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虫垂炎と診断したら抗菌薬治療でいいのか? [医学関連]

 虫垂炎の保存的治療については議論があるのですが、最近の文献では、合併症のない単純虫垂炎(腹膜炎や膿瘍などがない)では保存的治療を第一選択とするべきだというものが増えてきています。

 例えば、最新のNew England Journal of Medicineの文献(N Engl J Med 2021; 385:1116-1123、DOI: 10.1056/NEJMcp2107675)には、糞石のない単純性虫垂炎にはメトロニダゾールとセフトリアキソンか、メトロニダゾールとカルバペネムを静注し、その後セフゾンの内服という方法が良いと書かれています。カルバペネムを虫垂炎に使うとか、吸収率が悪いからほとんど使うべきでないと言われている第三世代のセフェム系抗菌薬が推奨されるなんてのもビックリ(腸管内から抗菌作用が届くと言うことなのでしょうか)です。

 しかし、本当に抗菌薬治療でいいのか?については、良く考えなければなりません。UpToDateの"Management of acute appendicitis in adults(成人の急性虫垂炎の治療)"と言う文献(この文献の最終レビューは先月なので、さっきの文献はまだ読まれていないと思いますが)には以下のようにあります。

 Despite evidence that antibiotics alone may be sufficient for managing the initial presentation of appendicitis, we suggest against its routine use for adult patients presenting with uncomplicated appendicitis. We feel that its routine application in clinical practice is premature because of many unanswered questions (eg, patient selection, recurrent attacks, and missed neoplasm).

 以下は私の下手な日本語訳です。

 抗菌薬のみで急性虫垂炎の初回治療を行うことは有用だというエビデンスがあるが、我々は単純性虫垂炎に対してルチンに抗菌薬のみの治療を行うことに反対である。どのような患者に治療を行うべきか、再発したらどうなのか、腫瘍の見逃しはないのかなど、多くの未解決の問題があり、急性虫垂炎の初回治療としてルチンに抗菌薬治療を行うことは時期尚早だと考える。

 私の意見などどうでも良いのですが、私も手術をした方が良いと思います。1つ知っておかなければならないことは、アメリカでは虫垂炎の手術をすると200万円以上の治療費がかかります。日本ではその10分の1です(自己負担はもっと少ない)。抗菌薬治療をした方が有用だという理由の一つに、手術をするより費用の面で安く済むというのがありますが、それは日本でも同じなのか分かりません。

 一瞬こちらの本に書かせていただいた内容を変更しなければならないのか?と思いましたが、変更しなくても良さそうです。





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