SSブログ

人工呼吸中の患者さんに電気ショックを行う時、回路は外すべきか? [CPRの基礎]

 心肺蘇生の講習会では、電気ショックを行う時に、安全確認を十分するように指導されます。特に高濃度酸素が流れていたために引火したと言う報告があったようで、酸素が流れている物は遠ざけると言う事が指導されます。ガイドライン的には1m以上離せばいいようですが、バッグバルブマスクなどを「背中に回して3m以上下がってください!」と言わないと不合格になると言う講習会もあるとかないとか。

 気管挿管されていて、気管挿管チューブと人工呼吸器の回路がなかなか外れない時があります。そういう時にはどうしたらいいのでしょうか???

 ヨーロッパ蘇生協議会のガイドライン2015のP.114に書かれています。

「Safe use of oxygen during defibrillation」
 In an oxygen-enriched atmosphere, sparking from poorly applied defibrillator paddles can cause a fire and significant burns to a patient. The absence of case reports of fires caused by sparking where defibrillation was delivered using self-adhesive defibrillation pads suggests that the latter minimise the risk of electrical arcing and should always be used when possible.
 The risk of fire during attempted defibrillation can be minimised by taking the following precautions:
 Take off any oxygen mask or nasal cannulae and place them at least 1m away from the patient's chest.
 Leave the ventilation bag connected to the tracheal tube or supraglottic airway, ensuring that there is no residual PEEP remaining in the circuit.
 If the patient is connected to a ventilator, for example in the operating room or critical care unit, leave the ventilator tubing (breathing circuit) connected to the tracheal tube unless chest compressions prevent the ventilator from delivering adequate tidal volumes. In this case, the ventilator is usually substituted by a ventilation bag, which can itself be left connected. If not in use, switch off the ventilator to prevent venting large volumes of oxygen into the room or alternatively connect it to a test lung. During normal use, when connected to a tracheal tube, oxygen from a ventilator in the critical care unit will be vented from the main ventilator housing well away from the defibrillation zone. Patients in the critical care unit may be dependent on positive end expiratory pressure (PEEP) to maintain adequate oxygenation; during cardioversion, when the spontaneous circulation potentially enables blood to remain well oxygenated, it is particularly appropriate to leave the critically ill patient connected to the ventilator during shock delivery.

「電気ショック中の安全な酸素投与について」
 高濃度酸素ガスが流れていると、しっかりと身体にパドルを密着していない場合に引火して患者の皮膚に熱傷を負わせる可能性がある。自己粘着性のパッドを電気ショックに使用した場合の引火の報告はないため、可能であればパドルではなくパッドを用いるべきである。
 電気ショック中の引火の危険は以下に注意することで低下させることが出来る。
・全ての酸素マスクや鼻カニュラを患者の身体から取り外し、胸部から少なくとも1m以上離す。
・バッグバルブマスクなどの換気器具は、気管挿管チューブや声門上エアウェイなどに接続されたままにする。ただし、PEEPがかかっていないことを確認する。
・手術室や集中治療室などで人工呼吸器が接続されていた場合、胸骨圧迫によって換気が妨げられていないのであれば、チューブは人工呼吸回路に接続したままとする。この場合、人工呼吸器は換気器具の代わりであるため、接続したままに出来る。人工呼吸器を使用しない場合、部屋に高濃度酸素ガスを放出しないように電源を切るか、テスト肺に接続する。気管チューブに接続して普通に使用する場合、人工呼吸器から排出される高濃度酸素ガスの排気を充分に行い、電気ショックを行う部分が高濃度酸素にさらされないようにする。集中治療室にいる患者は、酸素化を改善するために、PEEPがかけられていることがある。特に同期電気ショックを行う場合には、自己血流によって血液が良く酸素化されたままになるため、人工呼吸器を外さないことは適切である。

 と言う事で、人工呼吸器に接続されている患者さん、あるいは高度な気道管理器具が接続されている患者さんでは、それらを接続したままにするのが良いということです。

 しかし、AHAはこれについては言及していません。以下のような疑問が出てきます。

 例えばバッグバルブマスクなら、リザーバーの付け根?から高濃度酸素が流れるため、引火する危険があるのではないか?ジャクソンリースでも同じでしょう。
 換気器具をつけていたら、電気ショックの時の体動で、気管チューブが抜けてしまうのではないか?
 電気ショックによる体動によって人工呼吸回路が外れたら、胸部に高濃度酸素がふりかかるのではないか?

 一つ目の、換気器具をつけたままにしていて大丈夫なのか?については、JRCのガイドライン2015P.90に記載があります(オンライン版ではこちらの78ページです)。

 「人形を用いた2件の研究では、人工呼吸器具(自己膨張式バッグ等)が気管チューブに接続されている場合、あるいは酸素供給源が患者の口から1m以上離れている場合は、除細動電極周辺の酸素濃度は上昇しないとされている。」

 ほんまかいな!?と思いますが、二つの文献を引用していますので、大丈夫なんでしょう。残りの二つに対する返事は、たぶん誰も出来ないのでしょう。どなたか研究してみませんか?

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。