気管挿管 vs バッグバルブマスク [医学関連]
最近CoSTRを読むようになり、色々と勉強しています。心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン-日本語版〈2005〉(以下ガイドライン2005)も何度も読んだはずなのですが、、、、CoSTRを読んでから対応する所を読んでみると、新しい発見があります。
今回は、気管挿管です。気管挿管はグレードが下がった、下がったと良く言われていますが、実は、気管挿管が悪いと言うエビデンスはありません。AHAのガイドライン2005(英語です)には「No prospective randomized trials have directly assessed the outcome of adult victims of cardiac arrest with provision of bag-mask ventilation compared with endotracheal intubation.」と書かれています(日本語版のガイドライン2005ではP.68)。つまり、成人心停止患者を対象として、両者(気管挿管とバッグバルブマスク)を比較した研究はないと言う訳です。よって、良いとも言えないし、悪いとも言えないと言う事です。
CoSTRには、小児の病院外の研究で、気管挿管とバッグバルブマスクには差を認めなかったと言う研究が紹介されているのみです(気管挿管もたった6時間しかトレーニングを受けていない!人がやっているんだそうです)。
つまり、気管挿管を行うと、胸骨圧迫の中断が必要となる、食道挿管の危険があるる、誰でも行える手技ではない等の理由により、不利益があるであろうから、気管挿管は推奨されていないのです。
逆に気管挿管は、成功すれば胸骨圧迫の中断を防げる、胃液の誤嚥を防げる、静脈路が確保出来ない時に薬剤投与ルートに出来る等の利点があります。
よって、上記ガイドライン英語版にも「Bag-mask ventilation or ventilation with a bag through an advanced airway (eg, endotracheal tube, Combitube, or LMA) is acceptable for ventilation during CPR.」つまり、両者ともCPR中の換気に使用して良いと書かれています。
我々医師は特に、気管挿管の利点が上回るよう、気管挿管の技術を磨かないといけませんね。そのため?に こんな教材 を注文しました。日本語版が出ると良いですがね。
この本、買いたいですね~。ちなみに、日本シミュレーション学会ではDAM(Difficult Airway Management: )セミナーという気道確保困難症例に対するセミナーが開催されています。ま、自分もまだ受けてませんが・・・。
by (2007-09-25 23:17)
nozaharuさん、セミナーの紹介ありがとうございます。
是非受けてみたいです。
by Kim (2007-09-26 08:39)
はじめまして。
自分は臨床工学技士になるために現在専門学校に通っています。
救急医をなさっているということですが、唐突ではありますが質問に答えていただけるでしょうか?
実は現在、人工呼吸器について校内実習中なのですが、ジャクソンリースとバッグバルブマスクのそれぞれの利点と欠点をまとめるという課題を出されました。
基本的にはバッグバルブマスクはガス供給がなくても使えるということと、ジャクソンリースはそれが不可能ということ意外よくわかりません。
もしお手数でなければ6月25日(水)までに返答をいただけると幸いです。
急に、しかも勝手にお願いしているということが真に図々しいということは重々承知の上お願いします。
by モッティ (2008-06-23 23:54)
モッティさん、コメントありがとうございます。また質問ありがとうございます。
私は今自宅です。本が自宅にはないので、記憶に頼るばかりですが、おっしゃっている事はまず正しいですし、最も大きな違いだと思います。
バッグバルブマスクは、リザーバーをつけないと100%酸素が投与できません。ジャクソンリースは構造そのものがリザーバーみたいになっていますので、100%酸素投与が可能です。基本的に分時換気量の3倍ぐらいのガス流量が必要です(通常は酸素です)。が、分時換気量と同じでも二酸化炭素はたまらないと聞いています。
それから、気管チューブに接続した場合、バッグバルブマスクは常に接続部を保持していないと接続が外れたり、気管チューブが抜けたりしてしまいますが、ジャクソンはそれがありません。
それから自発呼吸がある気管挿管された患者さんでは、ジャクソンが良いと思っていましたが、バッグバルブマスクでも自発呼吸できると知ってびっくりしました。
たしか、ジャクソンリースは小児の麻酔のために考えられたものだったと記憶していますが、、、、
私が研修医の時に勤めていた病院では、気管挿管するまではバッグバルブマスクを使い、気管挿管したらジャクソンリースを使っていました。3つ子の魂、、、、と言いますので、私は今でもそうしたいです(が、今の病院にはジャクソンリースがほとんどありません)。
また明日本で調べてコメントしますね。
by Kim (2008-06-24 00:15)
お忙しい中、回答していただきありがとうございます。
自分が実際に手技として行ってみたところ、バッグバルブよりもジャクソンリースのほうが難しく感じました。
現場では最近はジャクソンリースは用いていないのでしょうか?
また、換気量や気道抵抗の反映はジャクソンリースのほうが良いというようなことを聞いたのですが、それよりもバッグバルブマスクが用いられているメリットなどはあるのでしょうか?
なんか立て続けに質問してしまってすみません。
ご迷惑でなければこれからも質問させていただいてもよろしいでしょうか?
ホントに勝手なお願いではありますが、先生の記事などを読んでみて、なるほど。と思うことも多々あるので、とても勉強になると感じています。
by モッティ (2008-06-25 09:58)
モッティさん、コメントありがとうございます。
まず質問は大歓迎ですよ。分かる事しか答えられませんが(^.^)。
気管挿管されずに、普通に行う場合には、ジャクソンリースは確実に難しいです。空気漏れに対して非常に弱いです。
気管挿管されていても、ジャクソンリースはガス流量に対してバッグが膨らみすぎないようにバルブを調節する必要があります。
私の今の病院ではジャクソンはあまり使っていませんが、その理由はジャクソンが数える程しかないためです。その理由は分かりません。お金の問題でしょうか?
おっしゃる通り、気道抵抗はジャクソンがより感じられるでしょう。
気管挿管されている場合に、バッグバルブマスクが優れている利点はないと思っていますが、、、、。
以下に解説がありますよ。
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=854606
by Kim (2008-06-25 15:45)
本当にありがとうございます。
とても参考になりました!!
今回の質問だけでなく、今後の質問まで聞いていただけるなんてとても嬉しく思っています。
とても不躾な感じではありますが、これからもよろしくお願いします。
by モッティ (2008-06-25 23:57)
モッティさん、コメントありがとうございます。
質問に答える代わり?に、医者に優しいMEさんになって下さいね。
それからMEさんは、Medical Entertainerとも呼ばれているらしいですから、宴会芸も身に付けましょう!
by Kim (2008-06-26 13:34)