SSブログ

脂肪乳剤を投与する場合単独ルートでなければならないのか? [研修医教育]

 久しぶりの投稿です。以前もこの話題を書いた気もしますが、何度でも書きます。

 いつものように結論から。脂肪乳剤は側管から投与しても大丈夫です。ただし、添付文書には違反することだけ注意が必要です(と言っても知っておくだけで良いです)。

 脂肪乳剤は、末梢静脈からも投与できる上、カロリーが1g当たり最も高く、その上炭素が少ないので二酸化炭素の排出量が少なくなり、動脈血二酸化炭素分圧が下がる可能性があり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の人にも有用です。浸透圧も等張であり、静脈炎の治療にも使えます(とされているのですが、静脈炎を起こす人もいます)。

 とても有用な輸液製剤なのですが、イントラリポスの添付文書には以下のようにあります。

 本剤に他の薬剤を混合しないこと

 この記載によって、イントラリポスを点滴する場合には、ルートをもうひとつ確保する必要が出てきます。私が知っている範囲ではありますが、ほぼ全ての病院で、薬剤師さんが看護師さんに「点滴ルートをもう一本確保して投与してください」と言いますので、患者さんの腕には針が二つ刺されることになります。

 しかし、患者さんの立場に立てば、何で点滴がすでに入っているのに、抗菌薬とかはその点滴の横から(これを側管と言います)入れてくれるのに、どうしてこの白い点滴もそうしてくれないのか?と思いますよね。
 看護師さんも、エーあの患者さん血管が細くて、やっと入ったのに、また点滴取るの?と思うかも知れません。

 薬剤師さんは、このようなことを知っているでしょうか??それでも単独ルートで行かなければならないのでしょうか?いやこの薬はCV入れてくださいという人がいますが、CV入れるってどんなことか知ってますか??本当にCVじゃないとダメなんですか??添付文書に書いてありますと言う返答が薬剤師として患者さんのためになっていますか?

 おっと横道にそれてしまいました。

 詳細に勉強したい方は、こちらの文献をご覧ください。

 脂肪乳剤が他の薬剤と混合すると良くない理由は、脂肪の塊(脂肪滴)の大きさが大きくなってしまい、それが肺などの血管に詰まって問題となる可能性があるためです。よって、脂肪滴の大きさが大きくならなければ問題ありません。

 点滴の側管から脂肪乳剤を入れるモデルを作って実験したようです。アメリカには基準があって、「5μmよりも大きい粒子の体積が全脂肪の0.05%未満であること」と定められているようです。

 点滴の側管から脂肪乳剤をゆっくり入れた場合でも(メインのルートが100ml/時と早いですが)アメリカの基準を満たしていたそうです。

 よって、脂肪乳剤は安心して、側管から投与できます。が、現実は色々で、あなたが医師であれば、看護師さんにそう指示すれば、行えるかも知れませんが、あなたが看護師や薬剤師(それもトップではない)である場合には、色々と障害があるかも知れません。

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。