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造影CT検査前にクレアチニン値を見る必要はありません [医学関連]

 造影CTを撮像しようとすると、「先生クレアチニンを待ちますか?」と言われます。私は待たなくて良いですと言っています。今回は待つべきなのか?待たなくて良いのか?と言うお話です。

 まず、時間に余裕がある(患者さんの状態も、こちらも)場合には、待った方が色々無難でしょう。造影剤の添付文書には腎機能が悪い人には注意が必要とありますから、腎機能もチェックしないで造影したから、、、、、、と言われてしまいます。

 時間に余裕がない場合には、もちろんクレアチニンの採血はしますが、結果が出るのを待つ必要はありません。緊急対応が必要な疾患を疑ったら、躊躇なく造影CTをしましょう。

 以下に理由を述べます。

(1)造影剤腎症が存在するというエビデンスはない。
(2)クレアチニンなどの血液検査は、緊急時には腎機能の評価として正確ではない。
(3)私はほぼ全例造影CTを撮っていますので、採血結果を診る必要がない(造影をするかどうかの判断に使っていない)。

(1)造影剤腎症が存在するというエビデンスはない
 もちろん存在しないというエビデンスもありませんが、造影剤腎症の診断基準は、造影剤投与後72時間以内にクレアチニンが0.5以上、あるいは25%以上上昇したと言うものです。なんと、通常は造影剤以外で腎機能が悪くなった場合を除くというのがあるはずですが、造影剤腎症にはありません。除外するのが困難だからでしょう。
 また、多くの研究が心臓カテーテルなどの動脈に造影剤を投与する検査での研究です。静脈に投与した場合の腎症についての研究はあまりないのだそうです。
 よって本当に造影剤のせいで腎機能が悪くなったかどうかは不明なのです。また、添付文書の原則禁忌には「重篤な腎機能障害(無尿等)」とあります。尿が出れば問題ないのではないでしょうか。腎機能が悪い場合は慎重投与となっていますが、他の薬で慎重投与になっていても投与している場合があるのではないでしょうか。何故造影剤だけ使わないのでしょうか。

(2)クレアチニンなどの血液検査は、緊急時には腎機能の評価として正確ではない。
 例えば、「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」P.8には「急性腎障害によりGFRが低下してもSCrは24〜48時間程度の遅れをもって上昇するため、SCrに基づいて計算されたeGFRもまた、リアルタイムに真のGFRを示さないことに留意する」とあります。また筋肉が少ないような高齢者では腎機能が悪くてもクレアチニンは正常です。
 つまり、クレアチニンが正常だったとしても腎機能が良いとは言えない、つまり感度が高くないと言うことです。
 逆に循環血液量減少などの患者さんではクレアチニンが上昇しています。腎機能が悪いのではありません。特異度が高くないと言うことです。
 よって、採血データを見ても腎機能が良いか悪いかは分からない(緊急時ですよ、あくまで)ので、採血結果を待つ必要はありません。
 スタッフを説得するのが大変であれば、こちらの本の最初に載っている潜血と蛋白両方陰性だったらクレアチニンが1.5以上のことは少ないと言うのを使ってみてはいかがでしょうか。と言うか尿が出れば問題ないのですが。


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(3)私はほぼ全例造影CTを撮っていますので、採血結果を診る必要がない(造影をするかどうかの判断に使っていない)。
 検査は結果により行動が変わるから行います。合コンで趣味や年齢、仕事や長男かどうかを聞くのは、その情報が必要だからですよね。どっちみち造影CT撮るならば採血結果を待つ必要はありません。私は外科医なので、造影CTを撮る人は急性腹症の方が多いです。腹膜炎や腸壊死は誤診したら大変なことになります。腎臓が悪くなる可能性よりもそちらを重視します。

 「造影剤の使用において、添付文書の記載事項は重要であるものの、添付文書の記載に縛られすぎて、本来必要である検査や治療が行われなくなる可能性もあり、このようなことがあれば、まさに本末転倒である」(臨床画像 Vol.22, No.12, P.1400-1408, 2006

 診断をつけることが大切なのか(単純CTは感度が低いと言われています)、造影剤を使わないで腎臓を守ることが大切なのか、医師の判断が試される場面ですね。

 ちなみにですが、他の薬も腎臓を悪くするものがたくさんありますが、クレアチニンの結果を見て投与するかどうかを考えるなんて事あまり聞いたことがありません(投与量を変更することはありますが)。造影剤だけ何故そうするのか?私にはよく分かりません。診断薬だからと言う意見ももちろんありますが、診断が出来なくても患者さんは不利益を被ります。

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