SSブログ

5:2(野球じゃありません)を守りましょう [医学関連]

 肝硬変の患者さんは、腹水が溜まってくる事が多いです。色々な治療があるのですが、なかなか難しいです。その一つにラシックスとアルダクトンと言う利尿剤の使用があります。ラシックスは商品名であり、一般名はフロセミド、アルダクトンの一般名はスピロノラクトンです。前者はループ利尿剤、後者はカリウム保持性利尿剤の仲間です。

 さて、ICU pearlsからです。2010年11月21日の記事です。日本語にしてみました。

質問:54歳の肝硬変の女性の病状が安定し、集中治療室から病棟へ移動する準備が整った。腹水の治療として、カリウム値を正常に保つために推奨されるスピロノラクトンとフロセミドの比はどのぐらいか?

答え:100:40
 肝硬変による腹水に対する利尿剤としてまず使用されるのは、スピロノラクトンとフロセミドである。どちらの薬剤も必要に応じて投与量を調節する。電解質を正常値に保つためには、スピロノラクトンとフロセミドの比を100:40とする事が一般的に推奨されている。両者の最大使用量は順に1日400mgと160mgである。


 知りませんでした、、、、参考文献としてMedScapeが挙げられています。会員制なのですが無料です。私はたまたま会員でしたので読んでみました。型の如く下手な日本語にしてみます。著作権に反すると思いますのでかなりはしょっています(本当は全部訳すのが面倒だったのです(^.^))。と思ったら全部訳してしまいました。


肝硬変による腹水の治療

肝硬変の治療可能な原因を治療する
 米国では、肝硬変による死亡のうち、約40%がアルコール性肝障害によるものであった(1997年)。アルコールを控える事により、腹水が減少し、内服治療に反応したと言う報告がある。患者には完全な禁酒、アルコールを含んだ薬剤、いわゆるノンアルコールビールも避けるよう指導すべきである。

ベッド上安静
 仰臥位はアルドステロン(ナトリウムの貯留に関連している)値を上昇させるため、腹水のある患者に伝統的に推奨されてきた(訳者注:上昇ではなく、下降ではないかと、、、)。ベッド上安静は、肝硬変患者においてナトリウム利尿を増やす事が示されているが、腹水がある事に関連した臨床的なアウトカムの改善を示したデータはない。よって、長期間のベッド上安静は、実際的ではなく、費用もかかり(訳者注:入院させるから医療費がかかる?)、実行しにくい。

ナトリウム制限
 ナトリウムの貯留が腹水貯留の主な原因である。典型的な北アメリカの食事は1日200−300mmolのナトリウムを含んでいる。塩分を含まない食事でも1日100−150mmol含んでいる。下痢のない正常体温の肝硬変患者では、ナトリウムが尿以外で1日約10mmol排出される。利尿剤を投与されていない腹水患者は、通常尿中ナトリウム排泄量が1日20mmol未満である。食塩を制限された食事をしている患者でも、1日最低100mmolのナトリウムが体内に貯留し、これは2週間で10Lもの体液増加に値する(100mmol×14÷140mmol/L=10L)。
 訳者注 ナトリウムは1価のイオンなので、mmol=mEqです。ナトリウム1molは23gなので、1÷23=0.0435。Na1g=43.5mmolです。別記事にしようかと思いますが、Naは単独で存在しませんので、NaCLとして考えないといけません。

 腹水のある患者全てに対して、ナトリウム制限が重要である事を指導すべきである。腹水のある患者には1日88mmolのナトリウムを含む食事が現在推奨されている。それ以上のナトリウム制限食は、患者が耐えられない。カリウムを含む塩分物質は、高カリウム血症の危険があるため(特にカリウム保持性利尿薬を服用している場合)避けるべきである。10%の患者では、塩分制限のみで腹水の管理が可能である。尿中ナトリウム排泄量が1日78mmolを超える患者でのみ、塩分制限のみで治療すべきである。ナトリウム利尿がかなり障害されていて、腹水のコントロールが困難な患者では、ナトリウムを1日44mmol、最大22mmolまで制限しなければならないかも知れない。

 多くの専門家は、腹水の治療にはナトリウム制限が必須であると考えている。利尿剤を投与された患者でナトリウム制限を行うか否かで比較した研究では明らかな差を認めていないが、腹水の完全消失までの時間が短い事が示されている。ナトリウム制限食を守っている患者では、利尿剤の投与量が著明に減らせたと言う報告も一つある。

水分制限
 水分の喪失は通常ナトリウムの喪失に伴う。腹水のある患者に水分制限を行う事は、通常必要ない。腹水のある肝硬変患者はしばしば低ナトリウム血症を伴っている。これは血管内容量が低下している事を示している(訳者注:ナトリウム濃度は正確には血管内血液量とは関係ありません)。多くの症例で膠質液の輸液に反応して亭ナトリウムが改善するので、水分制限は血清ナトリウム値が120mmol/L以下の患者にのみ行うべきである。

利尿剤
 肝硬変の患者では高アルドステロン血症があるために、遠位尿細管のアルドステロン受容体を阻害する利尿剤が推奨される。ループ利尿剤は単独では効果がないため、他剤と併用される。スピロノラクトンの開始量は1日100mgで、最高1日400mgまで増量できる。スピロノラクトンは食事と一緒に服用すると良く吸収される。利尿効果は48時間以内に現れるが、肝硬変患者では代謝が障害されており、半減期が5日以上なので、最大の効果は2週間後である(訳者注:薬の濃度は半減期の約5倍、臨床的には3倍たつとだいたい一定になります)。よって投与量の変更は週1回のみにすべきである。副作用は、高カリウム血症と有痛性の女性化乳房である。

 アミロライドはスピロノラクトンの代わりに使用でき、開始量は1日5mgである。半減期が短く、効果発現がより早いのでアミロライドが症例によっては推奨される。しかし、スピロノラクトンよりもかなり高価であり、ランダム化試験において効果が劣る事が示されている。

 スピロノラクトンとアミロライドは利尿効果が弱く、しばしばフロセミドなどのループ利尿剤の併用が必要である。フロセミドの効果は経口投与後30分以内に現れ、最大効果は1−2時間以内である、4時間持続する。ループ利尿剤は強力であり、スピロノラクトン単独よりも有効である。フロセミドはヘンレのわなにおいて、スピロノラクトンの作用を借りずにナトリウムの再吸収を阻害する。しかし、ナトリウムは遠位尿細管に運ばれ、アルドステロンの作用により急速に再吸収される。フロセミドの副作用は、低カリウム血症、循環血液量減少、低ナトリウム血症、腎でのアンモニア生産増加である。低カリウム血症は、カリウム保持性利尿薬と一緒に投与されれば通常は問題とならない。経口で十分吸収され、GFRの急激な低下を引き起こす可能性があるため、フロセミド静注は推奨されない。他のループ利尿剤を使用を推奨するエビデンスはない。利尿剤の通常開始量は、スピロノラクトン100mg/日とフロセミド40mg/日である。スピロノラクトンは最大400mg/日、フロセミドは160mg/日まで増量できる。この100:40の比率を守れば、通常カリウムは正常に保たれる。

ナトリウム制限と利尿に対する反応のモニター
 ナトリウム制限と利尿剤投与を守っているかどうかと、治療に対する効果は毎日の体重と1日尿中Na排泄量を測定するによって評価できる。尿中クレアチニン量が男性ならば15−20mg/kg、女性ならば10−15mg/kgあれば、24時間分の尿を採取されていると判断して良い。体重減少は1日0.5kg以下にすべきである。腹膜腔からの再吸収量は1日700ml以下なので、それ以上の体重減少は循環血液量減少と腎機能障害を引き起こす可能性がある。著明な浮腫の患者は、浮腫が改善するまでは大量の体液量の減少に耐えうる。

 1日体重を0.5kgまたは体液を0.5L減らすために88mmol/日の食事をし、血清ナトリウムを140mmol/Lに保つためには、24時間尿に約150mmolのナトリウムを含む必要がある(140mmol/L×0.5L+78mmol/日)。24時間尿を採取する事が出来ないのであれば、随時尿のナトリウム/カリウム比が1以上であれば、90%以上の患者で78mmol/日以上あると予想できる。ナトリウム制限を守れていない場合には、ナトリウム排泄は適切であっても体重減少が起こらない。一方尿中ナトリウム排泄量が少ない場合には、最大量を越えない範囲で利尿剤を増量する必要がある。脳症が疑われたり、水分制限にも関わらず血清ナトリウムが120mmol/L未満だったり、クレアチニン値が2.0mg/dL(180mcmol/日)を超える場合には、利尿剤を中止し、別の治療を考えるべきである。

 治療に反応しない大量腹水に対して、大量の腹水の除去を行う場合には、尿の再吸収を予防するために利尿剤を投与すべきである。腹水を完全に抜いてアルブミンを投与した36人の患者の研究では、腹水の再発がプラセボ93%に対し、スピロノラクトン225mg/日投与だと18%のみであったと報告されている。1日225mgのスピロノラクトンのの投与は殆どの症例で腹水穿刺後の循環障害の頻度を増す事がなく、有効かつ安全であるとされている。患者のナトリウム制限は継続されるべきである。

 関連記事をあと2つ続けてアップします。次は明日です!

 最後まで読んで頂きありがとうございました。お疲れ様でした!!

nice!(3)  コメント(0) 

nice! 3

コメント 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。