葉酸欠乏について [研修医教育]
入院中の患者さん(骨折の術後)に軽度の貧血があったので精密検査をしました。半年ほど前にHbが9.5でした。骨折による出血のため、手術前にHb6.0まで低下しており、赤血球を4単位輸血しています。
Hb9.0、MCV血清鉄TIBCフェリチンVitB12。葉酸は3.3と軽度低下していました。
研修医の先生に治療方針を調べるようにお話したので自分でも調べてみました。「そうだね、良く調べたね!」と偉そうに言えるためです(^.^)。
UpToDateのVer.17.3「Diagnosis and treatment of vitamin B12 and folic acid deficiency(ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏の診断と治療)」には以下のようにありました。
・MCVが110fL以上の患者さんを見つけたら、VitB12欠乏とともに葉酸欠乏を疑うべき
MCVとは赤血球の大きさを示す指標です。ビタミンB12や葉酸が欠乏すると赤血球が大きくなります。
・臨床症状でビタミンB12欠乏と葉酸欠乏を鑑別する事は難しい
・血清葉酸値は変動しやすい
一度病院食を食べただけでも正常化する可能性がある
組織の葉酸濃度が正常であっても、血清葉酸値が低下する場合がある(数日の栄養不良、妊娠、アルコール摂取、ある種の抗けいれん剤など)
・血清葉酸値が4ng/mL以上であれば、葉酸欠乏はほぼ除外できる
・栄養障害などがなければ、血清葉酸値が2ng/mL以下であれば、葉酸欠乏の可能性が高い
・ビタミンB12の欠乏が合併していると神経症状の悪化をきたすので、必ずビタミンB12欠乏がないかどうか検査すべきである
この患者さんの葉酸値は3.3でしたので、、、、、除外も確定も難しいです。困ったもんです、、、、
また「考える技術」P.54-57には以下のようにありました。
・MCVが115-129fLの場合、ビタミンB12欠乏の検査前確率は50%であり、130以上ならばほとんど全ての患者にビタミンB12欠乏がある。
・貧血以外に症状がない人ではビタミンB12欠乏の方が葉酸欠乏よりも頻度が高い。
・葉酸の体内貯蔵量は2-4ヶ月程度しかない。
・葉酸欠乏の診断における血清葉酸値の感度・特異度は明らかではない。
・赤血球葉酸値の感度・特異度はそれぞれ70%程度である。
以上の事より、この患者さんにおいては、
・患者さんは元気で特に症状がない
・貧血は以前の値に改善しており、緊急性はない
・手術前に絶食となったりしている影響が考えられる
などの理由により、しばらく何も治療せず経過をみる事になりました。来月血清葉酸値を再検査し、低下があれば原因を調べるとともに、葉酸の投与を行う予定です。なぜ来月にするのか、、、、それは別記事にしたいと思います。医療従事者の方は分かると思いますが。
ちなみに、学生時代に、「コメには葉酸が沢山含まれているので、日本人には葉酸欠乏が少ない」という記述を読んだ気がするのですが、色々調べたら間違いでした。人間の記憶と言うのはあてになりませんね(+_+)。
Hb9.0、MCV血清鉄TIBCフェリチンVitB12。葉酸は3.3と軽度低下していました。
研修医の先生に治療方針を調べるようにお話したので自分でも調べてみました。「そうだね、良く調べたね!」と偉そうに言えるためです(^.^)。
UpToDateのVer.17.3「Diagnosis and treatment of vitamin B12 and folic acid deficiency(ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏の診断と治療)」には以下のようにありました。
・MCVが110fL以上の患者さんを見つけたら、VitB12欠乏とともに葉酸欠乏を疑うべき
MCVとは赤血球の大きさを示す指標です。ビタミンB12や葉酸が欠乏すると赤血球が大きくなります。
・臨床症状でビタミンB12欠乏と葉酸欠乏を鑑別する事は難しい
・血清葉酸値は変動しやすい
一度病院食を食べただけでも正常化する可能性がある
組織の葉酸濃度が正常であっても、血清葉酸値が低下する場合がある(数日の栄養不良、妊娠、アルコール摂取、ある種の抗けいれん剤など)
・血清葉酸値が4ng/mL以上であれば、葉酸欠乏はほぼ除外できる
・栄養障害などがなければ、血清葉酸値が2ng/mL以下であれば、葉酸欠乏の可能性が高い
・ビタミンB12の欠乏が合併していると神経症状の悪化をきたすので、必ずビタミンB12欠乏がないかどうか検査すべきである
この患者さんの葉酸値は3.3でしたので、、、、、除外も確定も難しいです。困ったもんです、、、、
また「考える技術」P.54-57には以下のようにありました。
・MCVが115-129fLの場合、ビタミンB12欠乏の検査前確率は50%であり、130以上ならばほとんど全ての患者にビタミンB12欠乏がある。
・貧血以外に症状がない人ではビタミンB12欠乏の方が葉酸欠乏よりも頻度が高い。
・葉酸の体内貯蔵量は2-4ヶ月程度しかない。
・葉酸欠乏の診断における血清葉酸値の感度・特異度は明らかではない。
・赤血球葉酸値の感度・特異度はそれぞれ70%程度である。
以上の事より、この患者さんにおいては、
・患者さんは元気で特に症状がない
・貧血は以前の値に改善しており、緊急性はない
・手術前に絶食となったりしている影響が考えられる
などの理由により、しばらく何も治療せず経過をみる事になりました。来月血清葉酸値を再検査し、低下があれば原因を調べるとともに、葉酸の投与を行う予定です。なぜ来月にするのか、、、、それは別記事にしたいと思います。医療従事者の方は分かると思いますが。
ちなみに、学生時代に、「コメには葉酸が沢山含まれているので、日本人には葉酸欠乏が少ない」という記述を読んだ気がするのですが、色々調べたら間違いでした。人間の記憶と言うのはあてになりませんね(+_+)。
脳外科、整形外科系で長期入院されている
ご高齢の方に、軽度貧血ということは
よく見受けられることですね.
内科が関与していないと、そのまま放置されることも
ままあるようです.
ごくまれに貧血の原因となる疾患が見つかって
大騒ぎになることもあり、ほんとに難しいですね.
by yangt3 (2009-11-29 08:56)
yangt3さん、コメント&nice!ありがとうございます。
一応全身を診る外科医ですので、整形外科で研修をさせて頂いている代わり?にこういったチェックをさせて頂いています。
研修医の先生は整形外科の研修中なのに、なんで貧血の勉強をしなくちゃならないんだ?と思われているかも知れませんが(^.^)。
by Kim (2009-11-29 10:49)
葉酸って…、恥ずかしながら、出産するまで知りませんでした。
第二子のお尻に皮膚洞があって、精密検査を受けることになり、そのときに初めて、妊婦の葉酸の不足が、赤ちゃんの二分脊椎の原因の可能性となりうると知りました。
妊娠前に知りたかった…(泣)。
幸い、皮膚洞は浅く、何の問題もなかったのですが、一歳にもならないときに全身麻酔でMRI検査を受けなければならず、本当に心配しました。
最近になって、新聞で、妊娠後期に葉酸を取りすぎると、赤ちゅんが喘息になる危険性があるという記事をみました。
こんなに私を悩ませた葉酸って…いったい何者よ(怒)!
by 一見さん (2009-11-29 12:37)
一見さん、コメントありがとうございます。お子様は問題なくて良かったですね。
二分脊椎の原因となりうるんですね。知りませんでした。勉強になりました。以下に参考資料が出ています。
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1212/h1228-1_18.html
by Kim (2009-11-29 14:00)
母乳育児支援の立場からだと、葉酸不足はveganなど厳格な菜食主義者に多いといわれています。食事はどういう風にとっていらしたのかしら?
質問の立場が違うので、見当違いだったらごめんなさい。
Hb6だと輸血ですよね~~
先日、当直先で分娩後ですが、5.6の人に輸血をしないで帰宅させた症例がありましたが、いいのかなあ?とか・・・考えてみたり。
鉄剤だけで補足されるのかしら?
それとも、最近はなるべく生物由来製剤は避けるようになっているからなのか?
by Ceiko (2009-11-29 22:37)
Ceikoさん、コメントありがとうございます。
記事に書かせて頂いた患者さんは、ある部位の骨折の患者さんです。骨折すれば出血しますので貧血になります。手術しないのであれば輸血無しでも良かったかも知れません。
輸血の適応はHbの値だけで決められる訳ではありません。貧血になった速度、その原因、治療ができるかどうか、患者さんの肺や心臓の状態、ADLや今後どんな治療を行うのか、、、、色んな事から判断が必要です。
分娩後であれば若い女性で元気でしょうから、輸血無しでもよさそうですね。
個人的には輸血の適応厳しくしていますので、今回の記事の患者さんは私が主治医だったら輸血しません。
血液データが抜けていたのに今気付きましたが、フェリチンが400ぐらいで高値を示した以外は正常でした。
by Kim (2009-11-29 23:16)
kim先生今晩は
私も以前、Hb8までになった事がありましたが、急激にではなかったので、だるい、歳かな、疲れかなで過ごしていました。
かかりつけの内科で、だんだん貧血がひどくなっているから一度専門医を受診しなさいと言われて、入院して検査を受けました。
結果は鉄欠乏性の貧血で、一月ほど薬を飲んで良くなりましたが、それ以来食事のバランスには気を配っています。
多少の貧血なら、食生活の改善でよくなりますね。
マルクは2度とやりたくないです。
なんか逃げ場がないみたいで(^^)。
そのすぐ後で、TVで骨髄液の採取器具を見たら、余計怖い感じになりました。
by andante (2009-11-30 00:42)
ありがとうございます。
勉強になります。確かに、たとえ5まで落ちていても、分娩後ですから、予備力はあったでしょうし、他のデータは(MCVも含めて、凝固系も)問題なしでした。
昔は(何年前のこと?)安直に輸血をしていたのかなあ?とも振り返ることができました。
内科はかじった程度でしかわからないので、産科での適応とはまた別物でしょうしね・・・。
いつも、勉強させていただいております。ありがとうございます。
by Ceiko (2009-11-30 01:11)
andanteさん、コメントありがとうございます。
貧血で入院された事があるんですね。大変でしたね。骨髄穿刺は液を抜く時が辛いと聞いています。研修医の時に行いましたが、骨髄を吸飲する時患者さんがびっくりして暴れる事があるから動かないように説明しなさいと注意された事を思い出しました。
レバーとかほうれん草とか食べておられるんでしょうか。
by Kim (2009-11-30 07:29)
Ceikoさん、コメントありがとうございます。
輸血は臓器移植の一種です。色々問題が起こる事があります(まれですが)。それから血液はだいたい足りません。以前よりも輸血の適応は厳しくなっていると思います。
特に女性は出血に強いです。
by Kim (2009-11-30 07:52)
kim先生今晩は
私はレバーは弱いです。
昔入院した病院で、時々レバーが食事に出たのですが、もろそのままの形なんです。
一口食べて吐きそうでした。食欲はなくなり(メインだったので)ダイエットをしている気分でした。
初めて口にしたのがこの時だったので、印象が悪いです。
どんな食材も、調理の仕方1つで美味しく食べられるのでしょうね。
お料理上手な奥様がいる家庭のご主人は、浮気はしないって言っていた人がいましたが、本当なのでしょうか?(^_^)
何でも手作りで、とってもお料理上手な友人がいますが、聞けません。
「なんど夫と別れようと思ったことか」と、時々話すのを聞いていたので。(+_+)
by andante (2009-12-01 01:07)
andanteさん、コメントありがとうござます。
私はレバー好きなので生でも大丈夫です。おっ、これは肝静脈、,,なんて思いながら食べています。最初に食べたのものが悪いと嫌いになっちゃうと言う事はあるでしょうね。是非どこかおいしいお店でレバーを食べてみて下さい!
浮気についてはあまり関係ないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
by Kim (2009-12-01 09:37)
kim先生今晩は
今度、美味しいレバーを食べさせてくれる所を探してみますね。
何か次元の低い質問をしてしまいました。
失礼致しました。
by andante (2009-12-02 00:51)
andanteさん、コメントありがとうございます。
レバーはとってもおいしいですよ!!
質問には次元も何もありませんから心配ないです。誰かお答え頂けるのを期待しています。
by Kim (2009-12-02 07:07)