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腎不全の患者さんにおける浸透圧正常の低ナトリウム血症は偽性低ナトリウム血症か? [医学関連]

 久しぶりの更新です。少し長文です。

 今回は浸透圧が低くない低ナトリウム血症についてです。一般的にナトリウムが低くても浸透圧が正常、あるいは高ければ、ナトリウムに対する治療は不要です。ナトリウムが低い場合に問題となるのは血清浸透圧の低下によって細胞内の水分が増え、特に脳浮腫をきたすことが問題だからです。浸透圧が正常なら脳浮腫は起こりません(電解質などの異常によって)。

 しかし、ややこしいことに、BUNが高い場合には注意が必要です。つまり腎不全があって低ナトリウム血症がある場合です。

 最初に浸透圧について簡単に説明します。
 細胞膜は半透膜という特殊な構造になっており、自由に出入りできる物質と、そうでない物質とがあります。細胞膜を自由に出入りできない物質(有効浸透圧物質と呼ばれているようです)が細胞外で減ると、浸透圧に差が出来、細胞外の浸透圧が低くなります。すると浸透圧を一定にしようと、浸透圧の差がなくなるまで細胞の外から中に水が移動します(水は細胞膜を自由に出入りできます)。そうすると細胞の容積が増えます。細胞膜を自由に出入りできる物質が細胞外に増えても、その物質が細胞内に入るだけで、水分の移動は伴いません。
 浸透圧は有効浸透圧物質だけで作られるのではないため、有効浸透圧物質だけで計算した浸透圧を張度(tonicity)と呼びます。一般的には以下のように求めます。

浸透圧=2×血清Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)÷18+BUN(血清尿素窒素)÷2.8
張度=2×血清Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)÷18

 窒素(血液検査では尿素窒素として測定します)は細胞膜を自由に通過するため、張度には影響しません。また、浸透圧は直接測定も出来ます。一般的には計算で求めた浸透圧と測定した浸透圧はほぼ同じです。

 さて、いつものように、水戸のご老公、つまりUpToDate "Causes of hyponatremia without hypotonicity (including pseudohyponatremia)"(日本語は「張度低下のない低ナトリウム血症(偽性低ナトリウム血症を含む)の原因」)からです。最近読んだ資料で、原文はもちろん、日本語訳を載せるのも著作権上ダメみたいなので、今回からは私のまとめだけ。

 BUNが上昇している場合、血清浸透圧の測定値と張度の差が大きくなります。これを知っていないと、腎機能障害のある患者さんの真の低ナトリウム血症を、直接低ナトリウムの治療が必要のない低ナトリウム血症(浸透圧が低くないため)としてしまう可能性があります。腎機能障害患者さんでは、水分排泄能が低下し、真の低ナトリウム血症をきたすことがあります。その際、血清ナトリウムが低下しても、様々な調整が働いて血清浸透圧が正常となることがあるためです。

 腎機能障害と低ナトリウム血症を伴う患者さんでは、浸透圧の代わりに張度を計算します。

 また、真の低ナトリウム血症があるのに、測定された血清浸透圧が正常あるいは上昇していることは、アルコール依存症の患者でもよく認められるそうです。エタノールも尿素と同様に無効な浸透圧物質です。

 腎不全があって低ナトリウム血症をきたしており、浸透圧が正常な人は、直ぐに低ナトリウム血症の治療を開始すべきと言うことではありません。大事なのは浸透圧の低下なのですから。ただ、例えば出血性ショックなどで来院された患者さんでBUNが高く、Naが低く、浸透圧が正常か上昇している人がいたら、出血性ショックの治療後に、低ナトリウム血症の治療が必要になるかも知れないと言うことです。

 長くなったので明日又別の記事をアップします。

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