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心拍がある人に胸骨圧迫をしても良いのか? [CPRの基礎]

 心肺蘇生のガイドラインには、倒れている人を見かけたら、一般市民の人は反応と呼吸を確認し、どちらもなければ胸骨圧迫から心肺蘇生を開始とされています。医療従事者や蘇生に精通している人は脈拍をチェックしましょうとされていて、脈拍が確実に触れると判断される時以外には、胸骨圧迫から心肺蘇生を開始しましょう。

 ここで多くの方から疑問が出ます。一般市民の方でも医療従事者であっても、脈拍がある人に対して胸骨圧迫をする事になるのではないか?というのです。心拍のある人に胸骨圧迫を行うと心室細動を誘発するのではないかという意見もあります。

 まず前回も紹介させて頂いた、救急蘇生法の指針〈医療従事者用〉のP.20にあります。非心停止患者さんに一般市民により胸骨圧迫がされた方の報告では、気胸や肋骨骨折などを起こした人は0〜2%であったとのことです。胸骨圧迫による致命的な損傷は報告されていないとのことです。

 なので心肺停止ではないかと疑われたら、躊躇なく胸骨圧迫を開始しましょう。胸骨圧迫をしない事の方が不利益が大きいです。

 また胸骨圧迫によって心室細動が起こるので、胸骨圧迫を簡単にしてはいけないと言う人がいますが、AHAのガイドライン2015には以下のようにあります。書籍だとS449です。ネットだとこちらの「Management of cardiac arrest」→「Rhythm-based management of cardiac arrest」→「VF/pulselessVT」→「Defibrillation strategies for ventricular fibrillation or pulseless ventricular tachcardia : single shocks versus stacked shocks」→「2015 evidence summary」にあります。

 There is evidence that resumption of chest compressions immediately after a shock can induce recurrent VF, but the benefit of CPR in providing myocardial blood flow is thought to outweigh the benefit of immediate defibrillation for the VF. Another study of patients presenting in VF after a witnessed arrest concluded that recurrence of VF within 30 seconds of a shock was not affected by the timing of resumption of chest compressions. Thus, the effect of chest compressions on recurrent VF is not clear.

 私の訳です。

 電気ショックの直後に胸骨圧迫を再開すると心室細動を再発させる可能性がある。しかし、再発した心室細動に対して直ちに電気ショックを再度行う事よりも、胸骨圧迫によって心筋へ血流を与えることの有用性が上回る。別の研究では、心室細動による心停止で、心停止が目撃された患者は、電気ショック後30秒以内の心室細動の再発は、胸骨圧迫の再開のタイミングとは関連がなかった事が示されている。よって、胸骨圧迫が心室細動を再発させるかどうかは明らかになっていない。

 と言う事で、胸骨圧迫をしない理由はほとんどありません。是非疑ったら胸を押してあげてください。それをするかしないかで生存率が4倍違うという報告があります。

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