紫色採尿バッグ症候群こぼれ話

　あまり興味ないかも知れませんが、この論文（と言ってもどれかは皆さんには内緒です）が出来るまでと出来た後のお話を。

　私がこのPUBS（purple urine bag syndrome）を初めて診たのは北海道ででした。競馬馬がたくさんいる地方で研修していた頃です。ちょうど地下鉄サリン事件があった頃です。小さな病院ですから毎日医師全員で回診をしていました。ある先生の患者さんが、このPUBSになっていて、「これはpurple urine bag syndromeと言うんだよ」と脳神経外科の先生が教えてくれました。私はまだ3年目が終わるぐらいのフレッシュマンでした（見かけは院長と言われていましたが(+_+)）。3000へえ〜ぐらいでした（当時はまだトリビアの泉やっていませんでしたね）。

　都会の病院でも時々見かけていて、すごい！また見つけた！と思って指導医の先生達に報告したのですが、指導医の先生達はあまり興味がなかったようで、、、、、美人検査技師さんに話してみました。すると興味を（もちろん私にではありません(+_+)）持ってくれて、これについて研究する事になりました。文献を調べて、患者さんを集めましたが二人しか集まりませんでした。たぶんしょっちゅう発生しているのでしょうが、特に気にしないからでしょう。何でこんな色になるんだろう？？と思う人が少ないんでしょうね。

　私が調べた時には日本では症例報告が20例程度しかありませんでした。やはり医者も興味がないのでしょうね。

　最も適切であろうと思われた腎臓学会は学会員じゃないと発表できないようだったので、図書室にあった泌尿器科の雑誌に投稿してみました。すると添削された論文が返ってきました。添削されると言う事は載せてくれると言う事です（ダメなものはそのまま返ってきます）。自分が言いたい事が結構削除されていてちょっと気に入らなかったのですが（結局雑誌に載った時には空白が結構あって(-.-)）何度か訂正して再提出しました。

　無事論文が載った時は嬉しいものです。色んな人に配って歩きました（よって自分の手元には1冊しか残っていません）。そしてそのまま忘れてしまいました。

　数ヶ月後に、泌尿器科の先生から、「おい！Kimの論文が好評を得ているようだぞ」と言われました。何と大学の偉い先生が私の論文が良かったと書いてくれていたのです！！

　私の論文を読む（と言うか、それが載った雑誌が出る少し前）前に、ちょうど病棟でPUBSの患者さんがいて、なぜ紫色になるかについて看護師さんに説明を求められたんだそうです。詳しい事は分からないけど、、、、と言って、すぐ資料を渡す事が出来ないでいたら、私の論文が載っていてタイムリーでしたと言うことでした。

　びっくりしてお手紙を書かせて頂きました。丁寧にお返事を頂いたのを覚えています。

　でも私は泌尿器科医ではないので、この論文は私の業績としてはあまり意味のないものでした。世の中の役にもあまり立っていないでしょう(+_+)。

　ちなみに私は当時その泌尿器科の先生から本当にキムと呼ばれていました。韓国人みたいに見えたんでしょうかね。

コメント 4

kim先生、こんばんは。
そちらのお天気は、落ち着かれましたでしょうか？

この話題、興味深いものがあります。

私は、
「×××という菌が排泄されているから、紫色になる。よって、バッグ交換をしても、治療をなされていないのであれば、菌が居続ける為、意味が無い」
と、昔教わり・・・・。
信じ込んでいたので、数年前に間違った知識だと知って、焦りを感じた事がありました。

今回の記事。改めて、日常に起きている事に目を向けられた事実があります。
有り難うございました。


by れもん (2010-06-22 19:45) 

れもんさん、コメントありがとうございます。

尿路感染を治療すべきかどうかついては議論があります。私もその論文に書きました。

バルーンを入れないで済むようにと言うのがベストですがね。

by Kim (2010-06-22 20:01) 

私の母親が手術をして退院した今もバルーンをつけたままで生活してます。この病気は、危ないのですか？
母親の尿も紫色なので心配です。
私のブログにお返事お願いしますm(_ _)m
by 望 (2013-10-01 21:22) 

望さん、コメントありがとうございます。

危なくはないですよ。熱などがなければ心配ありません。菌がいるということですね。

by Kim (2013-10-01 23:27)