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CTはできるだけ避けたいです [医学関連]

 CTはcomputed tomography(コンピューター断層撮影)の略で、医療の現場では欠かせない検査となっています。私が研修医の頃は1枚撮るのに1分ぐらいかかり、頭だけで10枚以上ですから、10分以上かかりましたが、今はヘリカルCTと言って高速に撮影できますのであっという間です。救急の現場でも非常に有用な検査です。

 が、普通のレントゲンの何十倍も放射線被曝を受けます。原子力発電所の事を語るときに周囲の放射線被曝がどうこうと言われますが、CTを撮れば結構な放射線の被曝があります。個人としてはあまり気にしなくてもよいでしょうが、人類としては、、、、、将来癌になる人が増える可能性もあります。

 また頭部CTを撮像すると、それだけで13000円ぐらい医療費がかかります。ちょっと頭をうったぐらいでCTを撮って欲しいと言われる方が多いですが、その通りにしていると医療費が増え、健康保険制度は破綻します。初診料と言うのもとられますから、、、これは別記事にしたいと思います。

 よって、これぐらいならば大丈夫ですから経過観察しましょうとよくお話するのですが、まず聞いてもらえません。

 外国でもそういうことに困っているのでしょう。アメリカから研究発表が出てています。これはランセットと言う世界で最も有名で権威のある雑誌です。これに論文が載ったら一流の医学者です。


 アメリカでは、18歳未満の小児が頭部外傷により毎年60万人以上が救急搬送され、6万人が入院し、7400人が亡くなっているそうです。救急搬送された子供の1.2%程度が死亡されています。1.2%も!!と思うかもしれませんが、アメリカで救急車を呼ぶことと日本では全然違います。アメリカは有料ですから、、、、歩いてきた頭部外傷を入れれば頻度はもっと低くなりますし、そもそもアメリカは医療費がべらぼうに高いので、頭を少し打ったぐらいで病院へ行く人はあまりいません。
 日本でも頭を打った子供全員にCTを撮っていたらすごい医療費になります。

 よって、以下のような基準をとればCTを撮らなくても大丈夫と言うことが分かったそうです。

 2歳未満
・精神状態が正常
・前頭部意外の頭皮に血腫(腫脹)がない
・意識消失がないか、あっても5秒未満
・障害の機序が重度でない
・触診で頭蓋骨骨折がない
・保護者が子供の行動は正常とみている

 2歳以上
・精神状態が正常
・意識消失がない
・嘔吐がない
・損傷の機序が重度ではない
・頭蓋底骨折の兆候がない
・重度の頭痛がない

 Kuppermannらは、18歳以下の意識障害がほとんどない(Glasgow Coma Scaleが14−15)頭部外傷の患者さんを対象としました。35.3%にCTを撮像したところ、0.9%に脳の損傷を認め、0.1%が手術を受けたそうです。

 上記のような基準で分類すると、2歳未満ではnegative predictive value(陰性的中率:NPV)は100%で、感度も100%、2歳以上ではNPVが99.95%、で感度は96.8%だったそうです。こちらによって計算したかったのですが、、、、特異度が出せませんでした。
 が、NPVが非常に高いと言うことは、この基準で分類すると、実際に脳損傷が見逃されることが殆どないと言うことで、非常に優秀な検査です。4976人中2人(0.04%)しか脳損傷の子どもがいなかったと言うことです(この二人も死亡したと言うわけではありません)。

 よって上記のような場合には、CTは避けるようにしたいですね。一般の方もご理解いただければ嬉しいです。


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一見さん

先日の葉酸のお話、とても勉強になりました。ありがとうございました。でも、この先、妊娠の予定はないんですよね…(笑)。妊娠前に教えてほしい情報ですね。
今回はCTの話題ですが…。ずっと心配していたことがあるんです。長女が4ヶ月位の頃、股関節脱臼の疑いで、レントゲンを撮りました。その際、じっとしていないので、三回も撮り直しされました。まだ四ヶ月なのに、三回もレントゲンを撮ったりして、場所が場所だけに、不妊症になったりしませんか?長女が出産の年を迎えるまで、あと二十年くらい、ずっと心配していなくてはならないのかしら…。
by 一見さん (2009-12-11 14:31) 

T-CHIRO

ちょっと頭打ったくらいで(程度によるとは思いますが)頭部CTなら今の医療制度だと破綻に繋がるのは確かですよね。

ただ・・・一部なのかもしれませんが・・・骨折の疑いもないのにレントゲン撮影も多いような気もします、もちろんレントゲンで骨折だけをみてるわけではないと思いますが。

慢性の痛みで多い我々サイドでのケースでは、とくに整形分野での画像診断の際に画像診断の際にみせられた問題の箇所が、患者さんの頭に残ってしまい、それが症状改善を邪魔してることが多いように思います。

画像診断は器質的な問題、構造的な問題には絶大な効果があると思うのですが、機能的な問題が発生してる場合は画像診断で特に整形の分野では、わかりにくいというのが我々の業界の考えです。
by T-CHIRO (2009-12-11 15:17) 

Kim

一見さん、コメントありがとうございます。

葉酸については厚生労働省が通達を出すぐらいなんですから、テレビなどでCMしてもよいと思いますが、、、、仕分け作業で廃止と言われちゃうかも知れませんね。

レントゲンですが、レントゲンを3枚撮っただけでどうこうなる可能性は低いです。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1114584386?fr=rcmd_chie_detail

今は生殖器などを守る様気をつけていますから、卵巣の所にはレントゲンが行かないようにプロテクターをつけていると思います。だから心配されなくて結構ですよ。

http://homepage3.nifty.com/asai/virtual_clinic/QA/x_ray040617q23.htm
by Kim (2009-12-11 15:32) 

Kim

T-CHIROさん、コメント&nice!ありがとうございます。

医師はレントゲンが100%でない事、レントゲンで診断できない病気も多い事など知っています。が、患者さんが知らないので難しいです。

病院に来る目的が「レントゲンを撮る」である人も多いです。足首をひねって来院し、「今は専門医もいないので、とりあえずレントゲンは撮らなくても良いと思います」などと言っても納得してくれる人はほとんどいません。患者さんと喧嘩になる事もあります。

よって、レントゲンを撮った方が医療スタッフにとっては楽です。またその方が病院の収入も多いです。

だから、「じゃあレントゲン撮りましょうね」と言ってしまいます。

レントゲンや採血、心電図よりも、診察所見その他を総合的に解釈する医師と言う資格を持った人が一番良い検査だと言う事を分かってもらえるようがんばるしかないです。

ドクターズルールと言う本に書かれてあった言葉です。

急性腹症(急にお腹が痛くなった場合をさします)において、最も信頼できる検査は、優秀な腹部外科医の診察である。


by Kim (2009-12-11 15:39) 

一見さん

kim先生。おかげさまでホッとしました。この十年、ずっと不安でしたが、ようやくすっきりしました。(十年も悩むくらいなら、かかりつけの先生に聞くなり、ネットで調べるなりしたらいいのに…と、つっこまれそうです[冷や汗])ほんとうにありがとうございました。
by 一見さん (2009-12-13 01:09) 

Kim

一見さん、コメントありがとうございます。

安心できて良かったですね。インターネットは便利ですよね!!

これからもよろしくお願いいたします。
by Kim (2009-12-13 06:49) 

さすらい

先生のご意見参考になります。
と言いますのは、長男2歳交通事故で頭を打って1回、長女4歳滑って転倒し1回、それぞれ頭部CTを受けています。結果としては二人とも異常なしでした。
ただ、受けた後(最近)被曝すると言う事を知り、後悔と子供の将来が心配で仕方ありません。特に長女は特に変わった様子もなかったのですが、親の心配解消を優先してしまって本当に後悔しています。
1回の頭部CTで癌になる事はありえますか?不安で仕方ありません。
by さすらい (2012-07-06 18:30) 

Kim

さすらいさん、コメントありがとうございます。

後悔はされなくて良いですよ。撮像したことそのものは悪くありません。1回のCTで癌になるという可能性は遙かに低いです。例えれば、宝くじ1等賞に当たるぐらいでしょう。しかし、国全体として今のようなことを続けていれば、確実に癌が増え、医療が破綻するだろう、、、、、と言う話です。

お子様がCTのせいで癌になる事はないと思ってください。そして、今後は、医者がCTいらないと言ったら、良かった、、、、と思うようにしてくださいね。

私もたくさんCTを出しますが、異常があった確率は5%もありません。

by Kim (2012-07-07 07:44) 

マインド

はじめまして!突然の訪問お許しください。実は精密検査の事で大変悩んでおります。個人病院で間質性膀胱炎の疑いがあるとの事で
総合病院を紹介され、一通りの簡易検査はしました。医師からは多角的に見て心因的な要素が寄与している可能性があると言われました。自分でも色々と調べましたが、器質的疾患は希薄な気もします。主治医は、全身麻酔による膀胱ファイバ-スコ-プ及び膀胱拡張・水圧療法も兼ね合わせたものを提案しましたが、4日間の入院が必要との事。怖くて納得いかず、日帰り外来での検査を依頼しました。友人が先日大学で検査をしておりかなりの激痛だったときき怯えています。本来、とても神経過敏で恐怖心が強く、極度の病院嫌いなもので、自分がこの検査に耐えられるか心配でなりません。もし、点状出血したらとか、膀胱破裂したらとか、過呼吸やショック状態に陥らないかなどと不安で不安で・・・。
何かいいアドバイスはありませんでしょうか?
宜しくお願いします。30代女性です。
by マインド (2012-07-11 11:39) 

Kim

マインドさん、コメントありがとうございます。

夫婦関係などと同じです。主治医の先生を信じましょう。全身麻酔なら痛くないですよ。

検査をすべきか?は難しい判断です。色々な要素があり、ネットで判断できるものではありません。主治医が信じられるか?ではなく、信じましょう。信じる事が無理ならば、主治医を変えましょう。マインドさんが主治医を信じる事ができなければ、どんな名医にかかっても、どんなすごい検査をしても無意味です。

ご意見があればお答えしますが、一般論でしかありません。また私は泌尿器科専門ではありませんので、病気については分かりません。すみません。
by Kim (2012-07-11 15:18) 

マインド

先生、早速のご返事に大変感謝致しております。貴重なご意見有難うございました。現在の主治医はとても親身になって話を聞いてくれ
質問にも全てわかるように話てくださいます。この先生であればと一大決心し覚悟はある程度決めたつもりです。信頼はしています。
まあ、なるようにしかなりませんよね・・・。
人生経験と思って頑張ってみます。丁寧なご回答ありがとうございました。
by マインド (2012-07-11 19:06) 

Kim

マインドさん、ありがとうございます。

良い先生に巡り会えて良かったですね。検査無事終了することを祈っています。そして何も異常がないことを、、、、、

気になることがあれば何でも気軽に書き込んでくださいね。

ただ、今回のように個々の事例に関する返答は出来ないかも知れませんが。

by Kim (2012-07-11 19:17) 

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