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肺塞栓の予防(その2) [整形外科研修]

 肺塞栓シリーズその2です。今回は簡単な予防法についてです。肺塞栓発症のリスクが低い患者さんはこれだけでOKです。

 こちらのガイドラインにあります。

(1)早期離床および積極的な運動
 手術は通常痛いものですから,患者さんは何も言われなければベッドの上でじっとしています。しかし、じっとしていると血のかたまりができやすくなります。よって最近は手術当日にも色々な器具をつけたまま歩かされたりします。ICUでも歩かされる事があります。
 他にも良い事が沢山あるので、手術後は早く動くように看護師さんやリハビリのスタッフに言われます。
 しかし、整形外科の患者さん(特に骨盤や下肢の手術後など)は歩く事が禁止されている場合もあります。その場合にはベッドの上で足を動かすだけでも違います。ベッドの上でのリハビリですね。

(2)弾性ストッキング
 女性がはいていいんですか?と聞かれる事がありますが、男性用ストッキングではありません。
 非常に強いもので、はくのが大変です。昔勤めていた病院の病棟の忘年会で、弾性ストッキングはかせゲーム!なるものが行われるぐらいですから、大変です。特に足首を通過させるのが大変です。
 それぐらい強い圧で足をしめるストッキングです。ダイエットに良いかもしれませんが、色が良くありませんからその目的で使う人はいないでしょうね。

(3)間欠的空気圧迫法
 電動マッサージ器のようなもので、足を包んだマット?がふくらんだり,縮んだりして足をマッサージする機械を使います。一度自分の足につけてみましたが、結構気持ちいいです(^_^)。

 手術後はこのような事をして足の中に血液の固まりができないようにしているのです。

 このような事をすると、病院には305点の診療報酬が入ります。1点は通常10円ですので3050円です。1日でではなく、1回の入院につきです。安いと思うか高いと思うか、、、、この会社の家庭用製品が10万円ちょっとしますから、、、、まあ30万円ぐらいでしょうか。100人の人に使ってやっと元が取れますが、1つあればよい訳ではないので、当院は5つぐらいあります。500人でやっと元が取れます。消耗品もありますから、この診療報酬では安いのではないかと思います。

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以下は、この本の引用も含まれます。


肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン

肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン

  • 作者: 肺血栓塞栓症 深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員会
  • 出版社/メーカー: メディカルフロントインターナショナルリミテッド
  • 発売日: 2004/07
  • メディア: 大型本




早期離床について
 人工股関節置換術後の患者さんで早期リハビリを行った所、症候性深部静脈血栓症の発症率が普通のリハビリでは10%だったのに対して0%であった(大木ら)。
 術中の下腿マッサージや術後の足関節運動により、深部静脈血栓症が26%から17%に低下した(石井ら:Hip Joint 27:557-559, 2001)。
→10%近く発症率が低下しています。NNTは10ですので、10人の人に行うと1人発症が抑制できると言う事で非常に効果的です。

弾性ストッキングについて
 高リスクでない手術においてはオッズ比が0.28で相対リスクが68%だったとあります(Wellsら)。コントロールが何%なのか要約に書かれていないのですが、20%程度だったとするとNNT=15.62でかなり有用です(ここにあるfrom RR into NNTと言うエクセルファイルを使いました)。コントロールが2%程度だとNNTは156.3とあまり意味なさそうですが、大きな合併症もないでしょうから使いましょうと言う事だと思います。

間欠的空気圧迫法
 この方法はうっ滞の減少だけでなく、線溶活性を亢進させる作用もあるそうです(Comerotaら)。知らなかった!!線溶とは固まった血液を溶かす作用です。
 何故かこの項目では発症率を減らしたとかの文献の引用がありませんでした。

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yangt3

肺塞栓の予防は、ドクターだけでなく看護師さんや
コメディカルの協力が不可欠ですね.
どんな合併症も皆が気にして予防しようと思うことが
重要なんですね.
by yangt3 (2009-12-06 10:14) 

Kim

yangt3さん、コメント&nice!ありがとうございます。

みんなが気をつけて足を動かしてもらうだけで3050円です。それでまれですが重篤な合併症の発症が予防できるのですから、、、看護師、理学療法士、その他の人の協力でできることですね。

by Kim (2009-12-06 12:05) 

shiraisi

フットポンプは気持ち良いのですか?
それなら病院だけではなく、一般向けでも売れそうな気がしますね。

帝王切開後でも、早いうちから歩かせるそうですが、私は虫垂炎でもかなり痛かったので、充分な鎮痛をしないと歩くどころではないですよね?
by shiraisi (2009-12-06 13:13) 

Kim

shiraisiさん、コメント&nice!ありがとうございます。

マッサージチェアでも足のマッサージしてくれますよね。病院の医局にもあります(^.^)。気持ち良いですよ。

今は痛み止めをちゃんと使いますが、痛がっていても我慢して歩きなさい!と看護師さんに怒られます(^.^)。

by Kim (2009-12-06 13:40) 

コンメル

家庭用のエアーマッサージャーもなかなかよいです。自分が使っているのは、こちら
http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=EP1611P

ですが、気持ちいいです。だるさがスッキリします。
大手家電量販店で値切れば15000円前後なので、これが保険で使えれば早く償還できるのに・・・。

メーカーは違いますが、電池で動く携帯用の物もあります。
http://www.nissei-kk.co.jp/html/am7.html
すぐに電池が無くなってしまうのが難点ですが、飛行機内でのむくみ防止などに重宝しています。

こんなものもありますというお話でした。入院中の方の肺塞栓予防の話題から少しずれました。すみません。


by コンメル (2009-12-07 00:25) 

Kim

コンメルさん、コメントありがとうございます。

パナソニックのは病院で使うのとほとんど同じですね!!

後者のは長さが足りなそうですが、弾性ストッキングが短いものと長いものと効果は変わりなかったとあったので、こちらも有用かも知れませんね。

貴重な情報ありがとうございました!!
by Kim (2009-12-07 01:25) 

T-CHIRO

前に書きましたが、私も術後の翌朝立つとフラフラに吃驚したのですが、どんどん歩いてくださいということで、病院中歩きまわってましたが歩くと良くなる!!という気がなんとなくしてました。ただこれも前書きましたが水分をとってもとっても排尿できなくて・・・・なんとか自分で腹圧をかけて排尿できましたが、これは・・・・年齢と共にかなり大変なことかも?と思った経験でした。間欠的空気圧迫法は手術中してたようです。

もちろん整形関係では安静が必要ですよね。
by T-CHIRO (2009-12-07 10:09) 

Kim

T-CHIROさん、コメントありがとうございます。

無理してでも歩いているとよくなった気がするんですね。勉強になりました。自信を持って患者さんに歩くように言えます!!

ありがとうございます!!

by Kim (2009-12-07 11:01) 

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