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胸骨圧迫の有効性を大腿動脈の拍動で見られるのか? [CPRの基礎]

 胸骨圧迫をしている時に、有効な圧迫かどうかを調べる方法として、脈をみることがあります。私はみませんが、大腿動脈(足の付け根)をずっと触っている人が時々います。これは意味があるのでしょうか???

 まず通常の心肺停止でない場合です。大腿動脈が触れたら、血圧は60mmHg以上はあるとされています。橈骨動脈が触れたら80mmHg以上(もちろん例外はあります)。だから大腿動脈を触れて、触れれば血圧は60mmHg以上あると考えて良いでしょう(感度は低いでしょうが。触れなかったから血圧が60以下とは言えないのでは?)。

 心肺蘇生中にも脈が触れれば、血圧が60mmHg以上あるという事になるのでしょうか???

 こちらのAHAのガイドライン2010に載っています。原文は以下の通りです。

Clinicians frequently try to palpate arterial pulses during chest compressions to assess the effectiveness of compressions. No studies have shown the validity or clinical utility of checking pulses during ongoing CPR. Because there are no valves in the inferior vena cava, retrograde blood flow into the venous system may produce femoral vein pulsations. Thus, palpation of a pulse in the femoral triangle may indicate venous rather than arterial blood flow. Carotid pulsations during CPR do not indicate the efficacy of myocardial or cerebral perfusion during CPR. Palpation of a pulse when chest compressions are paused is a reliable indicator of ROSC but is potentially less sensitive than other physiologic measures discussed below.

Healthcare providers also may take too long to check for a pulse and have difficulty determining if a pulse is present or absent. There is no evidence, however, that checking for breathing, coughing, or movement is superior for detection of circulation. Because delays in chest compressions should be minimized, the healthcare provider should take no more than 10 seconds to check for a pulse, and if it is not felt within that time period chest compressions should be started.

 日本語版が出版されていますので、ここに転載するのは良くないでしょうから、私が訳してみます。同じ訳になったとしてもコピペではありません。

 臨床家はしばしば心肺蘇生中に胸骨圧迫の有効性をみるために動脈の拍動を触れようとするが、心肺蘇生注に脈をチェックすることの正当性と臨床的有用性について調べた研究はない。下大静脈には弁がないので、胸骨圧迫による血液の静脈系への逆流は大腿静脈の拍動を生み出すかも知れない。よって、大腿三角における脈の触知は動脈血流よりも静脈血流を示している可能性がある。心肺蘇生中の頚動脈触知も心筋や脳への環流の有効性を示唆しない。胸骨圧迫中断中の脈の触知は自己心拍再開の有用な指標であるが、以下に述べるような他の指標よりも信頼度は低い。

 医療従事者は脈のチェックに時間をかけすぎるし、脈があるかないかを感じるのは難しい。しかし、(2000年ガイドラインで示されていたような)呼吸、咳、体動を調べることが、循環があるかどうかの検査として優れているというエビデンスはない。胸骨圧迫開始の遅れを最小限にすべきであるため、医療従事者は脈のチェックに10秒以上をかけてはならない。10秒以内に脈を触知出来なければ、胸骨圧迫を開始すべきである。

 関連項目として、心肺蘇生中にとった血液ガスは静脈血である事も良くあります。触れる血管が動脈だと思って採血するからです。心肺蘇生中は脈が触れる血管の外を狙う方が良いかも知れません。

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コメント 2

静香

Kim先生、こんばんは。
就職活動まっただ中で、なかなか
落ち着いてコメントが出来ませんが、
毎回興味深く、記事を拝見しております。

薬剤師向けの救急テキストに
CPRにおける脈確認の重要性が
書かれていたことを思い出しました。
確かに、脈を測ることに専念しすぎては
本来の目的が薄れてしまいかねませんね。

脈に触れたら具体的にどのくらいの血圧があるのか
初めて知りました。大変勉強になります。








by 静香 (2014-03-28 00:11) 

Kim

静香さん、コメントありがとうございます。

就活中なんですね。良いところが見つかると良いですね!

脈拍を触れることは意外に難しいです。触れれば触れていると言えるかと言えば、自分の脈を触れていることもあるそうで、心肺停止の患者さん(人工心肺中)で触れる実験をしたら、約1割で触れるとプロの人が言ったという実験があります。

脈を触れる行為は非常に重要(患者さんも喜びます)ですが、心肺停止中はあまり意味は無いと言えるでしょう。

by Kim (2014-03-28 08:04) 

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