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専門家とは何でしょう [研修医教育]

 先日SNSで喘息の人に造影CTなんてあり得ない、絶対するなと言う呼吸器内科の先生がいると聞きました。私はそんな専門医は必要ないと思います。若い医師の皆さんは是非そのような専門家にならないようにしてくださいね。

 医療で大切なことは、患者さんが困っている事を解決することです。解決できない問題ももちろんありますが、その場合には出来るだけ不利益が少なくなるように一緒に考えることが大切です。

 患者さんはもともと色々な問題を持っており、教科書やガイドラインに書いてある事が出来ない場合がたくさんあります。例えば以下のようなことです。

 造影CTを撮りたいが、腎機能が悪いため造影CTが出来ないと言われた
 今から緊急手術が必要だが、全身状態が悪すぎて麻酔科から手術を拒否された
 上部消化管出血が疑われるが、全身状態が悪くて胃カメラは出来ないと言われた
 くも膜下出血を疑ったので直ぐ脳外科に紹介したら、CTも撮らずに紹介するなと言われた

 上記の事は専門家として適切な対応かと言えば、そうではないと私は思います。私はへなちょこ外科医&救急医ですが、上記のこと、全て出来ますよ。だって、簡単です。出来ないと言えば良いんですから。腎臓が悪いから造影できない、こんな状態が悪かったら麻酔かけられない、胃カメラも無理、CTぐらい撮っておけよな。専門家である必要はないでしょう。若い皆さんも出来ますよね。

 専門家とは、こんな感じだと思います。

 造影CTはせずに(本当はして良いんですが)MRIはどうでしょうか、単純だけでも取りあえず撮像して放射線科の先生に知り合いがいますから連絡してオンラインで診てもらいましょう。
 全身麻酔は難しいので硬膜外麻酔+マスク換気はどうでしょう。
 胃カメラは危険もありますが、しないとと死んじゃいますからと私が家族に説明しますからやりましょう。
 頭部CT撮ってないなら今から撮りましょう、確かに特殊な条件で撮像した方が良さそうですね。

 つまり、専門的な知識を、困難な患者さんに適応するのが専門家です。困難な患者さんは対応できないのは専門家ではありません。

 若い先生方は是非変な専門家にならないようにお願いいたします。

 ちなみに最後のCT撮らずに脳外科は、実際にやってみたことはありませんが、私は学生時代の講義でそう言われましたし、マッシー池田先生もそう言っておられます。専門でない医師がオーダーした頭部CTでは少量のくも膜下出血は見つけられないので、再度条件を設定して撮像されます。最初に撮像したCTの意味は?お金も時間もかかります。下手したら自分がオーダーしたCTのせいで再出血するかも知れません。
 マッシー池田先生は言っています。「SAHの訴えの中で一番感度が高いのは頭痛だから、具体的には,突然発症の頭痛を訴える意識清明の患者さんが来院したら、CTもとらず、腰椎穿刺も行わず、そのまま脳神経外科に紹介するのが上策」であり、「真っ当な脳神経外科医であれば,たとえ腰椎穿刺までやってSAHが否定されたとしても、患者さんとともにSAHでなかったことを喜ぶとともに、どんな軽症のSAHも見逃さないとするあなたの熱意を、患者さんの目の前で誉めてくれるはずだ。」と。
 しかし、実際にやってみたことは繰り返しますがありません。一度やってみたいものです。そして、この真っ当な脳神経外科医のような専門家になりたいです。


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