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PPIと肺炎の関係 [研修医教育]

 胃酸は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の原因となり、悪者みたいな感じがありますが、そうではありません。胃酸が出る事によって胃の中で細菌が増えるのを防いでいます。昔O157で亡くなった人たちの多くは胃酸分泌抑制薬を投与されていたと言う噂を聞いた事があります。

 胃酸分泌抑制薬を使うと肺炎になりやすいと言う事が言われています。入院して手術をしたり、色々で重症になるとストレス胃潰瘍の予防と言う事で胃酸分泌抑制薬を投与される事が多いです。この事については以前記事を書きましたのでお時間があったらご覧下さい。

 胃酸分泌抑制薬を投与すると胃酸が減るので胃の中で細菌が増え、それが食道に逆流し、肺に入って肺炎を起こしやすいと言われています。よってストレス胃潰瘍の予防をする事と、肺炎を起こす事とどっちが重要かを考えて投与しなければなりません。

 今回は、本当に胃酸分泌抑制薬が肺炎を起こしやすいのかについての研究を紹介しましょう。
 Herzigらによれば(何とこの文献無料で全文が読めます!!)、入院患者さんの52%に胃酸分泌抑制薬が投与され、3.5%の人に肺炎が発生しているそうです。投与により肺炎のリスクが30%上昇し、NNH(注)にすると111だそうです。

 しかし、長期に投与している場合には、それほど高くなく、逆流性食道炎などで服用している人は気にしなくて良いようです。

 この研究も、今まで行われた研究も完全な研究ではなので、絶対に肺炎を起こしやすいとは言えませんが、研修医のみなさんは、覚えておくとよいでしょう。

注 NNHとは、Number needed to harmの略で、一人の人に有害なことが発症するために何人治療すれば良いか(表現がおかしいですが)と言う指標です。NNHが111であると言うことは、111人に胃酸分泌抑制薬を投与すると、1人にその薬のために肺炎が発生すると言う事です。もし、一人の消化管出血を抑制するために120人を治療しなければならない(NNTが120)とすれば、、、、、胃酸分泌抑制薬の投与は勧められませんね。


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yangt3

胃酸抑制にまつわる議論は以前から沢山ありますね.
どんな治療も良い面と悪い面があり
リスクとベネフィットを天秤にかけて
判断するのは、最後は担当医ということですね.
手術やカテ以外のこうした地道な治療が
本当は大切なんですね!
by yangt3 (2009-12-16 08:02) 

Kim

yangt3さん、コメント&nice!ありがとうございます。

確かに派手な治療も重要ですが、8割は地道な見えない努力ですよね。ただ抗生物質を出すと言っても、それまでには色々な判断があると言う事を研修医の先生達には学んで頂きたいですね。

by Kim (2009-12-16 08:12) 

Kim

マグネシウムも欠乏すると言う報告があるそうです。

http://content.nejm.org/cgi/content/full/355/17/1834
by Kim (2009-12-16 11:59) 

yoshi

看護師の素朴な質問です。

PPIやH2ブロッカーをTPNなどの24時間点滴に混注する医師がいます。

腸管細菌増殖抑制や、バクテリアルトランスロケーションなどには、不利ではないのでしょうか??

重症患者様の看護をする際、いつも気になっていました。
如何でしょうか??
by yoshi (2009-12-17 23:13) 

Kim

yoshiさん、コメント&質問ありがとうございます。

腸管細菌増殖抑制やバクテリアルトランスロケーションについては詳しくありませんので、調べてみます。

記憶に頼っているのでエビデンスレベルは未確定ですが(かなりの自信があります、、、と言っても私の自信の方があてになりませんが)、PPIやH2ブロッカーは持続投与した方が肺炎の頻度が少ないと言う論文を昔読みました。

これからすると腸管にも持続投与の方が良いかもしれません。またわかったらレポートさせて頂きます。

私もH2ブロッカーは持続投与しています。

by Kim (2009-12-18 08:26) 

Kim

細菌感染が増えると言う報告があるようですね。

http://www.pariet.jp/helpful/vol55/no571/sp11.html

しかし、明らかに増えると言うことはない印象です。

by Kim (2009-12-18 15:48) 

Kim

古い文献ですが、持続投与の方が胃酸分泌の抑制効果が強いと言うのがありました。PuMedで以下の数字を入れると表示されます。が、もちろん英語です(^.^)。

PMID 7712759
PMID 2306061

UpToDateと言う資料には、上記の文献が引用されており、明らかなエビデンスではないと書かれています。

by Kim (2009-12-18 16:24) 

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