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ガイドラインは作られた理由を理解しましょう [医学関連]

前回の記事の関連です。

今世の中には様々なガイドラインが存在していて、ガイドラインを知らないと医療が出来ない時代になっています。

簡単に言えば、ガイドラインとは、以下のような物です。日本合コン医学会のガイドライン(架空のガイドラインです)にはこうあります。

合コンでは一番左に座ることを推奨する(推奨度低、エビデンスレベル未確定)。

これを見て、そうか!合コンでは一番左か!と考えてしまいますが、何故そう言うガイドラインになったのか、そして、推奨度などはどうなのかを気にします。ガイドラインには必ず解説文があります。それを見てみましょう。

人間は視線を左から右へと移動させる傾向がある。合コンでも相手を左(自分から見たら右)から右へとみていく。
また、人間は最初と最後はよく覚える傾向にある。
よって、合コンでは一番最後に視界に入る一番左に座るのが最も印象に残り、成功率(性交率)が高いと考えられる。

なるほどと思う部分もあれば、絶対そうとは言えないんじゃないの?と言う事もあります。
ある先生が言われていましたが、某CDCのガイドラインは、研究者ばかりのメンバーが会議室で作成しており、現場の人はほとんどいないそうです。事件は現場で起きてるんだ!と言う名台詞(もう古い?)があるように、論文だけで全てが決まるはずがありません。
また、10対10の席であれば、一番右に超美人がいたら、きっと一番左にいたら話も出来ず成功しません。印象に残るのは最初と最後とあるのに、何故最初は採用しないの?と言う疑問もあります。
また、合コンは毎回条件が変わります。席替えだってあるでしょう。よって、ガイドラインが全てではありません。その都度様々な知識と経験を駆使するのがプロという物です。

 さて、ルチンの酸素についてでしたね。何故ルチンの酸素投与がダメなのか?についてです。

 こちらの文献(要約だけですが)によれば、酸素投与をしても大きな差はないようで、差がないのなら投与しないで良いんじゃない?と言う感じです。差がないのなら日本はいい国で、酸素投与してもいい(外国は医療費が高いです)んじゃない?とも言えます。

 正確な論文は引用しませんが、例えば酸素投与が有害だったという論文があったとしても、その論文ではどのような研究をしたかについてチェックが必要です。心筋梗塞の患者さんに対して24時間酸素マスクをつけて、空気を流す、酸素を投与する(様々な濃度で)などをして死亡率等を比較したとします。そして、例えば死亡率が酸素を投与しないと5%なのに、投与すると6%になったというような研究があったとします。

 まず、最初のつっこみは、何もせず24時間酸素を投与し続けるとかないでしょ!と言う事です。救急隊の方が酸素をしてきたら予後が悪いのかというと、この論文からはそう言う結論は導けません。それから、だいたい論文の対象となる患者さんは、重症な患者さんとか、もともと何か病気のある人は外されています。目の前の患者さんは色々持病を持っているかもしれません。

 また、5%と6%の違いは大きいのか?と言う事です。このくじは5%の人に当たります!というのと、6%の人に当たります!と言うのと大きな差を感じますか?私は感じません。しかし、何と医学では大きな差があると考えます。通常1%以上の差がある場合は意味のある差と考えます。
 しかし、酸素を投与しても94%の人は死にませんし、酸素を投与しなくても5%の人は死にます(酸素が悪いという研究ですので)。つまり、酸素を投与するかしないかで結果が変わるのは1%、つまり100人に一人です。これをNNT(number needed to treat)とかNNH(number needed to be harm)という略語で表現します。今回は酸素を投与するという介入により害を及ぼすということなので、NNH100と表現します。繰り返しますが、医学ではこれを意味のある数字と考えているのです。

 ルチンに酸素投与を100人に行うと、その内1人が酸素投与のために死亡するが99人には影響がない。しかし、一酸化炭素中毒かもしれない、低酸素状態かもしれないと思った人は、酸素投与をしないと100人中5人ぐらいが死ぬかもしれません。どちらをとるか、(この可能性であれば)明白です。

 酸素投与が不利益を及ぼす可能性と、利益を及ぼす可能性は常に変化します。それを考えて行動するのがプロという物なのです。

 諸外国では裁判の証拠としてガイドラインが用いられることはないようですが、日本では用いられます。最近はガイドラインの前文に訴訟の証拠として用いることを禁ずるなんて書かれているものもあります。

 ある人が言っていました。ガイドラインはカーナビ。無難な道を示すが、それが最も近道だったり、快適な経路かと言えばそうではない。


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