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心筋梗塞の患者さんに酸素を投与すべきか? [CPRの基礎]

 酸素投与は色々と難しいです。救急隊の方と病院側で結構もめるポイントのようです。今回は救急現場における、急性心筋梗塞患者さんに対する酸素投与について考えてみましょう。

 まず結論からです。

 急性心筋梗塞だけでなく、酸素投与をした方がいいかな?と思ったら、迷わず酸素を投与しましょう。

 もし誰かに酸素をどうしてやってるんだ!と怒られて困ったら、私が応援に伺いますので呼んでください。私顔は怖いと言われていますから、相手は黙るかも知れません(^^)。

 酸素投与をすべき理由はただ一つ。低酸素より怖い物はないからです。出血の方が怖いじゃないか!と言う意見があると思います。そうですね。出血も怖いです!!しかし、出血は血液が足りなくなることで末梢組織の酸素が足らなくなる病態です。つまりは、低酸素と同じです。酸素がなければ人間は生きていけません。酸素が足りないことより恐ろしいことはありません。
 CO2ナルコーシスになるとか、スーパーオキサイドがどうとか、、、、、すべて命あっての話です。

 しかし、酸素投与をすると、冠動脈の血流が減ると言うことで、酸素投与はすべきでないという意見もあるようです。こちらの論文には、酸素投与をすると、冠血管抵抗が30%上昇し、冠血流が40%減るとありますが、18人の安定狭心症の患者さんでのデータです。急性心筋梗塞の患者さんではどうか分かりません。

 AHAの心肺蘇生のガイドライン2015に引用されているこちらの文献でも、酸素投与による弊害がたくさん載っています。が、検討した51の文献のうち、検討に値した物はたったの2つだったようです。
 そのうちの一つでは、酸素か空気を6リットル/分で24時間流して比較しています。もう一つの文献は4リットル/分です。何も考えず、SpO2等による酸素の減量もせず、酸素を4−6リットル/分で24時間長し続ける、、、、、、、そんなやつおらんやろ〜って思います。また、二つ目の文献は、酸素投与群の方がSpO2が低かったようで、重症例が多かったのかも知れません。

 よって、日本循環器学会のガイドラインでは、酸素投与について以下のように述べています。

クラス I
 ・肺うっ血や動脈血酸素飽和度低下(94%未満)を認める患者に対する投与(レベルB)
クラス IIa
 ・すべての患者に対する来院後6時間の投与(レベルC)

 日本循環器学会のガイドラインP.21の本文には「緊急治療開始から最初の6時間は全例で酸素投与が勧められる」とも書いています。そうなんです。酸素はやっていいんですよ。

 もう一度言います。

 酸素を投与した方がいいかな?と思ったら、酸素を投与しましょう。

 こちらのスライドがよくまとまっています(研修医の先生が作られたようです。素晴らしい!)のでご覧ください。私の記事を読むより、このスライドを読む方が良いかもです(最初に言えよな!って突っ込んでみてください(^^))。


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いつも読んでます。来年の国試の受験生です。
今年の医師国家試験で解答が割れてる問題があります。E42番です。先生はどうお考えになりますか?
by お名前(必須) (2018-02-19 21:34) 

Kim

いつも読んでいただきありがとうございます。

こちらの問題ですね。白熱しているようですね。
https://kousoku.medilink-study.com/doctors/112/thread/doctors_112_E_42

折角なので記事を書いてみました。読んでみてください。
ご意見いただければ幸いです。

by Kim (2018-02-20 09:18) 

Kim

こちらに記事を書きましたので、ご意見いただければ嬉しいです。

kekimura.blog.so-net.ne.jp/2018-02-20


by Kim (2018-02-20 09:58) 

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