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昨日の症例報告をStewart法で解析 [医学関連]

 昨日の患者さんをStewart法で解析してみます。やり方はまだよく分かっていないのですが、以下の本に従いました。


酸塩基平衡の考えかた: 故(ふる)きを・温(たず)ねて・Stewart

酸塩基平衡の考えかた: 故(ふる)きを・温(たず)ねて・Stewart

  • 作者: 丸山 一男
  • 出版社/メーカー: 南江堂
  • 発売日: 2019/02/23
  • メディア: 単行本



 まずナトリウムとクロールは血液生化学検査のデータを用います。

(1)Na-CLを求めます。
 Na-CL=137−97=40
 正常値は36程度なので上昇しています。また40以上は通常代謝性アルカローシスがあると考えます。こちらの文献をご覧ください。
(2)SID(strong ion difference:強イオン差)を求めます。
 SID=HCO3+2.8×Alb(g/dL)+0.6×リン(mg/dL)
 SID=19.56で低下しています(リンは正常の3と考えました。上がっている可能性も高いですが、0.6をかけるので、6だったとして2弱上昇するのみです)。
(3)SIDギャップを求めます。
 SIDギャップ=Na-CL−SID=20.44
 正常値は±2程度で、こんな増えているのは初めて見ました。これは酸の増加を示します。これだけで酸の増加による代謝性アシドーシスと診断できます。
(4)PCO2の評価
 PCO2=HCO3+15
 PCO2=HCO3+15=8.8+15=23.8
 測定値の19.6より高いので呼吸性アシドーシスがあると考えます。これについては色々意見があるとは思いますが、本の中ではどの計算をしても大きな差はないと書かれています。
(5)アルブミンとリンを評価
 アルブミンが低ければ代謝性アルカローシス、リンが低ければ代謝性アルカローシスがあります(どちらも高ければ代謝性アシドーシスと考えます)。この方は低アルブミン血症があるので、代謝性アルカローシスがあります。リンは測定されていないので、評価不能です。
(6)CLを補正
 補正CL=CL×140÷Na
 補正CL=97×140÷137=99
 CLが低いです。SIDもCLも低い場合の解釈は書かれていないのですが、酸の増加によるものだと思います。SIDが高くCLが低い場合には代謝性アルカローシスです。もしかしたら、代謝性アルカローシスもあるのかもしれません。
 Stewart法には入っておりませんが補正HCO3(HCO3+AG−12)を求めると31となるため、代謝性アルカローシスもあると考えて良いのでしょう。

上記より
・酸の増加による代謝性アシドーシス
・低アルブミン血症による代謝性アルカローシス
・CL欠乏による代謝性アルカローシス
・呼吸性アシドーシス
となります。

 血液ガス分析のデータ(Na130、CL109)を使ってみます。

(1)Na-CL 21で低く、代謝性アシドーシス(AG非上昇型)が疑われます。
(2)SID 19.56です(NaとCLが入っていないので変化なしです)。
(3)SIDギャップ 1.44で正常です。酸の増加はないと判断されます。
(4)(5) 変わりありません。
(6)補正CL=109×140÷130=117でCLが高いです。CL高値の代謝性アシドーシスがあります。

 上記より
・希釈によるアシドーシス
・CL過剰によるアシドーシス
・低アルブミン血症による代謝性アルカローシス
・呼吸性アシドーシス

 となります。酸の増加が消えて、CL過剰になってしまいますが、激しいアシドーシスであることに変化はありません。

 血液ガスは難しいです。このStewart法はなかなか理解に苦しみます。紹介させて頂いた本を5回ほど読みましたが、まだ理解できません。7回以上読むべきと言う主張を最近聞いたので、あと2回は頑張ります、、、、、、、知らんけど。

 それから、これを最初に言っちゃあおしまいよってことなので、書きませんでしたが、Anion gapは乳酸アシドーシスを正確に予想できるかと言えば、そうではありません。例えばこちらの論文には、AGが12以上、あるいは16以上という基準を用いても乳酸が4mmol/L以上ある患者さんの40から70%を見逃したと記載されています。ごちゃごちゃ言ってAG計算するより乳酸を直接測ったら良いじゃん(というか今乳酸が測れない血液ガス分析装置は、、、、、、です)と言うことになります。

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