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鉄欠乏性貧血の検査としてTIBCはいらないのか?

 鉄欠乏性貧血を疑った時に、血清鉄とTIBC(総鉄結合能)、フェリチンをオーダーするのは必須だと思っていました。血清鉄とフェリチンしかオーダーしない先生がいる(それも一人ではない)ので調べてみました。私は必ずTIBCもオーダーしてTSAT(トランスフェリン飽和率)も計算しています。TSAT=血清鉄/TIBC×100です。

 こちらのガイドラインをレビューした文献をご覧ください。英語が得意な方は、そちらを読んでいただけば私の解説など不要です。以下、いくつか抜粋します。

TSAT to define ID(Iron deficiency)
 With respect to TSAT, about one-half of selected guidelines (10 of 22) proposed various thresholds.
 Three guidelines proposed the 15–16% threshold for TSAT; indications included IBD (n = 2) (4, 43), CKD (n = 1) (26), and the general population (n = 1) (43).
 Seven guidelines proposed the 20% threshold for TSAT in CKD (n = 5) (19, 22, 32, 42, 45), the general population (n = 2) (18, 22), children (n = 1) (45), and IBD (n = 1) (4).
 Other guidelines proposed higher thresholds for TSAT, such as 25% (n = 1) (18) and 30% (n = 1) (45) in patients with CKD, whether undergoing hemodialysis or not. The highest threshold was reported in the situation of functional ID in chemotherapy-induced anemia, because TSAT may rise to 50% (ferritin be- tween 30 and 800 mg/L) in these patients (n = 1) (25).

 途中に出てくるFunctional IDとabsolute IDは以下のように定義されています。

 Functional ID is defined by serum ferritin concentrations .100 mg/L and TSAT ,20%, whereas absolute ID is defined by serum ferritin concentrations ,100 mg/L and TSAT ,20%.

 機能的鉄欠乏は血清フェリチンが100mg/L以上かつTSAT20%未満と定義され、絶対的鉄欠乏はフェリチンが100mg/L未満かつTSAT20%未満とされる。

 鉄欠乏を確定するためのTSAT(トランスフェリン飽和率)
 TSATに関しては、約半分(22のガイドライン中10のガイドライン)のガイドラインがTSATを採用している(基準値は様々)。3つのガイドラインが15〜16%以下を採用している。炎症性腸疾患(文献4、43)、慢性腎臓病(文献26)、一般人口(文献43)に関してである。
 7つのガイドラインが20%以下を採用している。慢性腎臓病に対しては5つの文献が、一般人口に関しては2つの文献が、小児には1つ(文献18)、炎症性腸疾患には1つ(文献4)である。
 その他のガイドラインはより高い基準値を採用しており、文献18は25%、文献45は透析の有無にかかわらず慢性腎臓病では30%以下としている。
 最も高い基準値を設定しているのは化学療法による貧血における機能的鉄欠乏に関するもので、これらの患者ではTSATが50%まで上昇することがある(フェリチンは30から800mg/L)のが理由である。

 文献の考察には以下のようにありました。

 TSAT was proposed as an alternative or complementary di- agnostic test for ID by 45.5% (10 of 22) of guidelines. TSAT reflects iron availability for erythropoiesis (18). TSAT decrease is one of the earliest biomarkers of ID, whether absolute or functional. Its main advantage is a normal range that is narrower (between 20% and 40% in adults) than that of ferritin, which is attributable to lower physiologic variation (18). In our systematic review, the TSAT threshold for the diagnosis of ID ranged from 15% to 25%. This threshold was broadly similar for absolute and functional ID. Seven of 10 guidelines recommending TSAT for ID diagnosis proposed 20% as a threshold for TSAT in CKD (n = 5), the general population (n = 2), children (n = 1), and IBD (n = 1). TSAT alone cannot differentiate absolute ID from functional ID.

 TSATは45%のガイドラインで鉄欠乏性貧血における代替、あるいは補助的な検査であるとしている。TSATは赤血球産生における鉄の利用を示すと考えられている。TSATは、鉄欠乏性貧血(絶対的、機能的に関わらず)において最も早く減少するマーカーの一つである。TSATの利点は、生理的変動が少ないため、フェリチンよりも正常範囲が狭いことである(成人では20%から40%の間)。このレビューでは、鉄欠乏性貧血の診断におけるTSATの基準値は15%から25%と開きがあった。この開きは絶対的鉄欠乏でも機能性鉄欠乏でも同じであった。鉄欠乏性貧血の診断にTSATを推奨するガイドライン10のうち7つは20%以下を診断の基準としていた。TSATだけでは機能的鉄欠乏と絶対的鉄欠乏の区別は出来ない。

 治療に関しての考察です。

 In all other clinical situations for which no target concentration is specified in guidelines, it seems logical to maintain iron supplementation until a return to reference values for ferritin and TSAT.

 ガイドラインにおいて特定の疾患を対象としない状況において、フェリチンとTSATが正常になるまで鉄剤の補充を継続するのが良いと思われる、、、、、、知らんけど。

 私の考察

 ガイドラインの45%がTIBCを測定することを推奨しているとのことです。逆に55%のガイドラインは必須と言っていないので、TSATを必ずしも測定しなくても良く、ましてや測定しないことをおかしいというべきではありません。

 TIBCの保険点数は11点で、通常110円です。CTなどに比べたら桁違いに安いです(CTは1万円以上します)。また、TIBCだけ測ることはあまりないでしょうし、10項目以上検査することが多いですから、その際は金銭的負担の増加はゼロです。また、通常の生化学検査ですから採血をし直す必要はありませんので身体的な負担もありません。

 よって、私は必ず測るようにしよう。

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Kim

UpToDateにはフェリチンが30以下であれば、それだけで鉄欠乏性貧血と診断でき、フェリチンが30以上であれば血清鉄とTIBCをオーダーし、TSATが20%以下なら鉄欠乏性貧血と診断するとありました。まずはフェリチンだけで結果を見て必要に応じて追加すれば良いですね。
by Kim (2021-09-22 16:54) 

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