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少量の血液で癌の診断が出来ることがいいことなのか? [医学関連]

 詳しくは知りませんが、血液検査で癌の可能性が分かる検査が出来たそうです。すごいことだと歓迎の意見もありますが、、、、、、、、

 検査は、偽陽性というのがあります。健診で行う場合には、この危険性を考えておく必要があります。つまり、特に健康で何も問題ない人で癌の血液検査をしたところ、何かの癌があると思われる(そう言う結果であることが多いです)と判定されたとします。色々な精密検査をしたのが異常が見つからず、例えば20年後も癌が見つからなかった場合、良かった良かったとなるかと言えば、患者さんの不安は20年間続くし、その後も続くかも知れません。また、精密検査をしたことで重大な合併症を受けるかも知れません。とすると、その健診の検査は受けない方が良かったのではないか?となるわけです。

 例えば、1000人に一人の人がかかる病気があるとします。確率は0.1%ですね。検査をするとその可能性が変化します。検査が陽性(病気がある可能性が高い)となった場合、その可能性がいくらになるのか計算してみましょう。検査の精度は感度と特異度で表されます。ある集団(例えばA市の住民全員)で、あらかじめ別の方法で、その病気の患者さんの数を調べます。そして、その検査を全員に行い以下のような表を作ります。

      病気がある 病気がない
検査陽性    a     b
検査陰性    c     d

 感度は病気がある人のうち検査が陽性になった人の割合(a/a+c)で、特異度は病気がない人のうち検査が陰性だった人の割合(d/c+d)です。
 本来は、検査が陽性(あるいは陰性)だった場合の病気の確率(つまり横)を知りたいわけですが、縦のデータしか出せません。目の前にいる患者さんでは、横の確率は不明です(よって、予測するしかない)。このデータでは、A市民のデータを持ってきていますが、目の前にいる患者さんが同じ確率であるとは限りません。
 しかし、他にデータがなければ、0.1%の可能性とします。そして0.1%だった可能性は、感度、特異度ともに0.9という非常に優秀な検査だったとして、検査が陽性だった場合、0.9%に上昇します(計算法を知りたい人は調べてください)。1000人に一人の確率が100人に一人弱の確率に上昇していますが、99人の人は検査が陽性でもやはりその病気ではありません。0.9%と言う数字が高いと感じるか、低いと感じるか?これは皆さんの感覚にかかっています。そして、100人中99人の人に不安と検査の負担を与えてしまうと言うことです。それでも100人中1人を救うためなのだ!というのが健診の意義なのですが、、、、、、、、

 検査をしても、頻度は低く、検査の意味があるのだろうか?と考えてしまいます。もちろんですが、検査が陰性だと可能性は0.009%に低下し、少ないという意味では、検査前と可能性はあまり変わらないと思います。

 まとめると、もともと頻度の低い病気の検査を健診などで行う意義は低いと言う事です。ただ、画像検査は形として病気の診断が出来ますので、意義が少し違います。内視鏡やCT、エコーなどは定期的に行うことをお勧めします。

 医者は、こんなことを考えながら(細かい計算は毎回しませんが)患者さんとお話ししています。


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インフルエンザの診断をするのは検査キットではなく医者です [医学関連]

 多くの方に知ってもらいたいと思い、記事を書きました。

 タイトルの通りです。現場では色々なトラブルというか、言い合いというか、、、、、、が起こっています。以下のようなことがあります。

 インフルエンザの検査をしないという医師に対して、患者側が「何故しないのか!」
 インフルエンザの検査が陽性であっても、抗インフルエンザ薬を処方しないと言われたので、患者側が「何故薬をくれないんだ!」
 インフルエンザの検査が陰性なのに、薬を出すと言われて、「何故薬を飲まなければならないのか?」

 病気の診断をするのは、簡単なようで実は難しいのです。医師は学生の時から、医師になってからの初期研修はもちろん、一生診断について勉強をし続けています。そして、診断が一番難しいと知っています。実は、検査データが一番くせ者なのです。

 細かいことは一冊本が書けるほどの事なので、一般の方は知らなくても良いですが、検査は異性を顔だけで判断しているようなものだと考えてください。顔が好みだと言うだけで、その人を結婚相手に出来ますか?あるいは、顔が好みじゃないと言うだけで、結婚を申し込まれたのだが断りますか?インフルエンザの診断で、検査をしないのはおかしいとか、結果が陽性なのにうんぬんというのは、人を見た目だけで判断しているのと同じなのです。と言うか、本来熱が出る病気はたくさんありますので、インフルエンザではない人も多くいます。

 よって、診断は医師にお任せ頂ければありがたいです。もちろん、疑問があれば質問をして頂けばお答えできます。

少し解説します。


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救急隊員の方は研修医とは違います [救急救命士について理解を!]

 今年初めての投稿です。今年もよろしくお願いいたします。

 あるSNSで、救急隊に何度指導しても理解されないので、もうあきらめたみたいなのを見つけました。二つの点で違います。

一つ目
 何度言っても理解されないのは、分かってもらいたいことが伝わっていない可能性が高いです。ビリギャルの本には、500回言った人だけが、「何度言ったら分かるんだ!」と言う権利がある(つまり、それは言ってはいけない)と書かれていました。必要なら、何度でも初めて伝えるように、伝えましょう。
何度言ったら分かるんだ!と言われて、そう言えばこの前言われたなあ?と反省できる人は少ないと思います。言われたことすら忘れている人の方が多いのではないでしょうか。お互いイヤな気持ちが残るだけです。「大切なので、次からはこうしてください」と言うようにしたいですね。相手に伝わっていなければ意味がないんですから。伝わるように、伝わるまで頑張りましょう。

二つ目以降はこちらを。


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