頚動脈洞マッサージ [CPRの基礎]
頚動脈洞マッサージと言うのがあります。安定した頻拍(特に発作性上室性頻拍、いわゆるPSVT)対して行います。
頚動脈洞と言う所に圧受容体があり、そこを刺激する事で迷走神経を刺激する事が出来ると言う訳です。迷走神経は副交感神経で、一般的に体を休める方向に向かわせます。交感神経は闘う時に使う神経だと思えば分かりやすいです。
よって副交感神経が興奮すれば脈は遅くなります。脈が速い人に対して副交感神経を興奮させるのは理にかなっています。この治療法は、18世紀頃すでに報告があるそうです(Lown, B, Levine, SA. The carotid sinus: clinical value of its stimulation. Circulation 1961; 3:271)。
例えば、ヒゲを剃っている時にぼーっとして倒れる人がいるらしく、これはヒゲを剃る時に頚動脈を刺激するからだそうで、格闘技にもそこを刺激して失神させる技があるそうです。この文献によれば、対象とした患者さんの約10%に認めたそうです。
動悸以外に症状を認めない安定した頻拍のうち、QRS幅の狭いRR間隔が整な頻拍の治療に対して頚動脈洞マッサージを行いますが、これを右側で行うか左側で行うか、、、、、が良く議論になります。
本当はどっちなんでしょう?
有名な林先生の著書には、右の頚動脈洞が洞房結節を支配している事が多いので、右で行うべきとあります(Step Beyond Resident 1、P.66、林寛之著、羊土社)。左は房室結節を支配しているらしいです(Cohn, AE, Fraser, RF. Paroxysmal tachycardia and the effect of stimulation of the vagus nerves by pressure. Heart 1913; 5:93)。
2000年のACLSプロバイダーマニュアルにも、ACLS Resource Textにも右とあります。
が、ICLSコースやACLSコースなどでは、右利きの人は右側で、、、、と教えている事が多いです(私の数少ない経験ですのでエビデンスレベルは未確定ですが)。
右の頚動脈をマッサージすると、血管壁にこびりついていた血栓が右の脳に飛ぶ危険があり、その時に利き手側が麻痺すると困るから、、、、、、利き手じゃない方の脳に血栓が飛ぶようにと言う訳です。脳は脳幹の付近で左右入れ替わりますので、右利きの人は左が優位半球です。
しかし、左利きの人でも優位半球は左だと言う説もあるらしく、、、、、
ここには、左利きで右が優位半球の人は約15%のみで、左利きの人が全体の7%しかいない事からすると、右脳が優位半球の人は1%しかいないそうです。こちらにも、左利きで右が優位半球の人は2割しかいないとあります。
また、注意して行えば、頚動脈洞マッサージによる合併症の頻度は非常に低く、0.1%程度とされています。
頚動脈に雑音が聞こえる、心室頻拍や脳卒中、最近の心筋梗塞などの場合には、もちろん行ってはいけません。
とすると、、、、頚動脈洞マッサージをする前に利き手を確認する意義はほとんどなく、常に右側で行えば良いと言う事になるでしょう。
それから、、、、何と!頚動脈洞マッサージよりも、バルサルバ手技(これは別記事にしますね)の方が効果があると言う報告(こちらやこちら)もあるようで、、、、、結局一生懸命頚動脈洞マッサージのやり方を覚え、利き手はどっちですか???何て聞く意義はほとんどないと言う事のようです(+_+)。
頚動脈洞と言う所に圧受容体があり、そこを刺激する事で迷走神経を刺激する事が出来ると言う訳です。迷走神経は副交感神経で、一般的に体を休める方向に向かわせます。交感神経は闘う時に使う神経だと思えば分かりやすいです。
よって副交感神経が興奮すれば脈は遅くなります。脈が速い人に対して副交感神経を興奮させるのは理にかなっています。この治療法は、18世紀頃すでに報告があるそうです(Lown, B, Levine, SA. The carotid sinus: clinical value of its stimulation. Circulation 1961; 3:271)。
例えば、ヒゲを剃っている時にぼーっとして倒れる人がいるらしく、これはヒゲを剃る時に頚動脈を刺激するからだそうで、格闘技にもそこを刺激して失神させる技があるそうです。この文献によれば、対象とした患者さんの約10%に認めたそうです。
動悸以外に症状を認めない安定した頻拍のうち、QRS幅の狭いRR間隔が整な頻拍の治療に対して頚動脈洞マッサージを行いますが、これを右側で行うか左側で行うか、、、、、が良く議論になります。
本当はどっちなんでしょう?
有名な林先生の著書には、右の頚動脈洞が洞房結節を支配している事が多いので、右で行うべきとあります(Step Beyond Resident 1、P.66、林寛之著、羊土社)。左は房室結節を支配しているらしいです(Cohn, AE, Fraser, RF. Paroxysmal tachycardia and the effect of stimulation of the vagus nerves by pressure. Heart 1913; 5:93)。
2000年のACLSプロバイダーマニュアルにも、ACLS Resource Textにも右とあります。
が、ICLSコースやACLSコースなどでは、右利きの人は右側で、、、、と教えている事が多いです(私の数少ない経験ですのでエビデンスレベルは未確定ですが)。
右の頚動脈をマッサージすると、血管壁にこびりついていた血栓が右の脳に飛ぶ危険があり、その時に利き手側が麻痺すると困るから、、、、、、利き手じゃない方の脳に血栓が飛ぶようにと言う訳です。脳は脳幹の付近で左右入れ替わりますので、右利きの人は左が優位半球です。
しかし、左利きの人でも優位半球は左だと言う説もあるらしく、、、、、
ここには、左利きで右が優位半球の人は約15%のみで、左利きの人が全体の7%しかいない事からすると、右脳が優位半球の人は1%しかいないそうです。こちらにも、左利きで右が優位半球の人は2割しかいないとあります。
また、注意して行えば、頚動脈洞マッサージによる合併症の頻度は非常に低く、0.1%程度とされています。
頚動脈に雑音が聞こえる、心室頻拍や脳卒中、最近の心筋梗塞などの場合には、もちろん行ってはいけません。
とすると、、、、頚動脈洞マッサージをする前に利き手を確認する意義はほとんどなく、常に右側で行えば良いと言う事になるでしょう。
それから、、、、何と!頚動脈洞マッサージよりも、バルサルバ手技(これは別記事にしますね)の方が効果があると言う報告(こちらやこちら)もあるようで、、、、、結局一生懸命頚動脈洞マッサージのやり方を覚え、利き手はどっちですか???何て聞く意義はほとんどないと言う事のようです(+_+)。
私も格闘技ファンですが、チョークスリーパーのように頚動脈をしめて落とすだけでなく、ツボ?を刺激して落とす方法もあったんですねぇ・・・
ヒゲをそっているときって朝だから、とりあえずぼーっとしていますね^^;
by ふりーだむ (2009-02-17 08:36)
これ以上ボーっとならないように、ヒゲ剃らないようにします。(笑)
追伸
最近、上向きです。
by Hirosuke (2009-02-17 08:54)
ブログといい、専門医試験のMLといい、先生の勉強熱心さには頭が下がるばかりです。私も負けて入られません!(笑)。ちなみに個人的には頚動脈洞マッサージで上室性頻拍が止まった経験はありません。バルサルバ手技では若年の人であるようなないような・・・。結局ATPなどを使ってしまいます。個人的には150bpmぐらいのregular narrow QRS tachcardiaはPSVTよりも2:1のatrial flutterの頻度が高い気がします(病棟の高齢者が多いからでしょうか)・・。だからこれらの手技があまり効かないのでしょうか。
by pulmonary (2009-02-17 17:57)
はじめまして
循環器内科を専攻しております
先生のブログは勉強になりいつも拝読しています。
頚動脈洞の神経支配に左右差があったとは・・・
恥ずかしながらはじめて知りました。
ただ、少し疑問だったのは、narrow QRS tachycardiaの場合は、診断の意味でも、また治療的側面でも、房室結節の反応を遅らせるほうがいいとおもうので、その点で左の頚動脈洞を押さえるほうがいいような気もしましたが、、、
右頚動脈洞を押さえるほうが迷走神経反射が起こりやすいでしょうか?
ちなみに私自身は、さっさとATPを使ってしまいます。
ただ胸部不快感が強いので、一度使った経験のある方には嫌がられますが。
by fmata (2009-02-18 01:05)
ふりーだむさん、コメントありがとうございます。
私も格闘技については知りませんでした。色々考えて技をしているんだと感心しました(^.^)。
by Kim (2009-02-18 21:26)
Hirosukeさん、コメントありがとうございます。
今まで大丈夫だったら全然問題ないですよ。気にされないで下さい。
by Kim (2009-02-18 21:29)
pulmonaryさん、コメントありがとうございます。
私は別に勉強熱心ではありません。オタクなだけです(^.^)。
それからやぶ医者なので勉強しないと患者さんに不利益を与えてしまいますから、、、頑張っています。これからもよろしくお願いいたします。
by Kim (2009-02-18 21:30)
fmataさん、コメントありがとうございます。
循環器の先生に見て頂き感謝申し上げます。
私も偉そうに書いていますが、知らなかった事で記事に出来そうな資料があった場合にのみ記事にしています。
当然ながら私もこの記事の事知りませんでした。林寛之の本を読んで知りました。
おっしゃるように、PSVTは房室結節でリエントリーが起こっているので洞房結節を抑制しても意味がない気がしたのですが、、、、、調べる時間がありませんでした。突っ込んで頂き大変感謝申し上げます。
別記事でこれは調べてみます。
右が洞房結節を抑制すると言うのはミスプリや間違いではありません。ちゃんと何度も読み直しました。
やはり実際の臨床では迷走神経刺激は薬を用意するまでに効けばもうけ物、、、みたいな位置づけなんでしょうね。勉強になりました。
これからも色々とご指導下さい。
by Kim (2009-02-18 21:35)
気にしてませんよ。
大丈夫です。
1ヵ月後に職場復帰の予定です。
by Hirosuke (2009-02-18 22:57)
Hirosukeさん、コメントありがとうございます。
職場復帰おめでとうございます。マイペースで頑張って下さいね!
by Kim (2009-02-19 01:19)
以下のブログである開業医の先生が、
http://www.udatsu.vs1.jp/ecg.htm
頚動脈洞マッサージは右から行うと書いておられます。
http://www.udatsu.vs1.jp/ecg6instruction.htm
さらに調べてみます。
by Kim (2009-02-19 14:54)
不整脈薬物治療に関するガイドラインと言うのがあるようです。
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2004_kodama_h.pdf
こちらのP.1004にも右をまず試みるとあります。理由は書いてありません、、、
ざんね〜ん!!
by Kim (2009-02-19 15:04)
以下の文献には、右左の神経支配の違いは明らかにできなかったとあるようです。UpToDateに載っていました。
Schweitzer P; Teichholz LE:Carotid sinus massage. Its diagnostic and therapeutic value in arrhythmias. Am J Med. 1985 Apr;78(4):645-54.
by Kim (2009-05-21 14:47)
先生、またまた勉強になります!
インストでは優位半球の事をいってさらっと流してる気がします。実際そのような数字がでていれば偉そうには言えないような・・・右は勧めますけど、やはりリエントリーの房室結節がひっかるところ。ばしっときめれそうですが、鋭い受講生なら、なぜ?洞房結節って言われそうで・・・・・・房室結節遮断・・・・
by kawabata jun (2012-01-06 22:12)
Kawabataさん、コメントありがとうございます。
最近はこの手技を実習してもらう事が少ないです。本当はこの記事の事話したくて仕方ないのですが、ぐっと我慢しています(^.^)。そして必要があれば利き手を確認して、、、、と話しています。
詳しい事を質問された時は、循環器の先生に聞いてくださいね、私は外科医なので分かりません、と言って逃げています。ここはそこまで突っ込む所じゃないので、、、、、と。
by Kim (2012-01-07 08:11)
この方法で頻脈が止まったことはないのですが、すぐに試しています。
アイホールを押さえると言うのも聞きましたが
同じ理由でしょうか?
もちろんすぐに薬を飲んで水で顔を洗うとかも試して
2時間ダメなら病院に行くようにしています。
そして電極を付けるために看護師さんの冷たい手が
胸にふれた途端に止まるというのを何回か経験しましたw
単なる偶然なんでしょうか?(笑)
by tora_nyan (2012-05-06 09:19)
tpra_nyanさん、コメントありがとうございます。
アイホールとは目を押さえると言うことでしょうか??これは医療行為としてはリスクが高いと言うことで現在は勧められていません。が、確かに迷走神経刺激になります。
看護師さんの冷たい手、、、、確かに冷たいものを当てるのは迷走神経刺激になりますので、偶然ではありません、、、、たぶん。
by Kim (2012-05-06 20:42)