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心室細動になりやすい患者さんとは? [医学関連]

 心肺蘇生の講習会で学ぶ最も大切なことは、心室細動の対応です。BLS講習会では、質の高い心肺蘇生(AEDも含めて)を行うことです。ALS(二次救命処置、医療従事者向け)講習会では、心室細動(VF)を早く見つけてその治療(薬物投与も含めて)を行うことです。もちろんBLSをやった上でですが。

 心室細動になりやすい患者さんというのをたまたま勉強しましたので紹介させて頂きます。UpToDate(水戸黄門様とこのブログでは呼んでいます)の「Clinical features and treatment of ventricular arrhythmias during acute myocardial infarction(急性心筋梗塞後発生した心室性不整脈の臨床的特徴と治療)」と言う文献からです。

VF Predictors — There are no clinical features that reliably identify the individual patient who is likely to develop ventricular fibrillation (VF) in the periinfarction period. However, retrospective analyses of several clinical trials and a large meta-analysis of both clinical trials and observational series have identified some factors that are associated with an increased risk of early VF. These include:

ST elevation myocardial infarction (STEMI) — In a meta-analysis including 57,158 patients, the presence of ST elevations was the most powerful predictor of primary VF (odds ratio [OR] 3.35 compared to non-STEMI, 95% CI 2.43 to 4.62).
Hypokalemia — In the GISSI-2 trial the incidence of VF among patients with a serum potassium <3.6 meq/L was nearly twice that seen in patients with a higher serum potassium.
Hypotension — defined as systolic blood pressure ≤120 mmHg on admission.
Larger infarcts (based upon myocardial enzyme levels).
Male sex (OR 1.27, 95% CI 1.12 to 1.43).
History of smoking (OR 1.26, 95% CI 1.04 to 1.53).
Preinfarction angina — Preinfarction angina may protect against out-of-hospital VF (OR 0.25, 95% CI 0.10 to 0.66, and OR 0.84, 95% CI 0.77 to 0.99 for two different studies, respectively). This effect is presumably due to ischemic preconditioning. (See "Clinical implications of ischemic preconditioning".)

心室細動(VF ;ventricular fibrillation)の誘因

 心筋梗塞発症直前から直後(periinfarction period)にVFを発症しやすい患者を認識するための信頼できる方法はないが、いくつかの後ろ向き臨床研究と臨床研究と観察研究のメタ解析によれば、VFを発症しやすいいくつかの要因が報告されている。以下に述べる。

・ST上昇型心筋梗塞(STEMI、ステミと読みます)
 57158人の患者を含んだメタ解析によれば、ST上昇は、心室細動の強力な危険因子であることが示されている。オッズ比は3.35(95%信頼区間は2.43-4.62)。
・低カリウム血症
 GISSI-2研究では、カリウムが3.6未満である患者では、そうでない患者の2倍VFの危険があると報告されている。
・低血圧(入院時の血圧が120以下と定義される)
・心筋梗塞の範囲が広い(心筋逸脱酵素の値に基づいて決められている)
・男性(オッズ比が1.27、95%信頼区間は1.12から1.43)
・喫煙(オッズ比は1.26、95%信頼区間は1.04〜1.53)
・Preinfarction angina(日本語が分かりませんが、梗塞になる前に狭心症があったかどうかと言う意味でしょうか?)
 Preinfarction anginaは院外発生VFの危険因子ではない(オッズ比 0.25、95%信頼区間0.10から0.66、別の研究では0.84,、95%信頼区間0.77から0.99)このことは、虚血のプレコンディショニングによるものかも知れない。

 70歳の男性で、小池さんです。30分前からの胸痛で来院しました。カルテによれば、喫煙歴があるようです。来院時の血圧は110/60mmHg。ラシックスという薬を飲んでいて、前回の血液検査ではカリウムが3.5だったそうです。なんて患者さんはVFの危険が非常に高いと言うことでしょうか。

 久しぶりにまじめな記事です(^^)。

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とらにゃん

血圧は高いしタバコは止めたから、わたくしは大丈夫そうだw
by とらにゃん (2012-06-19 09:43) 

Kim

とらにゃんさん、コメントありがとうございます!

ゼロになる訳ではないですので、念のため(笑)。

by Kim (2012-06-19 12:50) 

銀治郎

腎機能が低下してしるのか、CHFなどでラシックス内服中でしょうか。
喫煙もあれば、血管収縮によりACSのリスクが高いでしょう。
by 銀治郎 (2012-06-24 05:25) 

Kim

銀治郎さん、コメントありがとうございます。

おっしゃるとおりですね。どんなものにも危険が伴うと言うこと認識しておかないといけませんね。

by Kim (2012-06-24 10:25) 

職務経歴書のサンプル

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
by 職務経歴書のサンプル (2012-07-13 10:47) 

Kim

職務経歴書のサンプルさん、コメントありがとうございます。

今後もよろしくお願いいたします。

by Kim (2012-07-13 10:52) 

マインド

先日、投稿させて頂いたものです。総合病院の泌尿器科外来で先日、膀胱ファイバ-スコ-プ検査・膀胱拡張水圧検査を行ってきました。そこでは、男性も女性もリドカインを使わず無麻酔で検査をするそうです。案ずるより産むがやすしで、多少の痛みはありましたが、無事300CCまで生食も入れる事ができて、画像も見る余裕もありました。検査結果は、間質性膀胱炎に見られる点状出血も見られず、膀胱も綺麗でした。との事で
安心しました。とてもいい経験になったなと自分でも思っています。
病院はとても苦手ですが、医療の事にはとっても興味があってブログなどをみては日々勉強させてもらってます。これからも色々な事たくさん知っていきたいなと思っています。これからも宜しくお願いします。
by マインド (2012-07-19 22:23) 

Kim

マインドさん、コメントありがとうございます。

無麻酔でもそんなに痛くないんですね。腕が良いのか、そういう物なのか、、、よく分かりませんが、どちらにしても無事終了し、異常なかったと言うことで良かったですね。

こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします!

by Kim (2012-07-20 09:06) 

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