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救急部についてのお話〜6年前のあいさつから [医師を目指す人へ]

 6年前に勤めていた群馬県の病院でのお話です。その病院が厚生労働省から救急功労賞?をいただいた事による祝賀会がありました。厚労省から功労賞って面白いとある先生が言われていましたが(^^)/。

 私は救急部長でしたので、あいさつをさせていただきました。私が勤め始めて半年後ぐらいのことでしたので、私が勤める前の業績に対する表彰でしょう。ある看護師さんから、理事長より話が長かったと言われましたが、救急に対する想いをお話しさせて頂きました。たぶん人生で一番長い演説ではなかったかと思います。以下に載せておきます。良かったら読んでください。

 今日は3つお話しさせていただきます。

 一つ目は、うちじゃない科というお話しです。
 うちじゃない科とは、福井大学の寺澤先生が言われていたお話しです。一般外来でもありえますが、救急では特に、どの科の担当の患者さんかというのが問題になります。意識障害一つとっても、脳外科かと思えば、半分以上は内科系の疾患だとされています。頭はうちじゃない、腰が痛いのはうちじゃないと言っていたら救急は回りません。そう言う人たちを「うちじゃない科」と言っているそうです。
 亀田総合病院は千葉県の東京からかなり離れた場所にあるのに、遠くからも患者さんが来る有名な病院ですが、合い言葉は「Always say Yes!」だそうです。言われたことはとにかくやってみると言うことです。
 是非うちじゃない科にならないように頑張りましょう。

 二つ目は救急部は面倒を押しつけているのでは無いと言うお話しです。
 皆さんが思っておられるように、救急は面倒な仕事です。ルーチンワークを一時中断しなければならないとか、専門外の患者さんを担当しなければならないと言うストレスがあります。
 医師の場合には、何科でもないと言う患者さんが来られた場合、自分が主治医となる事が多いです。自分の仕事が増えます。
 しかし、救急患者さんは不定期に来られますので、誰かがしなければならない仕事です。救急車を受けないと、病院は急性期病院でいることが出来なくなり、みなさんの半分くらいはたぶんクビになります。
そのために救急部があると思ってください。救急部がある利点は、専門の医師や看護師が、専門に専念できるという点につきると思います。胸が苦しい、胸が痛いという患者さんを全部循環器の先生が担当していたら、心カテをする時間がないでしょう。交通事故は全て整形外科としていたら、負担が大きく手術が出来ないでしょう。
 よって、私たち救急部のスタッフは、病院のスタッフの負担を減らせるようにいつも気をつけています。救急のスタッフは、そういった皆さんのストレスを充分知った上で働いています。診察のお願い、入院のお願いは、充分バランスを考えてしています。決して特定の科だけに押しつけているのではありません。お忙しいと思って、自分でも診られそうだと思えば、救急科で診させていただいていることもあります。
 是非Always say Yes!で、救急入院を受け入れていただければ幸いです。
 また、重症患者さんを受け入れると、病院の利益は上がります。重症患者さんを出来るだけ断らないようにするにはどうしたらよいか?外来のスタッフはいつも考えて頑張ってくださっています。それを是非忘れないでください。
 救急の利点はもう一つあります。患者さんの予備軍を呼び込めることです。救急患者さんが来院すれば、必ず家族を呼んでいます。時には会社の上司や友達が来ます。人間は初めて行くところは少し気が引けますが、部下や友達、あるいは家族が救急で病院を受診し、お見舞いに駆けつけていれば、もし自分が病院にかかろうと思った時、一度は建物に入っている当院受診のハードルは低いはずです。
 救急車を一台断ると、救急隊の方も良い気分では無いでしょうし、かなり多くの不利益があるのではないでしょうか。救急車1台で複数の患者さんを見ているのだというつもりでおります。

 三つ目は、若い先生の教育の場としての救急です。
 当院では1年目で麻酔科と一緒に救急を研修することが必須になっています。これは厚生労働省の示したプログラムに則ったものです。何科の医師になるにしても、救急対応は出来て欲しいと言う国民の希望があるからです。
 野球で言えば、1回表のワンアウト一塁は送りバントがセオリーで、プロだったら打ちに行ったりしても良いでしょうが、病院では必ず送りバントです。研修医の先生は特にです。よって医師の皆さんは、自分がやるのとは違った診療をご指導いただきたいですし、スタッフの皆さんは、指導医がやるより時間がかかったり面倒なプロセスを経ることをご了承ください。
 また、入院加療となる場合、救急科で担当させて頂き、研修医の先生の勉強にと言う場合がありますので、ご協力頂ければ幸いです。

 ちなみに、こちらを真似して三つのお話にしたのですが、もちろん、届くはずもありません。


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