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胆嚢炎だけでは黄疸や肝機能異常はきません [研修医教育]

 以前の記事のアップデートです。最近、胆嚢炎だと思うのですが、肝機能がどのぐらい上がるとオペ適応なんでしょう?とか、肝機能が上がっているんですが胆嚢に石はないんです、、、、、、と言う話を良く聞くので、再度アップです。

 胆嚢炎だけでは、肝機能異常は起こしません。

 皆さん忘れないようにしましょう。こちらのガイドライン(最新ではない可能性があります)には以下のようにあります。

 急性胆囊炎における、肝・胆道系酵素とビリルビンの血中濃度の高度上昇は、総胆管結石の合併(レベル4)、Mirizzi症候群、あるいは肝炎の併発を意味する。また、前述のように、急性化膿性胆囊炎では高ビリルビン血症を呈する。急性胆囊炎において、高ビリルビン血症時に総胆管結石を合併する頻度は4〜73%であり(レベル4)、高ビリルビン血症は必ずしも総胆管結石の合併を意味しない。

 UpToDate "Acute cholecystitis: Pathogenesis, clinical features, and diagnosis(急性胆嚢炎:病院、臨床徴候、診断)"には以下のようにあります。

 典型的には、桿状核球の増加(左方移動)を伴う白血球増加を認める。総ビリルビンとアルカリフォスファターゼの上昇は合併症のない胆嚢炎では一般的ではない。胆道の閉塞は胆嚢に限局しているからである。もし、そのような異常があれば、胆管炎、総胆管結石、ミリッチ症候群などの合併症を考えるべきである。ミリッチ症候群は、胆管に嵌頓した胆嚢結石が総胆管を外から圧迫する病態である。

 しかし、これらの合併症がないのに、高ビリルビン血症や黄疸に伴い、血清アミノトランスフェラーゼやアミラーゼの軽度上昇を認めたとする報告もある。これは、小さな結石や胆泥、膿などの通過によるものかも知れない。
(これらが総胆管の閉塞を起こしたと言う事でしょう)

 気腫性胆嚢炎の患者では、軽度から中等度の非抱合型ビリルビン上昇を認めることがある。クロストリジウムの感染によって溶血が起こるためと考えられている。

 またJAMAの有名な文献「Does this patient have acute cholecystitis?」には以下のような表が載っています(有料なので会員しか見られないかも)。

 尤度比では、ほとんどの95%信頼区間が1を挟んでおり、以下の検査をして、陽性だろうと、陰性だろうと、胆嚢炎の確率を変化させないと言うことになります。

 検査名      感度         特異度      陽性尤度比   陰性尤度比
ALP>120 U/L  0.45 (0.41-0.49) 0.52 (0.47-0.57)   0.8 (0.4-1.6) 1.1 (0.6-2.0)
ALTかASTが上昇 0.38 (0.35-0.42) 0.62 (0.57-0.67) 1.0 (0.5-2.0) 1.0 (0.8-1.4)
T.Bil>2mg/dL 0.45 (0.41-0.49) 0.63 (0.59-0.66) 1.3 (0.7-2.3) 0.9 (0.7-1.2)
総ビリルビン、AST、アルカリフォスファターゼ全て上昇
        0.34 (0.30-0.36) 0.80 (0.69-0.88) 1.6 (1.0-2.8) 0.8 (0.8-0.9)
どれか一つ上昇 0.70 (0.67-0.73) 0.42 (0.31-0.53) 1.2 (1.0-1.5) 0.7 (0.6-0.9)
白血球上昇   0.63 (0.60-0.67) 0.57 (0.54-0.59) 1.5 (1.2-1.9) 0.6 (0.5-1.8)
白血球上昇と発熱 0.24 (0.21-0.26) 0.85 (0.76-0.91) 1.6 (0.9-2.8) 0.9 (0.8-1.0)

 まあ、胆嚢炎で肝機能が悪くなると思っていても、臨床上問題となることはあまりないんですがね。


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青森からです

こんばんは。夜遅くに失礼します。
今日父が7時間におよぶ手術をしました。
以前内視鏡でとれるといった胆石が内視鏡でみつけられず、時間をおいての手術でした。
そして今日、腹腔鏡(?)の予定でしたが思ったより状態が悪かったようでお腹をきったそうです。そして、ミリッチ症候群だったそうで中の臓器はひどかったそうです。
8月に痛みを訴え受診しましたが、CTはいらないでしょう、今痛みないなら大丈夫でしょう、という診断でした。‥不安で後日違う病院でCTとりましたが。とりあえず無事に手術が終わりました。ミリッチ症候群は胆のうをとると治るものですか⁇色々調べていますが、分からずコメントさせていただきました。
本当に祈るばかりです。
by 青森からです (2015-12-04 21:49) 

Kim

青森からですさん、コメントありがとうございます。

ご心配ですよね。

ミリッチ症候群は胆嚢が総胆管に癒着していることが多いです。私も以前手術を執刀させて頂いたことがありますが、癒着がすごくて大変な手術でした。胆嚢を取るだけでなく、胆管を切除してバイパス手術を行いました。

ちゃんとした治療を受けられているようですから、大丈夫ですよ。ミリッチ症候群は胆嚢を取れば治ります。胆管の狭窄も伴うことが多いので胆管の処置もされていると思われます。担当の先生を信じていれば大丈夫です。


by Kim (2015-12-04 22:57) 

青森からです

お返事いただき本当にありがとうございます!
今日また、会いに行ってきましたが
少しは歩いたりできるようになったようです。
昨日は痛くて寝れなかったようでウトウトしていました。父も、胆管を切って小腸とつなげたそうです。
Kimさんに聞けて本当に良かったです!
ゆっくりしっかり治していきたいです。
担当の先生を信じ、これからがんばっていきます。本当にありがとうございました。
by 青森からです (2015-12-05 15:33) 

Kim

青森からですさん、良かったですね。

担当の先生と私と意見が違っていなくて良かったです(笑)。

早く元気に退院できることをお祈り申し上げます。

by Kim (2015-12-05 18:43) 

青森からです

お久しぶりです!
前回は相談にのってくださってありがとうございました。
手術後、炎症がおこったりしましたが飲み薬で回復しているようです。
ごはんも食べ始め、少しずつ笑顔も増えてきました。
早く家に帰りたいそうです(笑)
明日、血液検査をし退院の予定が決まるそうです!
ありがとうございました!なにかありましたらまたコメントにお邪魔するかもしれません(笑)
寒くなりましたね、体に気をつけてお仕事がんばってください!
by 青森からです (2015-12-15 22:06) 

Kim

青森からですさん、無事退院出来そうで良かったですね。

こちらこそ、よろしくお願いします。

by Kim (2015-12-16 10:45) 

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