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早くて浅い呼吸は何故良くないのか? [医学関連]

 蘇生の講習会などでは、患者さんの呼吸の観察をしっかりするように教えられます。呼吸の状態はとても大事なバイタルサインの一つだからです。

 「呼吸は浅く、早いです!」

 と言うのは、患者さんの状態が悪いことの代名詞でもあります。そして、ほぼ間違いなく講習会では患者さんの呼吸は浅くて早いです。

 ところで、何故呼吸は浅くてはいけないのでしょうか?何事も過ぎたるは及ばざるがごとしなので、浅めの呼吸を頻繁に行っても良いのではないかと思いますが。

 結論から言えば、浅くて早い呼吸は充分な呼吸になっていないので、効率が悪く、疲れるだけなのでよくありません。

 死腔、死腔換気率と言う言葉を知っていれば簡単なことです。

 以下に簡単に解説します。

 例えば500mlの空気を吸ったとします。これを一回換気量500mlといいます。

 一回換気量の全部が酸素や二酸化炭素のやりとりに関与できるかと言えば、そうではありません。例えば、気管支の中や口の中、鼻の中などは肺胞がありませんので、換気に関与できません。このような部分を死腔と言います。

 色々な本に書かれていますが、死腔はだいたい2ml/kgだそうで、体重50kgの人では約100mlあります。よって、一回換気量が500mlの人は、実際は400mlの換気しかされていません。

 さて、ここで一回換気量が半分になったとします。吸い込むガスの量は250mlになりますが、死腔の量は変わりませんので、実際に換気に関与する部分は150mlと半分以下になります。

 一回換気量500mlで15/分の呼吸の時は、分時換気量(1分間に換気する量)は500×15=7500mlで、死腔の換気は100ml×15=1500mlとなりますので、有効な換気量は6000mlです。
 状態が悪くなって一回換気量が半分の250ml、呼吸回数が30/分となったとします。分時換気量は250ml×30=7500mlで変わりませんが、死腔の換気量は100×30=3000mlと増えてしまいます。よって有効な換気は4500mlとなり、1500mlも減少しています。
 つまり、呼吸回数が増えると死腔の換気が増えるので、有効な換気量が減ってしまうのです。

 これは人工呼吸器につないで人工換気をしているときも同じで、呼吸数を増やすよりも一回換気量を増やした方が換気の効率は良いです(が、気道内圧が上がってしまうので難しいです)。

 呼吸回数が増えれば、当然呼吸に要するエネルギーは増えます。使うエネルギーが増えるのに換気の高率が悪い、、、、、、これは放置すると大変なことになると予想できますね。

 呼吸が早くて浅いのは、そのような状態になる患者さんはヤバい状態であると言うこと、そのような呼吸は効率が悪いので、そのうち呼吸筋疲労が来て呼吸が止まってしまうかも知れないようなヤバい状態であることの二つを示しているのです。ある人の言葉を借りれば、ヤバいよヤバいよ、マジでヤバいよ!ってことです。

 だから、呼吸が浅くて早いのは良くない状態を示しているのです。


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