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魚のヒスタミン中毒(scombroid poisoning) [救急専門医試験]

 私は救急科専門医の筆記試験問題の解説を細々とやっています。今一番力を入れているのは、予想問題です。これは私が勝手に作った問題であり、本当に出る可能性は低いかも知れませんが、、、、試験委員の先生が盗んで本試験に出してくれるとうれしいなと思っています。

 今回2問予想問題を作りました。ひとつは昨日の移植医療に関して、もう一つは、scombroid poisoningについてです。

 Scombroid poisoningとは、魚のヒスタミン中毒とでも言うもので、サバにアレルギーが無いのに、ヒスタミンが大量に含まれたサバなどを食べることにより、アレルギーと似た症状を起こす病気です。

 早速問題を、、、、

問題32 Scombroid poisoningについて正しいものを2つ選べ。
(a)通常の魚アレルギーと鑑別は容易である。
(b)食物の保存温度が20度以上だと発症しやすい。
(c)ヒスタミンは熱で容易に分解されるので刺身で食べなければ発症しない。
(d)予後は良好である。
(e)再発しやすい。

<解説>
 実は私も最近まで知りませんでした。色々な病気があるものです!!
(a)× 「Scombroidはサバ科のことで、サバ、マグロ、カツオ、サンマなどのことを言うが、Scombroid以外の魚(イワシ、マイワシ、シイラ(mahimahi)、カタクチイワシ、ニシン、カジキ、オオキスズキ、シャケ、ハマチ)や鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ドライミルクでもヒスタミン中毒は起こりうる(Dr.林の当直裏御法度、林寛之著、P.103、三輪書店)」そうです。UpToDate Ver17.3の「Marine toxin(海の毒)」と言う文献には、「scombroid toxicityの症状と徴候は、汚染された魚を食べてから通常1時間以内に始まる。 症状はIgEを介するアレルギー反応と似ている」とあります。
(b)◯ モルガン菌がヒスチジンをヒスタミンに変えるのが原因(Dr.林の当直裏御法度、P.103)です。CDCの文献によれば「最も効果的な予防法は、捕獲されてから消費されるまでの期間ずっと4.4度以下の温度で冷蔵することである」とあります。
(c)× 熱に強いので加熱した料理でも発症します。前述のUpToDateによれば、「毒素は調理、冷凍、さらなる冷却?(subsequent refrigeration)によって破壊されない。毒素に汚染された魚は、匂いや見た目にも新鮮に見えるかもしれないが、しばしば胡椒っぽく?(peppery)塩辛く、泡っぽい?(bubbly)と感じられる。」
(d)◯ これで死亡した人はいないらしいです。
(e)△ まさか、、、、、

 こんな病気もあると言うことは救急医として知っておかなければなりませんね。


Dr.林の当直裏御法度―ER問題解決の極上Tips70

Dr.林の当直裏御法度―ER問題解決の極上Tips70

  • 作者: 林 寛之
  • 出版社/メーカー: 三輪書店
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 単行本



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shiraisi

小学生の頃、給食に鱈の天ぷらが出ました。
体調が悪い時に鱈の天ぷらを食べるとあちこち痒くなりました。
最近知ったのですが、鱈は鯖よりも傷むのが早いらしいです。
by shiraisi (2010-03-19 23:53) 

Kim

shiraisiさん、コメント&nice!ありがとうございます。

そうなんですね。魚は痛むと良くないですから、、、、

たいしたことなくて良かったです。shiraisiさんの小学校の時の出来事が、アレルギーだったのか、今回のヒスタミン中毒だったのか、、、、分かれば診療に役立つかもしれませんが、鱈を食べなければ良いだけの話かもしれません(^.^)。

by Kim (2010-03-20 06:41) 

MOMO

先日、主人の母から聞いた驚きの話です。

主人の母方の母は(つまり主人のおばあちゃん)、
主人の母親(82歳)が、まだ9歳のときに、
「さんま中毒」で亡くなり、
当時、新聞の記事になったそうです。 

主人のおじいさんも食べたそうで
全身にじんましんが出て
大変な思いをしたとか。

子供もたくさんでしたし、
体力が落ちて、抵抗力も無かったのでしょうか・・・

昔の話ですから、保存状態も悪かったのかもしれません。
(焼き魚だったらしいです。)


本当に怖いです。

by MOMO (2010-09-05 10:44) 

Kim

MOMOさん、コメントありがとうございます。

サンマ中毒ですか!きっとこの病気でしょうね。今はきっと漁業関係の方達が気を付けて下さっているのでしょうね。色々な人達の努力で我々は生きているんですね。

by Kim (2010-09-05 13:29) 

Kim

最近起こっています。

http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/20110526ddlk43040617000c.html

by Kim (2011-05-27 09:12) 

aoi

オーストラリアの母娘がバリ島で魚を食べた後に死亡した原因がこの中毒だったらしいというニュースを見て、こちらにたどり着きました。

(ニュースによると、母娘は、軽い喘息持ちだったことも要因になっていると言われていますが、ヒスタミン中毒で死亡に至るのは非常にマレなんだそうですね。)




by aoi (2014-02-05 09:55) 

Kim

aoiさん、コメントありがとうございます。

死亡例が出てしまったんですね。残念ですが、確かに大量に食べなければ通常大丈夫でしょうね。喘息があれば重症な発作を起こしてしまったんでしょうか、、、、、

by Kim (2014-02-05 12:00) 

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