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一酸化炭素中毒を疑ったら否定しないようにしましょう [医学関連]

まじめな内容はこちらのnoteに書きましたのでご覧ください。

一酸化炭素中毒は比較的多い中毒で、不完全燃焼が起これば容易に発症します。一酸化炭素は酸素の200倍近くヘモグロビンという酸素を運ぶタンパク質と結合しやすいそうです。少量の一酸化炭素でも死に到る可能性があります。密閉された空間で起こるような印象がありますが、例えばバーベキューを外でしていて発症したという例もあります。

よって、それほどまれではなく、重大な疾患ですので、疑ったら直ぐ治療しなければなりません。救急現場で出来るのは酸素投与ぐらいですが、酸素をするだけで一酸化炭素の排泄がかなり促されます。酸素投与しか出来ないという感じではなく、最高の治療をしている!という感じです。

救急隊の方は現場で焦げた臭いがしたら、一酸化炭素中毒を疑って酸素を投与して病院へ搬送するのが原則です。是非お願いします。

しかし、そうしない人が一定数います。
 理由としては二つ考えられます。

(1)酸素投与の危険性が強調されすぎている。
(2)よって、一酸化炭素中毒を否定したい気持ちが出てしまう。

(1)に関しては、急性冠症候群や脳卒中で酸素投与がされすぎていた反省と関連しています。以前はこれらの疾患を疑ったら、酸素を「ルチン」で投与すべきとされていました。「ルチン」とは、例えばラーメンは必ず替え玉とか、コンビニでは必ず午後の紅茶を買う(すみません、私です)というような行動のことです。
 色々な研究で酸素をルチンで投与すると良くないことが分かりました。酸素は細胞が活きていくのに必要なのですが、過剰な酸素は細胞を傷害したり、血管収縮作用があるらしく、組織は低酸素になったりする可能性があるそうです。例えば、脳卒中診療ガイドライン2021には「低酸素血症を認めない脳卒中急性期の患者に対して、ルーチンに低流量の酸素を投与することは勧められない」と書かれています。
 しかし、「低酸素血症を認めない脳卒中急性期の患者に対して、ルーチンに」投与しないと書かれているのであって、低酸素血症がある、あるいは低酸素血症がないと確信できない場合、そしてルチンでない場合には、投与すべきなのです。また、何故ガイドラインがそうなっているのかという理由も確認しなければなりませんが、長くなるので別記事にしたいと思います。
 救急隊員の方もそうですし、病院スタッフもプロなのですから、単に「ガイドラインにそう書かれているから」と言うのではなく、「ガイドラインには、これこれこう言う理由でそう書かれているけれど」と行動しなければならない場合もあります。

 私は救急患者さんは全て酸素を投与すべきだと考えています。短時間の酸素投与が悪さをする場合は限られているからです。例えば、パラコート中毒は酸素投与によって不利益が生じるのですが、低酸素状態であったら酸素を投与しないと死んでしまいます(酸素投与による不利益でも死んでしまうかもしれませんが)。CO2ナルコーシスという病態はめったにありませんし、救急隊の方であれば、患者さんは目の前におられるので、必要ならバックバルブマスク換気をすればいいです。

(2)に関しては、どんなことでも否定するのは難しいと考えてください。可能性が高いものはなおさらです。例えばサンタクロースはいないと言えるかというと、言えません(こちらを参照ください)。
 一酸化炭素中毒を一瞬でも疑ったら、高濃度酸素を投与して病院へ搬送してください。酸素投与の利益>>>>酸素投与の不利益です。
 何で酸素なんかやってくるんだ!と言って怒る医療スタッフがいたら、「ああ、この人は分かっていないなあ」とか「この人は女性(相手が女性だったら男性)にモテないだろうなあ」と思って許してあげてください。あなたは明らかに患者さんに良いことをしているのですから!

 と言う事で、一酸化炭素中毒を疑ったら、否定せず必ず高濃度酸素を投与してくださいね。



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