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閉塞性ショックの原因 [医学関連]

 ショックと言う病態があります。簡単に言えば、血圧が下がって(下がらない場合もあるのですが)意識も悪くなり、、、、と言う状態です。重症と言うことですね。

 最近CMでもやっていますが、血圧は3つの要素でコントロールされています。

・血管の容量 血管が太くなったり細くなったりします。神経がコントロールしています。血管が太く(拡張)なれば当然血圧は下がります。
・血管内にある液体の量 少なくなれば血圧は下がります。その時には血管が細くなり血圧を保ちます。
・ポンプの力 心臓が弱くなると当然流れる液体の量が減りますので血圧が下がります。

 よって、ショックになる原因は上記から考えられます。大きく分けて4つあります。

(1)循環血液量減少 出血や脱水です。血管内に流れる液体の量が減ると言う事です。
(2)心原性 不整脈や心筋梗塞などで心臓が血液を送れなくなります。
(3)血液分布異常性 必要ないのに(血液量などが正常なのに)血管が拡張したりしてしまいます。敗血症、アナフィラキシー、神経原性ショックなどがあります。

(4)閉塞性 心臓に血液が帰ってこなくなるためにショックになると言う病態があります。

 筋肉には、引き伸ばされただけ縮もうとする性質があります。つまり強い力がかかると強く縮もうとします。心臓の筋肉も同じで、心臓がふくらんだだけ縮みます(これをフランク・スターリングの法則と呼びます)。心臓に帰ってきた血液量によって送り出す血液の量が決まっているのです。よって、心臓に帰ってくる血液が減ると、心臓が元気でもショックになってしまいます。循環血液量減少もそのためにショックになります。

 閉塞性ショックとは、心臓は元気、循環血液量も十分あるのに心臓に血液が帰ってこないのでショックとなるものです。

 閉塞性ショックの原因として、肺塞栓、心タンポナーデ、緊張性気胸などがあります。

 肺塞栓では肺動脈に血の塊が詰まります。血液は右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→全身となっていますので、途中が詰まれば心臓(主に左心室)に血液が行かなくなります。
 緊張性気胸は肺の周囲に空気が漏れて圧が高まった状態です。心臓は肺の周囲?にありますので、心臓の圧も高まります。よって血液が戻って来にくくなります。
 心タンポナーデは心臓の周りに血液などがたまって心臓が膨らめなくなる病気です。こちらは帰ってくる血液はあるのですが、心臓が膨らまないので帰って来れなくなります。

 そして、心タンポナーデの特殊型??として、緊張性心嚢気腫と言うのがあります。心臓の周りに空気がたまって心タンポナーデとなると言うものです。初めて聞きました。学会雑誌に載っていました。ネットでは見れないようですので、近くに持っている人がいたら見せてもらって下さい。

 萩原周一、荻野隆史、森村征史ら:鈍的外傷性緊張性心嚢気腫の1例. 日本外傷学会雑誌 2010 ; 1 : 42-45.
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yangt3

昔、重症の気管支ぜん息重責発作でCPAとなって
蘇生に苦労した一例がありました.
こんな場合には、PCPSがなければ蘇生できないです.
by yangt3 (2010-02-25 16:46) 

Kim

yangt3さん、コメントありがとうございます。

ぜんそくの重責ということは、これも閉塞性ショックの一つなんでしょうか??PCPS大変ですよね。

緊急カテお疲れ様でした。

by Kim (2010-02-25 16:54) 

さうざんバー

分かりやすい解説、ありがとうございました(^^)
これで、また1つ賢くなったような気がします(^^)
でも、ショックは怖いですね。
気をつけてもなるので、私は、いつもお祈りするしかありません(^^;)
by さうざんバー (2010-02-25 18:47) 

Kim

さうざんバーさん、コメント&nice!ありがとうございます。

最後の緊張性心嚢気腫を紹介したいだけだったんですが(^.^)。

by Kim (2010-02-25 21:21) 

hoshi

10年以上前ですが、外傷性心嚢気腫を経験したことがあります。私のケースはtensionの状態ではなかったのでよかったのですが・・・。なぜ空気があのスペースに入るのかは諸説がありそうです。当時投稿しようと思ったのですが挫折しました(汗)

>yangt3さん

喘息CPAはいけませんね・・・院外はまず助からないように思います・・・。何せ通常のルートではO2が身体に入っていきませんからね
by hoshi (2010-02-25 21:52) 

shiraisi

フランク・スターリングなんて、カッコイイ名前ですね!(注目はそこ?)
by shiraisi (2010-02-25 21:53) 

Kim

hoshiさん、コメントありがとうございます。

心嚢気腫のご経験があるのですね。10年経っていても報告する意義はあるのではないでしょうか?

by Kim (2010-02-25 22:08) 

Kim

shiraisiさん、コメントありがとうございます。

何でも食いついて頂ければ嬉しいです(^.^)。

確かに芸能人みたいな名前ですね!

by Kim (2010-02-25 22:10) 

hoshi

Kimさん

ありがとうございます^^
でも今の私にはそういう能力はないようです(爆)

心嚢気腫が困るのは、血液(などの液体)の貯留と違ってエコーで見えないんですよね・・・。見えない・・・自分の技術がヘタレなのか、はたまた患者さん自身の解剖学的な要因か・・・などなど色々考えられますものね。厄介です。
by hoshi (2010-02-26 10:50) 

Kim

hoshiさん、コメントありがとうございます。

確かにエコーで見えませんね。そういう病気があると分かっていれば、すぐCT撮れますね。色々勉強しなければいけませんね!

by Kim (2010-02-26 11:35) 

ユウキ

すみません、質問なのですが、
アナフィラキシーショックは血管透過性が亢進してのショックなので、循環血液量減少性ショックかと思ったのですが、なぜ血液分布異常性ショックなのでしょうか。
あとアナフィラキシーショックがウォームショックという記述をみたのですが、敗血性ショックや神経原性ショックと同じく血管が開くのでしょうか。
by ユウキ (2014-01-26 23:36) 

Kim

ユウキさん、コメントありがとうございます。

別記事に書きたいと思います。

簡単に書きますが、アナフィラキシーは血管が拡張しますよ。肥満細胞から色々な物質がでることが原因です。色々な物質が血管を拡張したり、血管透過性を亢進させたり、気道の収縮をきたしたりします。

おっしゃる通り、ある意味循環血液量減少性ショックでもあります。血液成分が漏れ出ることと、血管が拡張するために相対的に脱水となるからです。

以下の記事を書きました。

http://kekimura.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27

by Kim (2014-01-27 08:05) 

6年生

ショックが、わからず探していてたところで見付けました!とてもわかりやすく参考になりました。ありがとうございました!!
by 6年生 (2015-04-26 22:16) 

Kim

6年生さん、見ていただきありがとうございます。

分かりやすくをモットーにしています。最近は更新が滞っていますが、よろしくお願いします。

by Kim (2015-04-26 22:30) 

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