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体温を下げないようにしましょう [研修医教育]

 死の三兆と言うのがあります。低体温、出血傾向、アシドーシスです。この3つがそろうと患者さんは助かりません。最初の低体温が最も重大です。重症な外傷患者さんが低体温となったらまず助かりません。

 JATECやJPTECと言う勉強会でも、外傷患者さんの診療においては、保温に注意しましょうと教えられます。しかし、重症患者さんは裸にされる事が多いですし、手術中などは水分が蒸発する(開腹すると腹膜が空気に露出されます。腹膜は体表と同じぐらいの面積があるそうです)ため体温はどんどん下がります。

 気を付けないと簡単に低体温になります。

 また、体温が下がると血が止まらなくなります。血液は単純な液体ではありません。たんぱく質も含まれていますので、たぶん0度にしたとしても凍らないでしょう。たんぱく質や血小板と言う細胞の働きで血が止まりますので、冷やすとかえって止まりません。以前は、胃洗浄を冷たい水で行うべしと言われていましたが、現在は体温と同じ方が良いと言う事になっています。

 また、低体温の治療として、温かい輸液で体温は上がりませんので注意しましょう。体温低下を防ぐと言うぐらいの意味しかありません(のでやった方がもちろん良いです)。

「加温した輸液、輸血の投与により体温は上昇するか?」
 現在でも誤解している医療従事者が多いが、「38~40度に加温した輸血・輸液で体温を上昇させよう」などという大それた考えは今すぐ捨てた方が良い。例えば、核心温35度の患者に40度の輸液を1時間で1リットル投与したと仮定する。輸液から体に与えられる熱量は(40-35)(度)×1(kg)×1(cal/kg/度)=5calなので、患者の体重を60kg、人間の比熱を0.83として計算すると、5(cal)÷60(kg)÷0.83(cal/kg/度)=0.10(度)となる。理論上の上昇温度はたったの0.1度である!
(塩崎忠彦:加温、救急処置トラブルシューティング. 救急医学 30、P.357-360、2006より)

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ミト

勉強になります…

温めた輸液では体温が上がらなそうなのは想像に難くないのですが、
では、低体温の時はどうやって体温をあげたらいいのですか?

by ミト (2009-11-11 19:37) 

yangt3

高齢者の肺炎で低体温が合併して
一見発熱がなくて、レントゲンをみてびっくり!ということ
ありますね.
私が学生のころには、消化管出血には冷水で胃洗浄と
ならいました(^^)
by yangt3 (2009-11-11 20:47) 

Kim

ミトさん、コメントありがとうございます。

体温を上げる方法はたくさんあります。後日記事にしますのでお楽しみに!!

ググるほうがたくさん出てくるかもしれませんが(^.^)。

by Kim (2009-11-12 07:31) 

Kim

yangt3さん、コメントありがとうございます。

そうですね。重症な感染症の人は熱が出ません。注意しないといけませんね。

消化管出血には冷水、、、今もやっている先生いると思いますが、血液は体温と同じ温度が最も固まりやすいです!

by Kim (2009-11-12 07:35) 

Kim

血が固まりにくいわたしは、どうしたらいいですか?
by えみりん (2009-11-12 18:24)
(リンクにメールアドレスが入っていたので削除しました)

血が固まりにくい病気なのでしょうか?それはそれで治療を是非してもらって下さい(してもらっていると思いますが)。

そういう方でも低体温になると余計に血が出やすくなります。注意したいですね。

by Kim (2009-11-12 18:32) 

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