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ガイドラインを使う時の注意点 [研修医教育]

 今はガイドラインの時代です。料理の本と一緒で、例えばカレーライスを作る時には、材料をこうして、ルーは最後に、、、、とかするのが良いとあります。

 頭痛の患者さんが来た時にも、これこれこう言った事を聞き、これこれこう言った条件であればCTを撮りなさいなどと書かれています。

 私のような素人が料理を作るのと、鉄人が作るのとでは全く違うのと同じように、医療でもガイドラインだけで良い治療は出来ません。そうでなければ医者はいらないということになります。

 最近はガイドラインに従っていればそれで良いんだと言う風になっていて、研修医の先生もそう言われていて残念だと言う記事が載っていました。たぶん会員登録が必要なので、少し引用すると、、、

「ある循環器内科医の友人は、ガイドラインによる治療について、こんな話をしてくれました。「患者が残念ながら亡くなったとき、担当の若手医師に『よく頑張ったけれど残念だったな』と声をかけると、彼曰く、『自分はガイドラインに沿って治療できていたので満足しています』。逆に、かなりの重症でこりゃあかんやろ?って症例をなんとか助けたとき、『すごいなぁ!こんな重症例が助かるとはなぁ』と褒めると、『と言われても、自分はガイドライン通りにやっただけですから』と…」。ガイドラインの遵守が治療の本質と勘違いし、臨床の場から、反省や感動が消えつつあると彼は嘆いていました。」

 我々が重視しているガイドラインと言うのはそんなに偉いものなのでしょうか???水戸のご老公よりすごいのか???考えてみましょう。

 カレーライスを作る場合、意見は色々でしょうが、材料として必要で、推奨度がクラスIのものは、カレーのルー(じゃなくてもルーを作る事が出来る人はいるでしょうが、ルーらしきものが入っていなければカレーではないでしょう)、ごはんぐらいでしょう。牛乳を入れる人もいますが、クラスIではなさそうです。入れてはいけない事はないでしょうから、クラスIIaでしょうか。

 次にAHAの2010年ガイドラインを見てみましょう。
 こちらには、エビデンスレベルとクラス勧告について表が載っています。

 恥ずかしながら、この違いを理解しておりませんでした、、、、クラスIは誰もが認める治療と言う事で、クラスIIIは誰もが認めない治療と言う事です。それぞれその中でもレベルが違っており、クラスIでLOE A(level of evidence)の者は水戸のご老公と言う事で誰も逆らえません。クラスIIIでLOE Aの物もやってはいけないと言う意味で水戸のご老公と同じです。

 クラスIなのにLOE Aでないものもあるようです。例えばこちらのBLSの所はクラスIでLOE Cです。

 The health care provider should also check for no breathing or no normal breathing (ie, only gasping) while checking for responsiveness; if the healthcare provider finds the victim is unresponsive with no breathing or no normal breathing (ie, only gasping), the rescuer should assume the victim is in cardiac arrest and immediately activate the emergency response system (Class I, LOE C).
 医療従事者は、反応の確認中に、呼吸がない、あるいは正常な呼吸でない(あえぎ呼吸のみなど)事も確認すべきである。傷病者に反応がなく、呼吸がないあるいは正常な呼吸でない場合には、救助者は傷病者が心停止していると考え、直ちに救急対応システムに通報すべきである(クラスI、LOE C)。

 成人の心肺蘇生の分野では、急性冠症候群に関する勧告を除けば、クラスIでLOE Aのものはたったの3つしかありません。

・発生から長時間経っていない心室細動に対する迅速な除細動
・気管チューブの正しい位置の確認と継続的なモニターのためのカプノグラフィーの使用
・心停止でない麻薬中毒が疑われる患者に対する補助呼吸とそれに続くナロキソンの投与

 また、やってはいけないと言う意味の、クラスIIIでLOE Aものものも3つしかないようです。

・トルサデポアンが疑われない心停止患者へルーチンのマグネシウム投与
・心筋梗塞や突然の心停止が疑われる患者への予防的リドカインや抗不整脈薬のルーチン投与
・肺塞栓が疑われない心停止患者におけるルチンの血栓溶解療法

 他は明らかにこうすべきであると言う証拠がないので、何でもガイドラインに従えばいいと言う事にはなりません。が、最近は裁判などでガイドラインが採用される事もあり、ガイドラインに書いてあるが、その時の偉い先生の意見であり、事故が起こった時には古くなっていたり、その先生は偉いんだけど変な先生で誰も逆らえなかった、、、、、みたいな可能性もあります。

 色々な事をきちんと理解して使わなければなりませんね。

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