クモ膜下出血を見逃さないために [研修医教育]
くも膜下出血と言う病気があります。英語ではsubarachnoid hemorrhageと言います。SAHと略すので、日本人はザーと言うのですが(ドイツ語??)これは日本でしか通じないらしいです(が、UpToDateで「SAH」と入れたら、ちゃんとヒットしました)。
「arachonoid」は「くも膜」のことで、脳の表面を覆っています。その膜と脳の間のくも膜下腔に出血する病気で、多くは脳の動脈瘤(脳の動脈にこぶが出来た)の破裂が原因です。
突然頭痛が発生し、人生最大の頭痛などと言われますが、痛みが軽い人や、痛みを感じない(意識を失ってしまい、痛かった記憶がなくなるとも言われています)人もいます。最初の出血は少量でも、二回目の出血により死亡する可能性が非常に高いので、救急外来で絶対に見逃してはいけない病気の一つです。例えば、カラオケ中に頭痛がきたと言って酔って来院した患者さんに対して、気分を害してはいけません。直ちにCTを撮るか、脳外科医の診察をお願いしなければなりません。
が、初回の頭痛発作の時に風邪でしょうと言われている人がいます。原則としてくも膜下出血は麻痺などは来ませんし、他に何の症状もありません。軽い頭痛であれば、経過を診て下さいと言いたくなります。
私が学生の時には、「大学病院に来るザーの患者さんはほとんど最初の医者に風邪と言われている」と習いました。風邪は「急性ウイルス性上気道感染症」なので頭痛は絶対に来ないので、簡単に帰すな!と激しく強調されたので、ふまじめな学生だった私も良く覚えています。
よって、今も研修医の先生にはうるさく言っています。
確かに、頭痛の患者さんのほとんどは風邪(厳密な急性ウイルス性上気道感染症と言う意味ではなく、よく分からないが、そのうち治るでしょうと言う状態)でしょう。しかし、くも膜下出血は会計を待っている時、家に帰ってから、翌朝起きてこない、、、、、で亡くなったりする可能性があるのです!
しかし、全例に頭のCTを撮るのかと言えば、それも正しい対応とは言えません。学生の時には、「突発ピーク型の頭痛」かどうかを徹底的に聞けと習いました。良く「バットで殴られたような」と言うのですが、痛みが弱い人もいるので、痛くなった時が一番痛かったかどうかを聞きます。
他には、どんな事を聞いたりしたら良いかと言う研究が英国医学雑誌に発表されています。
以下のようなルールに従って、対応したそうです。外傷ではない、頭痛のピークが発生から1時間以内の頭痛の患者さんに対しての検討です。
ルール1:年齢が40歳以上、項部痛または項部硬直がある、意識消失が誰かに見られている、労作中に起こった
ルール2:救急車で搬送された、年齢が45歳以上、1回以上嘔吐した、拡張期血圧が100mmHg以上
ルール3:救急車で搬送された、収縮期血圧が160mmHg以上、項部痛または項部硬直がある、年齢が45~55歳
すべて、1つでもあてはまれば高リスクとして検査が必要で、すべてあてはまらなければ低リスクと判断します。
このルールは、3つとも感度が100%(95%信頼区間は97.1-100.0)で、特異度は、ルール1が28.4%(26.4-30.4)、ルール2が36.5%(34.4-38.8)、ルール3は38.8%(36.7-41.1)だったそうです。感度は100%と言う事は、この検査が陰性、つまり上記のすべてにあてはまらない場合には、くも膜出血だった人はいなかったと言う事です。特異度が30%程度なので、このルールでひっかかっても、何ともなかったと言う人の方が多い事になりますが、くも膜下出血は重大な病気なので、多少の過剰検査は許容されるでしょう。特に日本では。
原文はこちらです(英語ですが全文が読めます)。
ただし、30歳代でも、特殊な病気があればもっと若くてもくも膜下出血を起こしますので注意が必要です。
頭痛の患者さんが来られたら、これらの事に気を付けて診察しましょう。
「arachonoid」は「くも膜」のことで、脳の表面を覆っています。その膜と脳の間のくも膜下腔に出血する病気で、多くは脳の動脈瘤(脳の動脈にこぶが出来た)の破裂が原因です。
突然頭痛が発生し、人生最大の頭痛などと言われますが、痛みが軽い人や、痛みを感じない(意識を失ってしまい、痛かった記憶がなくなるとも言われています)人もいます。最初の出血は少量でも、二回目の出血により死亡する可能性が非常に高いので、救急外来で絶対に見逃してはいけない病気の一つです。例えば、カラオケ中に頭痛がきたと言って酔って来院した患者さんに対して、気分を害してはいけません。直ちにCTを撮るか、脳外科医の診察をお願いしなければなりません。
が、初回の頭痛発作の時に風邪でしょうと言われている人がいます。原則としてくも膜下出血は麻痺などは来ませんし、他に何の症状もありません。軽い頭痛であれば、経過を診て下さいと言いたくなります。
私が学生の時には、「大学病院に来るザーの患者さんはほとんど最初の医者に風邪と言われている」と習いました。風邪は「急性ウイルス性上気道感染症」なので頭痛は絶対に来ないので、簡単に帰すな!と激しく強調されたので、ふまじめな学生だった私も良く覚えています。
よって、今も研修医の先生にはうるさく言っています。
確かに、頭痛の患者さんのほとんどは風邪(厳密な急性ウイルス性上気道感染症と言う意味ではなく、よく分からないが、そのうち治るでしょうと言う状態)でしょう。しかし、くも膜下出血は会計を待っている時、家に帰ってから、翌朝起きてこない、、、、、で亡くなったりする可能性があるのです!
しかし、全例に頭のCTを撮るのかと言えば、それも正しい対応とは言えません。学生の時には、「突発ピーク型の頭痛」かどうかを徹底的に聞けと習いました。良く「バットで殴られたような」と言うのですが、痛みが弱い人もいるので、痛くなった時が一番痛かったかどうかを聞きます。
他には、どんな事を聞いたりしたら良いかと言う研究が英国医学雑誌に発表されています。
以下のようなルールに従って、対応したそうです。外傷ではない、頭痛のピークが発生から1時間以内の頭痛の患者さんに対しての検討です。
ルール1:年齢が40歳以上、項部痛または項部硬直がある、意識消失が誰かに見られている、労作中に起こった
ルール2:救急車で搬送された、年齢が45歳以上、1回以上嘔吐した、拡張期血圧が100mmHg以上
ルール3:救急車で搬送された、収縮期血圧が160mmHg以上、項部痛または項部硬直がある、年齢が45~55歳
すべて、1つでもあてはまれば高リスクとして検査が必要で、すべてあてはまらなければ低リスクと判断します。
このルールは、3つとも感度が100%(95%信頼区間は97.1-100.0)で、特異度は、ルール1が28.4%(26.4-30.4)、ルール2が36.5%(34.4-38.8)、ルール3は38.8%(36.7-41.1)だったそうです。感度は100%と言う事は、この検査が陰性、つまり上記のすべてにあてはまらない場合には、くも膜出血だった人はいなかったと言う事です。特異度が30%程度なので、このルールでひっかかっても、何ともなかったと言う人の方が多い事になりますが、くも膜下出血は重大な病気なので、多少の過剰検査は許容されるでしょう。特に日本では。
原文はこちらです(英語ですが全文が読めます)。
ただし、30歳代でも、特殊な病気があればもっと若くてもくも膜下出血を起こしますので注意が必要です。
頭痛の患者さんが来られたら、これらの事に気を付けて診察しましょう。
いつも拝読していますが、今回も勉強になりました。
私の病院にも先日、一週間前からの頭痛を訴えて来院した75歳女性の頭部CTを撮ったらSAHがありました、という症例が開業医さんから紹介されてきました。
by しお (2010-12-09 06:17)
しおさん、コメントありがとうございます。
1週間前からでくも膜下出血ですか、、、難しいですね。
今までは手術の腕を上げるとかそう言う事が最も重要と思って来たのですが、そこへもって行く診断が一番大事と思います。
by Kim (2010-12-09 08:28)
はじめまして。いつも、こっそり楽しみに拝読しています。
私は療養型病院のひよっこMSWです。
毎日「救命後」の患者さんの人生をみつめています。
SAH後遺症の患者さんも多く、色々なことを考えさせられます。
ひとりでも多くの患者さんに人間らしく生きてほしいなと
願うばかりです(^-^)b
by dokinchan (2010-12-10 00:25)
dokinchanさん、コメントありがとうございます。
MSWをされているんですね。お年寄りが増えると特に忙しくなりますよね。患者さんの社会的背景などをバックアップする重要なお仕事ですので頑張って下さい!
救急部で働く医師は、後遺症が残らないように迅速な診断を心がけるのみです。
by Kim (2010-12-10 08:54)
このような論文もあるのですね。いつも勉強させてもらってありがとうございます~
by konkon (2010-12-11 11:20)
konkonさん、コメントありがとうございます。
私も自分で見つけたのではなく、日経メディカルの記事からです。
そのまま紹介できないので、、、
by Kim (2010-12-11 20:16)