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心肺蘇生中に血液ガスをとるべきか? [研修医教育]

 心肺蘇生中に血液ガスを採取すべきか?というのは、いつも議論になるところです。

 個人的にはとらない方が良いと思っています。

 以下に理由を。

・検査する意義がない(行動が変わらない)。
・だいたい静脈血です。
・データを見てしまうと、どうしても治療したくなる。

 解説?の前に、AHAのガイドラインから。

 Arterial blood gas monitoring during CPR is not a reliable indicator of the severity of tissue hypoxemia, hypercarbia (and therefore adequacy of ventilation during CPR), or tissue acidosis.222 Routine measurement of arterial blood gases during CPR has uncertain value (Class IIb, LOE C).

 私の下手な日本語訳です(日本語の書籍が出版されています。P.S750)。

 心肺蘇生中の動脈血ガス測定値は、組織の低酸素、高二酸化炭素血症(つまり心肺蘇生中の換気が適切であるかどうか)、組織のアシドーシスなどの信頼出来る指標ではない。心肺蘇生中の動脈血液ガスのルチン測定は、意義があるかどうか分かっていない(Class IIb, LOE C)。




・検査する意義がない(行動が変わらない)。
 検査というのは、その結果によって行動が変わるから行うものです。合コンで年齢や職業、年収などを聞くのは、それによって対象外とするかどうかを決めるからでしょう(たぶん)。血液ガスでは行動が変わりません。だからとる意義は低いと言うことです。
 血液ガスは、肺の酸素化能、動脈血中の酸素の量、二酸化炭素の量、代謝の問題などが分かります(電解質も分かりますが、ここでは述べません)。
 酸素化能、酸素の量、二酸化炭素の量については、どうであれ、蘇生をしっかりする以外に改善する方法がありませんし、そもそも血液ガスでそれを改善するなんてダメでしょう。過換気はいけませんから二酸化炭素が高かったからと言って、換気の方法を変えるべきではないでしょう。
 代謝の問題は色々です。心肺停止中は高いに決まっていますから、検査する意義はあまりないかも知れません。

・だいたい静脈血です。
 前回の記事で書いたように、拍動しているのは静脈の可能性が高いです。静脈血の評価は、心肺停止でない場合でも難しいです。

・データを見てしまうと、どうしても治療したくなる。
 例えばpHが6.9だった場合、メイロンを入れたくなります。メイロンはエビデンスレベルが低いです。と言っている私でも、pHが7を切っていたら入れたくなりますから入れてしまいます。これが良いのか、悪いのか、判断出来る人は少ないでしょう。もともとアシドーシスがあったのか、心肺停止後にアシドーシスになったのか?判断は困難だと思います。

 と言いながら、心肺蘇生中は血液ガスをとっている私って一体、、、、、、、


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みい

先生にお聞きしたいことがあります。

私は循環器に関わっている薬剤師です。循環器の薬の使い分けについて書かれている本や、それぞれの疾患について書かれている本はいくつもありますが、この疾患のこういう状態の時はこの薬を使う、という本はなかなか見ません。(私の探し方がいけないのかもしれませんが…)

例えば、うっ血性心不全の方には、ハンプを使って、こういう状態になったら経口薬に切り替えて…などそういったものが書かれている本というのはドクター向けでも構いません、あるのでしょうか…??
by みい (2014-04-01 19:54) 

Kim

みいさん、コメントありがとうございます。

非常に重要な質問なんですが、答えは難しいです。現場は色々なので、、、、、、たぶん薬剤師さんの服薬指導でも、明解に書かれているのは少ないのではないでしょうか?

うっ血性心不全の時にどういう薬を使うべきか?は私も知りたいぐらいです(^^)。

強いて言えば、研修医向けの本はいいと思います。レジデントノートと言う雑誌の特集を見るのが一番良いかもしれません。今はどこの病院にもあるでしょう。

雑誌の特集で、例えば「うっ血性心不全について」と言うのが組まれるのは日本の特徴だそうです。そう言うのを見るのが一番良いと昔習いました。あくまで昔です(^_^)v。


by Kim (2014-04-02 08:40) 

みい

大変貴重なお返事ありがとうございます!
レジデントノートというものは知らなかったので、明日病院で探して見たいと思います!!

確かに全ては臨床ですから、患者さんによってさまざまですのでマニュアル通りには行きませんよね。

ちなみに、先日本屋さんで立ち読みしたレジデント向けの本で、診断と治療社から出ている循環器研修ノートというのはご存知ですか??こちらはどうなのでしょうか…
by みい (2014-04-03 00:21) 

Kim

みいさん、コメントありがとうございます。

循環器研修ノートというのは知りませんでした。

ただ、循環器の医師になる訳ではないので、必要なところだけ、、、、、ですから、やはりレジデントノートなどが良いと思います。病院の研修医の先生に借りてコピーするのも良いかもしれません。本当は買うべきですが、医学書は高いですし、薬剤師さんには必要ない部分も多いので、、、、、、、って事書くのは法に触れるのかな?

by Kim (2014-04-03 00:33) 

V3

まあその、最近では血液ガス測定に付随して電極法で電解質、血糖評価はできます。これらのデータは蘇生中の行動様式を変えます。家族への説明にも影響します。
by V3 (2014-04-09 22:09) 

Kim

V3さん、コメントありがとうございます。

血糖や電解質を測るための血液ガスはこの記事では書いていません。あくまでpH、PCO2、PO2です。

電解質や血糖ならば、普通の採血で測れます。血液ガスの方が早く分かるかも知れませんが。

by Kim (2014-04-09 22:32) 

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