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UpToDateのお勧め [研修医教育]

 病院の中で医者は評判が良いとは決して言えません。威張っている、わがままばかり、お願いしたことをしてくれないなど。しかし、これだけは言えます。病院のスタッフの中で専門分野に関して最も勉強しているのは医者です。なぜなら勉強しないで患者さんの診療は出来ないからです。他の人たちも勉強している人は沢山いるとは思いますが、勉強しなかったとしても仕事は出来ると思います(と誰かが言ってました)。

 そんな中、多くの医者が利用している資料の一つを紹介しましょう。それはUpToDateと呼ばれるサイトです。簡単に言えば電子版の教科書です。教科書と言っても学生時代に使っていたような一つの項目について簡単に記載したというようなものではなく、例えば、このAKB48に関するWikipediaのサイトのような大量の知識が満載です。

 アメリカのサイトですから、もちろん英語ですが、検索までは日本語で出来るようになりました。無料だったら良いのですが、有料です。1年間でうん万円の購読料が必要です。しかし、このUpToDateに書かれていたと言えば、多くの医者はひれ伏すと言うぐらい信頼度の高い資料です。

 たぶん全ての文献が1年に1回以上担当者によってチェックされて、必要なところは新しく書き換えられます。

 なんとハーバード大学による研究で、UpToDateを使うことで患者さんに良いことがたくさんあったと示されたとのことです。詳しくはこちらをご覧ください。

 病院で導入されていないのであれば、偉い人に導入するように言ってみてください。聞き入れなかったらもう辞めてやる!ぐらいの素晴らしい資料であることは間違いないです。まあ、辞めることはありませんので、病院で使えるようにしてもらえなかったら、個人で加入しましょう。私はもう10年以上個人で加入をしています。そして、もったいないから?毎日見るようにしています。歳をとるとケアの質がだんだん落ちるという事なので、落ちないように、あるいは落ちる速度が最小限になるように頑張ります!


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丸投げはいけないのか? [研修医教育]

 医者の世界では(もしかしたら他の業種でもあるのかもしれませんが)「今日丸投げされちゃったよ」とか「丸投げですか?」と言う会話がよくされています。最初に結論を言っておきますが、私は丸投げ大歓迎です。しかし、丸投げは自分ではしないように、丸投げと言われないように気をつけています。研修医の皆さんも是非まねをしてください。

 患者さんがやってきて、ある疾患が疑われ、専門医に診察をお願いします。それだけだと「丸投げだ」と怒られることがあります。なので、例えば、ある疾患になりやすいリスクファクターがないかどうか、画像診断をしてあるかどうかなどが大切になります。

 しかし、専門でない者には、そのある疾患にどんなデータが大切なのか?分からない事があります。画像診断や採血も、どのような検査をしたら良いのか分からない事があります。しかし、専門医はそれが専門だからよく分かります。相談されたら、それらの指示をしたら良いだけです。よって、皆さんが専門医になったら、是非快く、後はこちらでやりますと言うようにしましょう。

 そうでなければ、コンサルトをしてきたお医者さんは、嫌な気分になり、次からは相談してこない可能性があります。そうなって患者さんに不利益が及んだ場合、それはコンサルトをしなかった医師だけが責められるべきでしょうか?コンサルトをしやすい雰囲気を作っていない専門医や病院に問題はないのでしょうか?

 採血ぐらいやっておいてよ!と言われることがありますが、採血には特別なスピッツ(血液を入れる容器です)が必要な場合があります。先に採血してからコンサルトした場合、多くは検査室に連絡して追加をお願いすればいいですが、特別なスピッツが必要だった場合には、再度患者さんから採血しなければなりません。再度針を刺される患者さんのことを考えなくて良いのでしょうか?

 画像についても同じです。学生時代に授業でそういう話がありました。あなたが開業した場合、安い機械で撮影することになると。その検査で異常がなかったと言っても、本当に異常がないかどうかあやしく、専門医を受診した場合、再度同じ検査をすることになるだろう。検査と言うのは機械だけでなく、どのように検査をするかと言う設定も色々あるのである。最初に行った検査のお金と、例えば放射線被爆はなんの意味があるのか?

 なので、個人的には専門医に丸投げしていいと思います。コンサルトを受ける側は、必要なデータがあればその場でオーダーし、本当に必要であれば、その先生に「次回からはこれとこれをやっておいてください」と伝えればいいのです。「丸投げするなよ!」と言っても良いことは何もありません。明日逆の立場になるかもしれないのですから。

 マッシー池田先生もブログで同じようなことを言われています。くも膜下出血を疑ったら、すぐに脳外科コンサルトだと。以下引用です。

 紹介元であるあなたの施設でCTを撮影したとしても、その結果如何にかかわらず、紹介先の脳神経外科では、SAHをより鋭敏に捉えるために、造影CTも含めて撮影条件を工夫してCT取り直すことはわかりきっている。なのにあなたが余計な手間隙をかけている間に再出血でもされたら、それこそ元も子もなくなってしまう。真っ当な脳神経外科医であれば、たとえ腰椎穿刺までやってSAHが否定されたとしても、患者さんとともにSAHでなかったことを喜ぶとともに、どんな軽症のSAHも見逃さないとするあなたの熱意を、患者さんの目の前で誉めてくれるはずだ。だから、SAH疑いの症例に対し、プライマリケア医自身が、動脈瘤再破裂のリスクを伴う腰椎穿刺を行う必要性は全くない。いち早く脳神経外科医に転送するだけで十分である。

 もちろんですが、本当にこのような対応をして、褒めてくれる脳外科の先生に会ったことはありません。CTぐらいは撮像しますが。

 ただ、検査が異常ないからと言って重大な病気を否定すると言うことこそ最もやってはいけないことですし、そういう条件の時こそ、専門医の力量が試されます。だからこそ専門医に相談しているわけですから、「検査が異常ないなら返していいんじゃないの?丸投げですか?」等と言わないでくださいね。

 専門医になった時には、是非快く患者さんを診ていただければうれしいです。

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当直開始時に気をつけること [研修医教育]

 当直業務は出来ればやりたくない物の一つです。人が休みの時に病院に出てきて、救急患者さんに対応しなければなりませんし、だいたい休日は人手が足りず、色々な面で不利です。

 病院は休みがありません。毎日患者さんがやって来ます。しかし、働くスタッフには休みが必要です。よって、病院は基本的には平日は大きな事(通常の会社などと同じような仕事?)を行い、土日には緊急のことだけを行います。しかし、土日に充分なスタッフを配置することは不可能なので、どうしても土日は人手不足です。

 しかし、当直は誰かがしなければなりません。その当直に自分が当たった場合の注意点です。今回は当直をするために病院に来た時にまずやることです。

 以下の本の91例目は、そのような状況の中で起こった失敗例が書かれています。この研修医当直御法度は、赤本、青本と呼ばれていて、日本で一番売れている医学書の一つだと思います。「研修医」と書いてありますが、全ての医師、医療従事者が読むべき本だと思います。読んでいない方は是非お読みください。


研修医当直御法度 百例帖 第2版

研修医当直御法度 百例帖 第2版

  • 作者: 寺沢 秀一
  • 出版社/メーカー: 三輪書店
  • 発売日: 2013/01/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 腹痛で日曜日の早朝に来院された患者さんを当直医が入院させました。朝出勤してきた日直の医師に引き継ぎをしたのですが、日直の医師は救急外来が忙しくて病棟に入院したその患者さんを診に行けず、月曜日になった穿孔性虫垂炎だと言うことが分かり、緊急手術になったと言うお話です。

 色々難しいですが、出勤したら、引き継ぐべき患者さんはいないのか?をまず確認するのが良いと思います。そして、そのような患者さんがいたら、最初に診に行くべきでしょう。そうでなければ、新しくやって来た救急患者さんにしか気を配ることが出来なくなってしまいます。

 色々意見はあると思いますが、私は当直開始の30分以上前に病院に来るようにしています。そして、当直明けは休日を楽しむことは出来ない(例えば8時半に当直業務終了とあったとしても、その後何時間も家に帰れない可能性がある)ことを覚悟しております。


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輸液ポンプか?シリンジポンプか?それが問題だ [研修医教育]

 重症な患者さんなどに対して、微量かつ正確に薬を注入しなければならない場合、輸液ポンプと言うものを使います。知りませんでしたが、シリンジポンプも輸液ポンプの仲間だそうで、正確に言えば、滴数制御型輸液ポンプとシリンジポンプだそうです。

 今からあなたは、受持患者さんに「ノルアドユキリン」と言う架空の薬を投与するとします。この薬は1ug/kg/minと言う速度で投与することが推奨されており、3mg/mLつまり0.3%の製剤が発売されています。さて、輸液ポンプの設定は「ml/時」と言う設定項目があります。よって、0.3%の製剤を時間何mlで投与すれば、1ug/kg/分になるのかを計算しなければなりません。これについては別に記事を書きましたのでご覧ください。

 ノルアドユキリンは、計算すれば、1ml/時と言う設定にすれば、推奨された速度になります。よって、1時間かけて1mlを注射する速度で薬液を投与すれば良いです。

 その為に滴数制御型輸液ポンプを使うべきか、シリンジポンプを使うべきか?と言うのが今日のテーマです。

 一般的には、シリンジポンプの方が正確に薬を投与できるそうです(そのように作らなければならないようです)。よって、シリンジポンプを使うことになりますが、問題点が3つあります。

・シリンジポンプは50mlの注射器までしか使えない(と思います)。
 よって、ノルアドユキリン注射液は0.3%溶液で、200mlのソフトバックに入った製剤ですので、バックから注射器に薬液を吸わなければなりません。はたして、清潔に注射器に吸うことが出来るのか?そして、バックに残った150mlの点滴はどうするのか?と言う問題があります。
・流量が増えた場合、交換が頻繁になります。
 血圧がなかなか上がらず、注射液の投与速度が1ml/時から10ml/時に増えた場合、50mlの容量しかないのですから、5時間で薬がなくなってしまいます。5時間毎に看護師さんが注射器を交換しなければなりませんし、その時に注射液が投与されず、血圧が下がってしまうかも知れません。
・シリンジポンプは無限にあるわけではありません。
 値段がいくらするのか分かりませんが、ネットで検索した限りでは20万円以上します。どの患者さんにもシリンジポンプをと言う訳にはいきません。

滴数制御型ポンプにすれば?


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乳酸リンゲル液なんて使いやがって!と言われたら。 [研修医教育]

 救急隊員の方は条件を満たせば(救急隊員の方が資格を持っている場合かつ患者さんが適応の場合)点滴をすることが出来ます。病院に着いてから点滴をするよりも有用な場合があるからです(この点については、議論が多いのですが)。

 しかし、点滴製剤としては乳酸リンゲル液以外認められていません。そして全開投与が原則です。この場合の全開とはクレンメ(点滴の速度を調節するつまみ)を最大に開放し、点滴を救急車の天井にぶら下げることです。規則でそう決まっているのですが、それを知らない医療スタッフから、「こんな心臓が悪い人にナトリウムが多い輸液を、それも全開でやって来るなんて!」とか、「透析患者なのに何故カリウム入りの物を投与してくるんだ!」とか言われることがあるようです。

 もしそう言われた場合には、この記事と私の写真を見せると良いと思います。私は顔が怖いと言われていますので(^^)。

乳酸リンゲル液でいい理由を述べます。


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つるし上げカンファレンスはやめましょう [研修医教育]

 医師の仕事の一つにカンファレンスがあります。医療ドラマでも必ず出てきますから、みなさん、おなじみでしょう。ドラマではイケメン、美女の医師が大人数おられますが、実際はもっと少人数な事が多いです。

 喧嘩みたいなことが発生する場面がドラマでありますが、実際のカンファレンスでもそのようなことがあります。特に研修医の先生がミスをした患者さんの場合です。なぜそれをやってない?なぜ?なぜ?と質問形式ではありますが、攻めているのは明らかです。こういうのをつるし上げカンファレンスと呼んでいるようです。私も幸い経験がありませんが、このようなカンファレンスは教育的意味はほとんどないと思いますので、是非やめましょう。罪を憎んで人を憎まずで、間違いを皆で共有はするけれど、やってしまった人は、自分の変わりにミスをしてくれた人だと思うようにしなければなりません。

 例えば、先日紹介させていただいた本にありました。


話すことあり、聞くことあり—研修医当直御法度外伝

話すことあり、聞くことあり—研修医当直御法度外伝

  • 作者: 寺沢 秀一
  • 出版社/メーカー: シービーアール
  • 発売日: 2018/06/15
  • メディア: 単行本


 上腹部痛の患者さんが来院され、実は心筋梗塞だったのだが、見逃したと言う症例についてのカンファレンスで、上級医の一人が「なぜ心電図をとらなかったの?」と質問でありながら攻めるような言葉を。「そんなこと言っても意味がない」と言えばいいのかと私は思いましたが、そう言うと、今度はその指導医を攻めることになってしまいます。

 著者の寺澤先生は違います。「そりゃあ、心電計が壊れていたんだよね!」と言うのだそうです。素晴らしすぎます!確かに担当した研修医の先生は、心電図をとらなければならなかった事を十分反省しているでしょうからね。

心筋梗塞と腹痛の関係について知りたい方はこちらを。


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お前はまだガンマを知らない [研修医教育]

 タイトルは間違いではありません。「お前はまだグンマを知らない」を参考にしています(^^)。群馬でしかやっていないテレビ番組かもしれません。GYAOで無料でみられますので、良かったら是非ご覧ください。

 今の時期、1年目研修医の先生や看護師さんたちを悩ませるものの一つに「ガンマ」というのがあります。群馬と似ているのでなんとなく愛着があります。正確には「ug/kg/min」という単位です。血圧を上げたり、下げたり、その他半減期が短い薬を持続で少量投与する場合に、このような単位で投与量を設定します。そして、ゆっくりと点滴を投与できる輸液ポンプやシリンジポンプと言う器械を使って投与します。

 「体重50kgの人にノルアドレナリンを0.1ガンマから開始して」などと指示が出るのですが、ノルアドレナリンは1ml中に1mg入ったアンプルがあるだけです。それをどうやって、どんな速度で投与するのか?これを決める必要があり、それに慣れていないと頭がこんがらがってしまい、新人医療スタッフは毎日ガンマに悩まされるのです。

 先に私のやり方を。ノルアドレナリンなら2Aを生食20mlで薄めて、20mlの注射器に入れて、シリンジポンプで時間3mlから開始します。これで体重50kgの人なら0.1ug/kg/minで0.1ガンマです。でも、体重が30kgの人でも100kgの人でも同じように指示しています。

どうやって決めたらいいのでしょう?


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自分の働いている環境は非常に恵まれているのだと認識しましょう。 [研修医教育]

 Facebookでお友達になっている救急隊の方が言われていました。軽症と思われたのですが、重要臓器の損傷が疑われた患者さんを、ある三次病院に搬送したら、「なんでうちなの?二次(病院)でいいでしょ!」と嫌みを言われたのだそうです。

 また聞いた話ですが、救急車で転送されてきた患者さんに付き添ってこられた開業医の先生に対して、その病院で働いていた研修医が、「なんでこんな心電図も分かんないの?こんなの救急車で来る必要ないでしょ!」等と言ったそうです。

 その先生たちには、ぜひ救急診療指針の第5版(最近出たばかりです)P.19に書かれていることをしっかり読んでいただきたいです。以下引用します。

「病院前救護の段階において、救急車を呼ぶかどうかの判断や重症度の判断は、患者個人やその家族・同僚などと救急隊に委ねられている。医療従事者でない患者や、十分な検査を行うことが出来ない病院前救護での救急隊による観察では、どうしても病態を重症気味に判断(オーバートリアージ)して搬送されてしまうのは自然の成り行きであり、病院で働く医師や看護師はそれを容認しなければならない。したがって、たいした病状でなくても「何でこんなことで夜中に病院に来るんだ!」とか「なぜこんな患者を三次病院として搬送してくるのだ!」などと、患者やその家族、救急隊に対して叱責するようなことをいってはならない。これは救急医療に従事する際のご法度であり、この一言のために患者やその家族、救急隊との人間関係の崩壊につながりかねない。」

 確かに三次病院の先生の立場も分かります。何でもかんでも三次病院に送られてきたら、重症、あるいは専門治療が必要な患者さんに技術や知識を集中できません。三次病院でなくても対応できる患者さんは二次病院へ運んでもらいたい、そう思うでしょう。

 しかし、三次病院以外でしか働いたことがない者としては、やはり三次病院でなければ対応できない損傷や疾患があったら不安だと言うのがあります。その気持ちも理解していただけたら幸いです。

 これぐらいそっちで診ろよって言われても、同じ言葉を返したくなります。忙しいのはみんな同じです。二次病院が暇だと言うことは決してありません。また、開業医の先生も同じです。みんなそれぞれ忙しいのです。それぞれの立場で全力でがんばっています。

 例えば交通事故で意識レベルが低下していると言う患者さんがいたとします。意識レベルの低下は内科的な疾患かもしれませんし、軽い脳震盪かもしれませんし、高齢者でもともと認知症があって、意識レベルは低下していないのかもしれません。だから一次か二次で問題ないと三次病院に勤めていれば思うでしょう。しかし、あなたはそれの(この場合意識障害)専門であるから一次でも二次でもと思うわけです。三次病院以外で働いていると思います。もし脳出血があったら、そして初期対応を間違って患者さんに不利益を与えてしまったら、うちの病院へ一度来ることで時間的なロスをきたしたら、そもそも、脳に損傷があることを見逃してしまったら?などなど色々な不安があります。

 また、そういった一次、二次病院にはスタッフが少なく、その患者さんだけ診ていればいいと言うことはありません。次々と軽症ではあるのですが、他の患者さんが来るかもしれません。その合間に専門外で重症の可能性がある患者さんを診なければならない不安、、、、、、、採血もレントゲンも撮れないかもしれません。すぐ気軽に相談できる専門医は常勤で勤めていない、、、、、、、、三次病院はそれらのすべてがそろっているわけです。二次病院の46倍は有利でしょう、、、、、たぶん。

 三次病院で働いていると言うことは、それだけで医療従事者の中では激しく有利な環境で働いているのだと言うことをご理解いただければ幸いです。

 もし、本当に三次病院で対応する必要のない状態だと診断された場合、二次病院へ転送すればいいのではないでしょうか?私だったら、三次病院で問題ないと診断されていたり、必要な処置を行われた後の対応であれば、すごく安心できます。実際三次病院から骨盤骨折の止血後当日の患者さんを引き受けたことがありますが、安心して診療が出来ました。

 救急の現場ではオーバートリアージを許容しなければなりません。三次病院に運んで、結果的に何もなかった場合、何でこんな軽症を運んでくるんだ!ではなく、「何もなくてよかったですね!」と言える環境、気持ちを持ちたいですね。


救急診療指針

救急診療指針

  • 作者: 日本救急医学会専門医認定委員会
  • 出版社/メーカー: へるす出版
  • 発売日: 2018/04/01
  • メディア: 単行本




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点滴にブドウ糖を入れるのは何故か? [研修医教育]

 ご飯が食べられない患者さんなどには、3号液と呼ばれる輸液製剤が投与されます。救急科の研修に来られた研修医の先生に、「何故ブドウ糖が、それも5%程度入っているのか?」と質問するのですが、答えられる先生はあまりいません。

 これは研修医の先生が悪いのではなく、医学教育の問題です。卒前教育つまり医学部の教育、それから卒後教育つまり初期研修の両方です。指導医でも知らない人がいますので。私は幸いにして研修医の時に点滴に詳しい先生に教わったので、ちゃんと覚えています。

 知らないことは罪ではないので、今まで顔は怖い(と言われています(T_T))ですが、優しく言葉でお伝えしていた(つもり)のですが、ちゃんと書かれた文献を見つけましたので紹介します。

 日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会による日本版重症患者の栄養療法ガイドラインのP.234に書かれています。以下引用です。

 「肝臓で貯蔵されているグリコーゲンは400kcalであり、2日以内に枯渇する(筋肉に貯蔵されているグリコーゲンは筋肉内でのみ消費される) 。以後、体蛋白を節約し内因性脂肪を燃焼させるには、TCAサイクル中のオキサロ酢酸が必須であり、そのためには、最低限400〜600kcal/day(ブドウ糖100〜150g/day)を投与することで30%の体蛋白の構成成分である糖原性アミノ酸消費が抑制できる。その効果を期待して侵襲時にもブドウ糖で100〜150g/dayの投与が必要とされる。」

 患者さんを絶食にすると、外からブドウ糖が入ってきません。ブドウ糖がなければ生きていけない臓器がいくつかあって(脳、赤血球、副腎髄質だったと思います)、ブドウ糖が入ってこないのであれば、その臓器のためにブドウ糖を作る必要があります。その時に、タンパク質を分解して作ってしまうと、身体が弱ってしまいます。よって、出来るだけタンパク質の分解を少なくする必要があり、その為に最低100g/日のブドウ糖が必要と言うことです。また、この目的のためであれば、ブドウ糖を1日200gl投与しても、蛋白の分解抑制効果は増えるわけではないそうです。

 ブドウ糖1gは4kcalの熱量に相当するので、ブドウ糖を1日100g投与すれば、1日で400kcal投与したことになります。

 5%ブドウ糖溶液は、50g/Lのブドウ糖を含みます。よって、ブドウ糖を5%含んだ溶液を1日2000ml投与すれば、1日100gつまり400kcal投与されます。点滴は1日2000ml程度入れますから、濃度が5%程度になっているというわけです。何故かソリタT3は4.3%と薄めになっています。他に電解質なども入れるため、浸透圧を出来るだけ下げるためにブドウ糖の濃度を下げるのですが、ブドウ糖は出来るだけ5%に近づける努力の結果なのでしょう。
 水分を制限するために、点滴を1500mlとか1000ml/日にする場合には、ブドウ糖をもう少し濃くする必要があるかも知れませんね。その為にソリタT3Gとか、10%ブドウ糖の溶液があるのでしょう。

 噂では3号液などの点滴は日本にしかなく、諸外国ではブドウ糖と生理食塩水などを使って医師が自分で処方を考えるのだそうです。日本は「じゃあ3号液で」「透析患者さんなので4号液で」とか言えば良いので、点滴の組成をどうすべきか?その前に、そもそも、どうやって蘇生を決めればいいのか?を考えなくて済んでしまうので、点滴について勉強しない医師がいる原因の一つになるのかも知れませんね。


日本版 重症患者の栄養療法ガイドライン 総論2016&病態別2017 (J-CCNTG) ダイジェスト版

日本版 重症患者の栄養療法ガイドライン 総論2016&病態別2017 (J-CCNTG) ダイジェスト版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 真興交易医書出版部
  • 発売日: 2018/02/22
  • メディア: 単行本



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インスリンを投与する場合、回路への吸着についても考慮しましょう [研修医教育]

 入院患者さんにはインスリンを投与することが多いです。通常は皮下注射などですが、重症な患者さんだと点滴でインスリンを使うことがあります。

 点滴に使う回路にインスリンが吸着して充分な投与が出来なかったり、逆に急にたくさん体内に入ってしまったりと言うことがあるのをご存じですか???

 点滴にビタミン剤を入れておくと、インスリンの吸着率が低下するそうです。回路への吸着が阻害されるのと、回路からの解離を促進するためのようです。

 よって、ビタミン剤を入れていない点滴にインスリンを入れていたとして、その後ビタミン剤入りの点滴に変えると、点滴回路に吸着していたインスリンが回路から離れてくるのだそうです。実際、ビタミン剤なしからありに変更したところ、インスリンの濃度が急上昇したというデータがあるようです。

 ビタミン剤の投与量は少なくても良いようなので、1000mlの点滴にビタミン剤を交互に入れて落とす(1日2000mlの点滴)ような場合には、ビタミン剤を半分ずつ日本の点滴に入れるようにするといいかも知れません。

 また、アルブミンを一緒に入れるとインスリンの回路への吸着を抑制すると言われていますが、やはりその為だけにアルブミンを使うのは、あまり良くないですよね。アルブミンを入れる人であれば、インスリンを混ぜてゆっくり持続静注するのは良いかも知れません。


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