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心肺蘇生の開始は疑ったら開始です!ちゅうちょなく胸を押しましょう! [CPRの基礎]

 相撲のニュースでまた話題になっている心肺蘇生ですが、気になった意見があったので、救急科専門医として述べさせてください。

 心肺停止の診断は難しいです。
 心肺停止ではないか?と思ったら、ちゅうちょなく心肺蘇生を開始してください。
 あなたの対応がもし間違っていたとしても、それによる不利益は、患者さんが受ける利益によって抹消されます。

 相撲のニュースで、女性が土俵に上がったらダメとか、そういうことはここでは述べません。

 あれは心肺停止じゃないから、胸骨圧迫をしちゃダメなんじゃないかとか、心肺停止じゃなかったら胸骨圧迫をしちゃダメだと言う意見がSNSで散見されました。それに対する反論です。

 もう一度言います。

 心肺停止ではないか?と疑ったら、胸を押してください。
 胸を押さない方が罪です。

 以下理由を述べます。

 教科書的には、心肺蘇生は以下のような手順を踏みます。

 倒れている人を見つけた。
 まず現場の安全を確認(安全でなかったら近づいてはなりません)する。
 患者さんに呼びかけたり、体を揺すったりして反応を見ます。
 反応がなければ、助けを呼び、119番通報をします。
 正常な呼吸をしているかどうかを見ます。
 正常な呼吸ではないと考えたら、直ちに胸骨圧迫から心肺蘇生を開始します。
 救急隊が来るまで、あるいは、患者さんがやめてくれと言う(ことはめったにありません。専門である私でも26年間で1回しかありません)まで続ける。

 現場の安全はぜひ守ってください。不安があれば、助けに行かないでください。

 次に、患者さんが心肺停止になっているかを判断することですが、これは、医療従事者でも非常に難しいものです。例えば、正常な呼吸ではない患者さんを見てもらい、正常かどうかを判定してもらったら、正しく判定できた医療従事者は2割ぐらいしかいなかったと言うデータがあります。脈拍があるかどうかを見ることに至っては、正確な判断はもっともっと難しいです。よって、最近のガイドラインでは、脈拍を触れなくて良いことになっています。脈拍を触れた場合も、確実に脈が触れると思った場合以外は胸骨圧迫を開始します。

 突然ですが、オーバートリアージと言うことを解説します。

 日常生活において、よく分からない時には、皆さんどうしていますか??例えば、今日は妻の誕生日だった気がするけれど、違ったかもしれない、、、、、、、と言う場合どうしますか?今日が誕生日だと考えて行動しませんか?プレゼントは一応買っておいて、、、、、、、もし違ったら、本当の誕生日の日に渡せばいいし。
 こういうことをオーバートリアージと言います。いつでも100%正しい行動をすることは難しいです。だいたい6割正解で行くのが精いっぱいと思います。残りの4割はオーバートリアージで問題ありません。

 心肺停止の場合は、心肺停止ではない人に胸骨圧迫をしても大きな不利益はありません。しかし、心肺停止の人に胸骨圧迫をしなければ、約1分で生存率が約10%低下すると言われています。生存できても脳の障害が残ったりします。1秒でも早く心肺蘇生を開始すべきなのです。

 よって、この人は心肺停止なのだろうか?と迷う時間は、患者さんに不利益でしかありません。

 こんな事を言ったら怒られるかもしれませんが、私は病院で、大丈夫ですか?正常な呼吸をしていません!などとやってから心肺蘇生を開始したことはありません。一応プロですから、患者さんを見ただけで心肺停止が疑えます。そして、オーバートリアージで問題ありませんから、胸骨圧迫を開始しています。

 AEDの装着も同じで、心肺停止ではないかと疑ったらAEDを装着して構いません。もし、心停止でなかったら、AEDは動作しません(特殊な場合に動作しますが、動作しても患者さんへの不利益はわずかです)。

 もし、倒れている人を見かけたら、勇気を出して心肺蘇生をしてくださいね!


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