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消化管出血の診断に経鼻胃管はいかんです! [医学関連]

 消化管出血が疑われる患者さんが来院されたとします。例えば48歳の男性で腰痛のためロキソニンを飲んでいる。たばこも吸っている。その人がお酒を飲んでいたら失神したと。

 現在は意識清明で、明らかな身体所見の異常は認めない。直腸診をしても特に異常はない。高血圧の薬などは飲んでおらず、心電図も異常がない、、、、、、、

 とすると消化管出血の除外をしたいですよね。私個人の考えでは緊急胃カメラですが、色々でやれません。そうすると経鼻胃管を入れて血液が引けるかどうかを診ようと考えることがあります。これは良いのだろうか?と言うのが今日のテーマです。こちらのスライドも勉強になります。

 結論から言えば、経鼻胃管は感度が高くないので、消化管出血の除外が出来ません。よって、行うべきではないと考えます。

 こちらの文献によれば、消化管出血に対する経鼻胃管の感度は42〜84%だそうです。こちらの文献によれば、経鼻胃管の陽性尤度比は3.1だそうです。つまり以下のようになります。

 経鼻胃管を入れて血液が引けてきた → 消化管出血の可能性が非常に高いので胃カメラをすべき
 経鼻胃管を入れたが血液は引けなかった → 消化管出血ではないと言えないので胃カメラ?

 検査とは行動が変わるから検査をするものです。合コンで年齢や収入を聞くのは、その結果でその人にアタックするかどうかを決めるからですよね、、、、、、たぶん。経鼻胃管を入れても行動が変わらない(結局胃カメラをするしかない)から、やる意義はありません。

 またガイドラインによれば、「出血性消化性潰瘍に対する内視鏡治療は薬物治療単独に比べて初回止血・再出血の予防が良好で、緊急手術への移行・死亡率を減少させるため、行うように推奨する(推奨の強さ1、エビデンスレベルA)」とあります。除外も出来ますし、出血があったとしたら行うべきとされているわけですから、胃カメラを行うのが良いでしょう。

 また、食道静脈瘤などがあれば出血させてしまう可能性もあります。レントゲンで確認すれば大丈夫でしょうが、気管に入ってしまい、気管を洗浄してしまう可能性もあります。

 よって、経鼻胃管を消化管出血の除外に使うのは辞める方が良いと思います。あらかじめ洗浄しておけば胃カメラがやりやすいというのは良いと思います。胃カメラはやる前提で入れるわけですから。経鼻胃管で血液が引けてこなかったから胃カメラはしなくて良いんだという風に判断すべきではないということです。

 以前経験した患者さんは、経管栄養中の方で、細い経管栄養チューブをいれていたのですが、原因不明の貧血があり、消化管出血を疑ったのだがチューブからは血液が引けず、大腸ファイバーをしても原因が分からず、、、、、、、胃カメラしたら胃の中は血だらけでした。何故チューブから血液が引けなかったのか(普通の胃液が引けたようです)原因が分かりませんが、経鼻胃管で消化管出血の除外をしてはいけないんだなと強く感じた症例でした。

 お時間のある方はこちらのディスカッションもご覧ください。私が参加していてビックリしました(^^)。




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外科医

消化器外科医です。救急に興味ありいつもブログを拝見し、日常診療に役立てております。

確かに、私も経鼻胃管「だけ」で消化管出血か否か診断するのは「いかん」と思われます。

ただ、「例えば48歳の男性で腰痛のためロキソニンを飲んでいる。たばこも吸っている。その人がお酒を飲んでいたら失神したと。現在は意識清明で、明らかな身体所見の異常は認めない。直腸診をしても特に異常はない。」という状況で緊急胃カメラが必要な消化管出血の除外が必要となりますでしょうか?直腸診で付着する便に異常があれば緊急で内視鏡が必要と考えますが。。

「明らかな身体所見の異常は認めない。直腸診をしても特に異常はない」状態でもなお急性の消化管出血が否定できなければ、陰性尤度比を理解しつつもダメ押しで経鼻胃管を入れてしまいそうです。

身体所見の異常を認めないのであれば、超緊急の大量出血ではないでしょうから時間をおいて採血して貧血の進行度をみる、造影CTを撮って出血部位を推測するなどして、もう少し上部消化管出血「らしさ」を上げてから内視鏡医を呼ぶように思います。でないと内視鏡医も来てくれないのでは!?

もしこれらの検査単独ではいずれも陰性尤度比は低くないでしょう。ただ、すべての検査で消化管出血が否定的であれば、合わせ技で緊急の上部消化管内視鏡検査が必要な消化管はまず否定できるように思います。

by 外科医 (2017-04-05 21:27) 

Kim

外科医さん、コメントありがとうございます。

失神の原因として、少しでも消化管出血が疑われるのであれば、胃カメラすべきだと思います。なぜなら、その後大出血して即死と言う事も有り得るからです。実際、そう言う患者さんの経験があります。

先生が仰るように、CTや採血フォローでも良いと思います。

経鼻胃管を胃カメラの適応に使うのがよくないという事が分かっていただきたかったことで、症例は不適切だったかも知れません。

また、私は以前内視鏡をしていましたので、やる時は自分でやれます。よって躊躇する必要がありません。そもそも、胃カメラをそんな敷居の高い検査にすべきでないと思っています。色々な所で散見しますが、経鼻胃管を入れて失敗するのは、胃カメラの敷居の高さがあると思っています。胃カメラを頼みにくいから、胃管を入れて可能性を低めておきたいと考えざるを得ないのでしょう。それで患者さんの命を失わせる可能性があるとしたら、責任は敷居の高い消化器内科医にあると言ったら怒られるでしょうか。

色々なご意見、ありがとうございます。

by Kim (2017-04-06 14:39) 

外科医

返信をどうもありがとうございます。

内視鏡もされるとのこと、さすがです。私は手術にかまけて内視鏡手技は一切手を出しておりませんでした。いま現在は大学院にて研究中で、マウス相手に手術(?)の日々です。一般診療から離れつつありますが、先生のブログを読んで、患者さんの命を救うぞとERで燃えていた以前の日々を忘れぬよう、精進いたします。

どうもありがとうございました。
by 外科医 (2017-04-06 21:25) 

Kim

外科医さん、コメントありがとうございます。

手術でも内視鏡でも、何でもそうですが、技術がある人は敷居を低くすべきだと思っています。確かに何でも依頼されたら忙しくて大変ですが、技術は何のためにあるのかと考えたら、必要な患者さんのために必要な時に提供するためには、敷居が低くあるべきかなと思います。

研究も多くの患者さんを救う大切なお仕事の一つです。私は研修したことがありませんので、是非よろしくお願いいたします。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

by Kim (2017-04-07 08:23) 

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