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低ナトリウム血症を示していたのに、本当は高ナトリウム血症だった症例 [医学関連]

 数日前からの続きです。今回はこちらの症例報告を紹介します。文献のケース4です。

 簡単に書くと、糖尿病性ケトアシドーシスで来院された患者さんが低ナトリウム血症を示していたのだが、本当は著明な高ナトリウム血症であったというものです。

 6歳の男児。糖尿病で治療中だった。腹痛と嘔吐が2週間続き、意識障害をきたしたため来院。明らかな脱水所見(これはhypovolemiaと思います。文献にはdehydrationとあるのですが)あり。
 来院時の血液検査でNa86、K2.7、BUN18、クレアチニン6.3、血糖666mg/dL、浸透圧415mmol/L。生理食塩水の点滴、インスリン投与で治療を開始ししたが、33時間後に脳出血を起こして死亡。
 初診時の採血で総コレステロールが1598mg/dLと著明に上昇していたが、これと低ナトリウム血症の関連について考慮されなかった。


この症例から学べることは?


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高脂血症や高タンパク血症がある場合のナトリウムの補正式 [医学関連]

 偽性低ナトリウム血症という名前の病気?があります。本当の病気ではありません。血液検査でナトリウムを測定したところ低値を示しているのですが、これは検査のエラーであり、患者さんの体内のナトリウム濃度は正常だという病態です。当然ですが、低ナトリウム血症をみた時に、必ず除外しなければなりません。偽性低ナトリウム血症は治療不要ですので。

 結論から先に言うと、これは高脂血症や高タンパク血症で認められる(それも激しい場合)ものです。理屈を説明するのは私には難しいのですが、こちらの文献を読んでいたければ幸いです。蛋白や脂肪は浸透圧には影響せず、また水分ではないと言うことのようで、蛋白や脂肪が増えると分母が増えるからナトリウム濃度が低下する(ように見える)と理解すれば良いかも知れません、、、、、、知らんけど。

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 さて、先ほどの文献にはナトリウム値の補正係数が載っています。

 脂質異常症;TG460mg/dLの上昇につき1mEq/Lの低下
 高蛋白質血症;TP1g/dLの上昇につき1〜1.5mEq/Lの低下

 相当の異常でなければ問題とはならないでしょうね。最大でもNaが2mEq/L低下する位でしょうか。血液疾患とか代謝異常の患者さんを良く診る先生は、もっとすごい異常があるのかも知れませんね。例えば、総コレステロールが977mg/dL (その時のNaは129mmol/L)4091mg/dL(Naが101mmol/L)という報告があるようです。

他の補正式を知りたい方はこちら。


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腎不全の患者さんにおける浸透圧正常の低ナトリウム血症は偽性低ナトリウム血症か? [医学関連]

 久しぶりの更新です。少し長文です。

 今回は浸透圧が低くない低ナトリウム血症についてです。一般的にナトリウムが低くても浸透圧が正常、あるいは高ければ、ナトリウムに対する治療は不要です。ナトリウムが低い場合に問題となるのは血清浸透圧の低下によって細胞内の水分が増え、特に脳浮腫をきたすことが問題だからです。浸透圧が正常なら脳浮腫は起こりません(電解質などの異常によって)。

 しかし、ややこしいことに、BUNが高い場合には注意が必要です。つまり腎不全があって低ナトリウム血症がある場合です。

 最初に浸透圧について簡単に説明します。
 細胞膜は半透膜という特殊な構造になっており、自由に出入りできる物質と、そうでない物質とがあります。細胞膜を自由に出入りできない物質(有効浸透圧物質と呼ばれているようです)が細胞外で減ると、浸透圧に差が出来、細胞外の浸透圧が低くなります。すると浸透圧を一定にしようと、浸透圧の差がなくなるまで細胞の外から中に水が移動します(水は細胞膜を自由に出入りできます)。そうすると細胞の容積が増えます。細胞膜を自由に出入りできる物質が細胞外に増えても、その物質が細胞内に入るだけで、水分の移動は伴いません。
 浸透圧は有効浸透圧物質だけで作られるのではないため、有効浸透圧物質だけで計算した浸透圧を張度(tonicity)と呼びます。一般的には以下のように求めます。

浸透圧=2×血清Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)÷18+BUN(血清尿素窒素)÷2.8
張度=2×血清Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)÷18

 窒素(血液検査では尿素窒素として測定します)は細胞膜を自由に通過するため、張度には影響しません。また、浸透圧は直接測定も出来ます。一般的には計算で求めた浸透圧と測定した浸透圧はほぼ同じです。

 さて、いつものように、水戸のご老公、つまりUpToDate "Causes of hyponatremia without hypotonicity (including pseudohyponatremia)"(日本語は「張度低下のない低ナトリウム血症(偽性低ナトリウム血症を含む)の原因」)からです。最近読んだ資料で、原文はもちろん、日本語訳を載せるのも著作権上ダメみたいなので、今回からは私のまとめだけ。

勉強したい方はこちら。


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