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心肺蘇生後落ち着いたら酸素濃度を下げましょう [CPRの基礎]

 以前書いた記事ですが、もう一度書いてみます。こちらの雑誌に紹介されていたので、、、

 こちらに原文の要約が載っています。雑誌に要約の日本語が載っているので、この記事では解説を(半分は雑誌のぱくり)します。

 心肺蘇生後の人工呼吸器の設定で吸入酸素濃度を100%にする事をアメリカ心臓協会は推奨しているそうです(が、ガイドライン2005を見ても書かれていませんでした)。

 しかし、国際蘇生連絡協議会(ILCOR)は蘇生後の酸素飽和度を94−96%に下げる事を提案している(原文はこちら)のですが、その根拠が希薄だったそうです(なのに何故提案するのでしょうか??根拠となった文献はたった一つ!)。

 この研究は120の米国の病院が参加した研究で、6326人を対象としています。最も生存率が良かったのは動脈血酸素分圧を60以上300mmHg未満の間に保った群で、300以上と比較してNNTは12.5でした(動脈血酸素分圧を300以上にしないようにした12.5人のうち一人がそのために生存できる)。何故高濃度酸素が行けないのか理由は不明と言う事です。

 ただし、例えば動脈血酸素分圧を61にすれば本当に良いのか分かりません(ずっと61とは限りませんから)し、この提案に従うべきかどうかはまだ分かりません。

 先ほど酸素飽和度を94−96%にすることを提案しているとあったのですが、2010年度版のCoSTRでは何とも言えないと書いています。ころころ意見が変わっちゃだめですがよ〜。

 CoSTRには以下のようにあります。型の如く私のレベルの低い日本語訳です。時間のない方は読む必要ありません。酸素濃度を調節する事について何とも言えないと書いている事が分かれば良いです。

 そして、アメリカ心臓協会は、、、、酸素飽和度を94%以上に保てるように酸素分圧を下げることを推奨しています。根拠がないのに、、、、なんでだろ〜。こちらにあるガイドライン2010のハイライト(日本語版もありますよ)によれば、CoSTRには根拠がないとあるが、最近の研究で高濃度酸素が悪さをすると言う報告があるのでと書かれています。

 時間のある人向けのCoSTRの日本語訳です。

酸素分圧の管理
 院外、院内を問わず心停止後に心拍再開した成人患者で、酸素分圧を調節する戦略をとる(特定の酸素分圧を決める事も含む)ことが標準的な治療と比較して予後(特に生存率)を改善するか?

科学に基づくコンセンサス
 心拍再開後の60分間酸素濃度を30%にした場合と100%にした場合を比較した無作為前向き研究(LOE1)が一つある。心拍再開後の60分間の平均動脈血中酸素分圧は、酸素濃度が30%の群で110±25mmHg、100%の群で343±174mmHgであった。急性脳損傷の血液検査データ、生存退院率、退院時の神経学的予後が良い患者(cerebral performance categoryが1か2)の割合は有意差を認めなかった。しかし、この研究は生存率と退院時のしけ医学的予後で充分な有意差を出すのに適切な患者数が得られていない(各群14名)。また酸素濃度を30%で管理した患者のかなり多く(30%)が酸素飽和度を95%異常に管理するために吸入酸素濃度を増やしている。よって、この研究は、治療の有効性や有害事象を提唱するのには不十分である。
 ある動物実験では動脈血中酸素分圧を450mmHg以上にするために心拍再開後の15分から60分間吸入酸素濃度を100%とした場合、動脈血酸素飽和度を94から96%の間に保った場合と比較して、神経の変性と神経機能の悪化をきたした。
 6つの動物実験(LOE5)では動脈血中酸素分圧を250から350mmHgを超えるよう100%酸素で管理した場合、室内空気で管理した場合に比較して、脳脂質の酸化が増加し、代謝障害(ブドウ糖の利用障害、ミトコンドリア機能障害)が悪化、神経の変性が増加し、神経機能の予後が悪くなった。これらの研究では短期間(24時間以内)の評価しかしていない。別の研究では心肺蘇生中、心拍再開後1時間の間100%酸素を投与した群と室内空気の群を比較し、72時間後の予後に有意差を認めなかった。また別の研究では、心拍再開後15分まで低濃度の酸素(8.5%と12%)を与えた場合、予後に有意差を認めていない。この研究では72時間後の神経学的指標と生存率において有意差を認めていない。また脳損傷の血液マーカーにも有意差を認めていない。
 ある動物実験では、心停止後の心肺パイパス再還流(PCPSのこと?)の最初の10分間の間、動脈血中酸素分圧を250から300mmHgに保つ事は、動脈血酸素分圧を40から90mmHgに保つ事と比較して心機能の悪化を来した。別の動物実験では、心停止後の心肺バイパスの最初の15分間動脈血中酸素分圧を40から110mmHgへ徐々に増やした場合と、最初から90〜110mmHgに保った場合と比較して心機能や心筋障害について有意差を認めなかった。

推奨される治療
 心拍再開した心肺停止患者の早期治療において、動脈血酸素飽和度を保つために吸入酸素濃度を調節することを支持する、あるいは反対する充分な根拠は存在しない。

今後の課題
 心拍再開後の約1時間の間、100%酸素で管理する場合と、酸素飽和度を一定(たぶん94−96%)に保つために酸素濃度を調節する場合とを比較するための無作為前向き研究が必要である。心停止後の高酸素血症が心血管系の予後に与える効果について調査するため、心筋梗塞と心停止を合併した患者を評価する研究が期待される。

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