医師は腎障害の危険にさらされています [医学関連]
長時間手術の後などに患者さんから聞かれる事があります。「手術中におしっこに行きたくならないのですか？」と。
人間ですからもちろん行きたくなる事はあります。しかし、一般の人よりも我慢する能力が高いかも知れません。手術の前には水分摂取を控え、トイレに必ず行っておきます。私は手洗い（手術前に手を消毒することです。普通に手を洗うのとはちょっと違います）を始めるとトイレに行きたくなります。条件反射ですね。
渡辺淳一さんの小説には、手術中に分からないようにおしっこをしたと言う話が書いてあります。昔の手術室は大丈夫だったのかも知れませんが、今の手術室ではすぐバレます。なので「すみません！トイレ行かせて下さい！」とお願いするしかないです。今のところ私も同僚にもそう言う経験はないですが、、、体調が悪くて下痢で手を下ろした（手術から離れて消毒された状態から離れる＝不潔になる）人はいますが(^.^)。
さて、BMJのクリスマス特集に面白いのが多かったので、また紹介します。クリスマス特集なので今日の公開としました。「Urine output on an intensive care unit: case-control study（集中治療室における尿量の研究：症例対照研究）」です。型の如く日本語にしてみます。
目的：集中治療室（intensive care unit；以下ICU）に勤務する研修医（Junior doctor）と彼らの受け持ち患者の尿量を比較する。
研究方法：症例対照研究
研究施設：3次病院の一般ICU
研究対象：2009年3月23日から4月23日まで、ICUで平日勤務の受け持ち患者のいる18人の研修医を「症例」とした。対照（control）は彼らが主治医の患者である。両群の除外基準は、妊娠、予想GFRが15mL/min/1.73m2未満、腎代替療法である。
一次アウトカム：乏尿（6時間以上測定した平均尿量が0.5mL/kg/時未満）と尿量（mL/kg/時）
結果：研修医は尿量が測定された87の勤務中19（22％）で乏尿と診断され、急性腎障害の危険があった。さらに1勤務（1％）で明らかな腎障害となる程の乏尿を認めた。同じ時期に対照として209名の患者のうち208人からデータが得られた。対照のうち13名は腎移植を受けていたので除外された。研修医は受け持ち患者よりも乏尿傾向にあった（オッズ比1.99、95％信頼区間1.08から3.68、P=0.03）。医師の死亡率は驚くほど低く、0％（0から18％）であった。
結論：自分自身の尿量を管理する事は、自分の受け持ち患者のそれよりも難しい。我々はもっと多くの水を飲むべきである。ICUで働く研修医の評価のためには、急性腎障害の基準の変更が必要かも知れない。
以前紹介しましたが、これは前向き研究なので、相対危険率を出しても良いと思うのですが（不勉強なのでよく分かりません）、何故かオッズ比を出しています。また安全のためにこの研究は途中で中止になったようです(^.^)。
と言う訳で、病院で働く皆さんは、良く水分をとるようにしましょう！
用語解説です。
研修医 この文献ではjunior doctorとしており、foundation year 1 doctorsからspecialist registrarsと定義されています。初期、後期研修医と言う事でしょうか。若い医師としたいですが、若くなくても1年目の先生もいますので（いわゆる学卒）。
一般ICU 集中治療室にも種類があり、外科ICU、循環器ICUつまりCCU、新生児ICUつまりNICU等があります。産婦人科のICUもあると思います。私の勤める病院は中規模病院なのでICUしかありません。研究した病院は、大きな病院であると言う事です（3次病院ですから）。
GFR 糸球体濾過率と言うもので、腎臓に流れてきた血液がどのぐらい濾過されているかを示す指標です。当然少ない方がまずいです。
腎代替療法 英語ではrenal replacement therapyで透析などの事でしょう。原文には「including renal transplantation」とありますので腎移植も含まれます。
乏尿 以前の記事で紹介しましたが、人間が排出する老廃物の量と濃縮できる濃さで通常0.5mL/kg/時以下の尿量だと老廃物が溜まってくる事が知られています。もちろん量だけではないので、0.5mL/kg/時以上出ていても腎不全と言う事があります。この研究でも6時間以上測定して平均を出していますが、腎臓はそう言う臓器です。たまに尿が少なくなりますが、次の1時間は増えたりします。短時間であーだこーだ言わない方が良い場合もあります。
人間ですからもちろん行きたくなる事はあります。しかし、一般の人よりも我慢する能力が高いかも知れません。手術の前には水分摂取を控え、トイレに必ず行っておきます。私は手洗い（手術前に手を消毒することです。普通に手を洗うのとはちょっと違います）を始めるとトイレに行きたくなります。条件反射ですね。
渡辺淳一さんの小説には、手術中に分からないようにおしっこをしたと言う話が書いてあります。昔の手術室は大丈夫だったのかも知れませんが、今の手術室ではすぐバレます。なので「すみません！トイレ行かせて下さい！」とお願いするしかないです。今のところ私も同僚にもそう言う経験はないですが、、、体調が悪くて下痢で手を下ろした（手術から離れて消毒された状態から離れる＝不潔になる）人はいますが(^.^)。
さて、BMJのクリスマス特集に面白いのが多かったので、また紹介します。クリスマス特集なので今日の公開としました。「Urine output on an intensive care unit: case-control study（集中治療室における尿量の研究：症例対照研究）」です。型の如く日本語にしてみます。
目的：集中治療室（intensive care unit；以下ICU）に勤務する研修医（Junior doctor）と彼らの受け持ち患者の尿量を比較する。
研究方法：症例対照研究
研究施設：3次病院の一般ICU
研究対象：2009年3月23日から4月23日まで、ICUで平日勤務の受け持ち患者のいる18人の研修医を「症例」とした。対照（control）は彼らが主治医の患者である。両群の除外基準は、妊娠、予想GFRが15mL/min/1.73m2未満、腎代替療法である。
一次アウトカム：乏尿（6時間以上測定した平均尿量が0.5mL/kg/時未満）と尿量（mL/kg/時）
結果：研修医は尿量が測定された87の勤務中19（22％）で乏尿と診断され、急性腎障害の危険があった。さらに1勤務（1％）で明らかな腎障害となる程の乏尿を認めた。同じ時期に対照として209名の患者のうち208人からデータが得られた。対照のうち13名は腎移植を受けていたので除外された。研修医は受け持ち患者よりも乏尿傾向にあった（オッズ比1.99、95％信頼区間1.08から3.68、P=0.03）。医師の死亡率は驚くほど低く、0％（0から18％）であった。
結論：自分自身の尿量を管理する事は、自分の受け持ち患者のそれよりも難しい。我々はもっと多くの水を飲むべきである。ICUで働く研修医の評価のためには、急性腎障害の基準の変更が必要かも知れない。
以前紹介しましたが、これは前向き研究なので、相対危険率を出しても良いと思うのですが（不勉強なのでよく分かりません）、何故かオッズ比を出しています。また安全のためにこの研究は途中で中止になったようです(^.^)。
と言う訳で、病院で働く皆さんは、良く水分をとるようにしましょう！
用語解説です。
研修医 この文献ではjunior doctorとしており、foundation year 1 doctorsからspecialist registrarsと定義されています。初期、後期研修医と言う事でしょうか。若い医師としたいですが、若くなくても1年目の先生もいますので（いわゆる学卒）。
一般ICU 集中治療室にも種類があり、外科ICU、循環器ICUつまりCCU、新生児ICUつまりNICU等があります。産婦人科のICUもあると思います。私の勤める病院は中規模病院なのでICUしかありません。研究した病院は、大きな病院であると言う事です（3次病院ですから）。
GFR 糸球体濾過率と言うもので、腎臓に流れてきた血液がどのぐらい濾過されているかを示す指標です。当然少ない方がまずいです。
腎代替療法 英語ではrenal replacement therapyで透析などの事でしょう。原文には「including renal transplantation」とありますので腎移植も含まれます。
乏尿 以前の記事で紹介しましたが、人間が排出する老廃物の量と濃縮できる濃さで通常0.5mL/kg/時以下の尿量だと老廃物が溜まってくる事が知られています。もちろん量だけではないので、0.5mL/kg/時以上出ていても腎不全と言う事があります。この研究でも6時間以上測定して平均を出していますが、腎臓はそう言う臓器です。たまに尿が少なくなりますが、次の1時間は増えたりします。短時間であーだこーだ言わない方が良い場合もあります。
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