処置が必要な患者さんがいるので診て欲しいと言う相談です。
例えば、「胆のう炎の患者さんなのですが、経皮的ドレナージが必要でしょうか?」と言うものです。必要でなくても、胆のう炎の患者さんは診療させて頂いていますので、後はやっておきますと言っています。
その時に、「肝胆道系酵素は上がっていませんが、胆のう炎と思います」と言われる事が多いです。
胆のう炎と言うのは、胆のうの出入り口が閉塞し、胆のうが腫れている状態です。胆のうは総胆管と言う肝臓から十二指腸へ向かう通路の脇道です。例えれば、総胆管が高速道路で、胆のうがサービスエリアです。サービスエリアに車が殺到したり、あるいは何か不具合があって混雑している状態と考えて下さい。
混んでそうだからもう少し我慢して先に行こうか、、、、と考えれば、何にも不都合はありません。同じように胆のう炎を起こしている場合でも、総胆管には問題がありません。肝胆道系酵素と言うのは総胆管に異常がないと異常が出ませんから上昇(するのが異常です)しないのが当たり前です。
しかし、「胆のう炎で肝胆道系酵素が上昇する」と思っている方が、少ないですがおられるようです。
今回はこのことを考えてみましょう。理屈は先ほど述べました。胆のう炎を起こしていても、肝胆道系酵素の異常は来ません。来ているとすれば、胆のうが腫れて総胆管を圧迫し、総胆管が細くなっている(Mirizzi症候群と言います)とか、そう言った事が考えられます。
以前紹介した「論理的診察の技術」P.139-145には(やっとここも読みました)、GOT、GPT等の肝逸脱酵素の有用性について述べられています。
急性胆嚢炎の診断に最も役立つのは、Murphy徴候で、陽性尤度比が2.8、陰性尤度比が0.5だそうです。他はあまり有用なものはありません。
「GOTまたはGPTの上昇」は、陽性・陰性尤度比共に1です。つまり上昇していても、上昇していなくても、その病気の確率が変わらないと言うのです。
他にもALPが120以上と言うのでは、陽性尤度比は0.8(120以上だと逆に胆のう炎の確率が下がっちゃいます)、陰性尤度比は1.1。
よって急性胆嚢炎の診断には、これからも画像診断が必要であろうと書かれています。確かにそうだと思います。「考える技術」P.14には、腹部超音波検査の陽性尤度比30、陰性尤度比0.1とあります(CTは陽性尤度比79、陰性尤度比0.21)。
私は胆のう炎の診断を、診察所見と画像診断のみで行っています。血液検査は最初に出てきたドレナージをするかどうかの参考にする程度です(が採血はもちろんします)。
内科医を目差す若い先生は、胆のう炎の患者さんを外科医にコンサルトする場合、「肝胆道系酵素は上昇していませんが」ではなく、「肝胆道系酵素が上昇していないので」胆のう炎だと思いますと言いましょう。
先生はやっぱり優しいね…返事なんていつでも良いよ…仕事忙しいのにいつも話聞いてくれてありがとう…先生って外科の先生なの?前も聞いた感じがするけど…忘れちゃった…お腹切ってるの?救急科って外科のことなの?あたしもお薬たくさん飲んで救急車で運ばれたことある…
by じゅり (2010-06-11 21:11)
なるほど、納得です(^^;)
そういえば、そんな感じでした(^^;)
勉強になります(^^)V
by さうざんバー (2010-06-11 22:39)
じゅりさん、コメントありがとうございます。
私は外科医です。外科医と言うのは手術をする医者です。
ちょっと説明が難しかもしれませんが、救急は緊急の患者さんを扱う科で、全く別のものです。内科の救急もありますしね。
薬をたくさん飲んで運ばれて来る患者さんも診せていただいています。
by Kim (2010-06-12 00:45)
さうざんバーさん、コメント&nice!ありがとうございます。
参考になり幸いです!!
今日は大阪にいます!
by Kim (2010-06-12 00:46)
先生はいろんな患者さんを診てるんやね…あたしみたいな人もいてるんやね…大変やね……先生…また話聞いてくれる?
by じゅり (2010-06-12 11:27)
じゅりさん、コメントありがとうございます。
いつでもコメント下さい!
by Kim (2010-06-12 23:42)
亀レスです。
胆嚢炎でも肝胆道系酵素がだいたい上昇するものと思っておりました(汗)。
ただ確かに酵素が上がっていませんが胆嚢炎だと思いますとコンサルトしたことが私自身ある気がします。
急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドラインにも先生の言うとおりのことが診断基準となっておりました。
いつも有益な情報をありがとうございます。
by pulmonary (2010-06-17 14:59)
pulmonaryさん、コメントありがとうございます。
確かに上昇している場合も多いのですが、これは胆嚢炎のせいではないと常に考えるくせをつけないといけないと研修医の先生には言っています。おかげで鬼軍曹と言われています。
また胆嚢炎でGOT等が上がると思っていても診療上大きな問題にはなりませんから気にしない、気にしないです。
ガイドライン確認してみます!
by Kim (2010-06-17 15:22)