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救急救命士の方は、低血糖の患者さんにブドウ糖の投与が出来ます。 [救急救命士について理解を!]

 救急救命士の方に理解を!と言うカテゴリーを作ってみました。

 まず最初にですが、救急隊員の方は色々なレベルの人がいます。簡単に言えば、救急救命士さんか、そうでない人たちかの二種類に分けられます。救急救命士さんは、大ざっぱに言えば、救急車内の看護師さんです。看護について学んでいないから看護師じゃない!とか、看護師さんからおしかりを受けそうですが、逆に看護師さんは救急救命士の免許がなくても同じ事が出来ます(理屈上です)から、まあお許しください。

 救急救命士さんは、救急現場や救急車内で病院へ患者さんを運ぶまでの間、医師の指示を受けて色々な医療行為が出来ます。包括指示と言って直接指示を受けなくても良い場合もあります。皆さんの命を守るために日々努力されていると言う事です。

 さて、低血糖とは、一般の方が言うのとは少し違って、意識障害を起こした患者さんでは必ず最初に考えなければならない病態です。なぜなら頻度が高く、簡単な処置で改善できる上、長時間(90分以上と言う意見があります)放置すると不可逆的な(元に戻らないと言う意味です)障害を起こす可能性があるためです。

 低血糖が疑われた場合には、救急救命士さんは治療を行う事が出来ます。すぐに血糖の測定が出来る機械を用いて、必要ならば点滴をとってブドウ糖を注射する事が可能です。これもややこしいのですが、救急救命士さん全員が出来るかと言うと、そうではなく、講習を受けて認定された人だけに許されています。

 医師の場合には、患者さんの年齢が何歳だろうと、血糖値がいくつだろうと、医師が必要だと考えればブドウ糖を投与する事が可能ですが、救急救命士さんたちは色々と制限があります。こちらの文書を読んでいただくと色々書いてありますが、意識レベルが10以下(自分では目を開けていない状態です)、血糖が50未満で年齢が15歳以上の人に限られます。

 つまり、明日誕生日の14歳の人や血糖が50の人には投与できないと言うことです。えー!そんなの別にいいじゃん!と思いますが、色々で仕方ないです。いいじゃないの!!と思った医療関係ではない方々、是非お役所に意見をお願いします。国民が良いと言えば、良いと言う方向に動くはずです。

 ここからは医師向けの内容です。特に救急患者さんを担当する事があるお医者さんは、以下のような発言に注意してください。

「血糖が50でしたのでブドウ糖投与は出来ません」と言われたのに対して「いいじゃん、低血糖なんだからブドウ糖打ってきてよ」
 確かに低血糖の定義は血糖が70以下のようです。しかし、救急救命士さんは、血糖が50以上あったら、ブドウ糖は打てないと言う事を知っておいてくださいね。血糖が49と50で何が違うんだと言えばおっしゃる通りなのですが、乃木坂46とAKB48は違うと言うのと似てませんかね(似てないか。どっちもあんまり変わりませんね)。医師が良いと言ったら良いじゃないかと言う話しもあるのですが、このあたりは歯止めがきかなくなるといけないと言う理由のようです。多くの医師、救急救命士は常識があって、とんでもない事にはなりませんが、まれにびっくりするような事をする人がいるので、そうならないための制限だと考えてください。

「明日誕生日で現在14歳なのでブドウ糖投与は出来ません」と言われたのに対して「いいじゃん、15歳でしょ、それは!」
 14歳の最後の日の23時59分と、15歳の誕生日の0時1分と何が違うのか確かに分かりませんが、仕方ないです。そういう決まりなので、、、、、、、、

「何で勝手に血糖測ってるんだ!」
 血糖の測定その物は特定行為(医師の具体的な指示が必要)ではないので、救急救命士の資格を持っていれば、医師の指示をもらわなくても測定出来る事を知っておきましょう。

「くも膜下出血だったどないすんねん!」
 おっしゃる通りです。くも膜下出血や脳出血で意識障害を起こしているのであれば、血糖測定やルート確保による痛みで再出血するかもしれません。そのことは救急救命士さんたちはよく御存知です。低血糖の対応が出来るようになるための講習では、そのことがたたき込まれます。よって、救急救命士さんたちは、くも膜下出血ではないか?と言う事をしっかり調べています。研修医より出来る方々です。くも膜下出血の否定はもちろん困難であり、色々議論のあるところですが、救急救命士さんたちは、刺激を出来るだけ与えないよう、一度は所見をとるように言われています(そうおっしゃる脳外科の先生がおられるようです)。よって、許容していただければ幸いです。どうしてもダメとおっしゃるのであれば、あらかじめ消防署に申し入れておくのが良いでしょう。当院へ搬送する場合には血糖値の測定はしないでくれと。

「そんな時間のかかる事してないでさっさと連れて来い!」
 救急車の要請があって(入電、以前は覚知と言っていましたが、最近は入電と言うようです)から病院へ到着する時間(病着)は救急隊の方も気にしていて、現場や車内で処置をする(内容によっては救急車を停車させる必要があります)事と病着が遅くなる事の利益と不利益を考えて行動されています。我々医師は病院で待っているだけですが、現場の救急隊の方は、さまざまな事を考えて行動されています。低血糖だったら乃木坂46病院だけど、低血糖じゃなかったら乃木坂46病院には脳外科がないからけやき坂46病院へ運ぼう。両者の病院は現場から反対の方向にある、、、、、、なんて時は、血糖測定してから搬送先を決める事になりますので、乃木坂46病院に勤めていると、結果的に現場滞在時間が長くなることもあります。なんでいつも現場滞在時間が長いんだ!と思うかもしれませんが、それなりの理由があるのです。エビデンスレベル未確定ですが、救急外来にいる医師や看護師さんによっても搬送先が変わる事もあるとかないとか。あなたが三次病院に勤めているとして、いつも「こんな軽症例うちへ連れて来るんじゃないよ!NGT48病院があるじゃないか!」等と言っていると、やはり血糖測定をしてから問い合わせようと言う風になってしまいます。そんな発言してませんか?
 一方的に非難するのではなく、是非、何故現場滞在時間が長くなったのかを聞いてみてください。色々気付きがあると思います。

 と言う事で、いらいらしている時には動画をごらんください。



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田舎消防救命士

いつも楽しく拝見させて頂いております。
今回のブログ内容、是非皆さんに読んでもらいたいです。

医療サイド、患者サイドから色々と言われる事が多いですが、先生のようなドクターが居ると思うと心の支えになります。

これからもブログ楽しみにしております。
by 田舎消防救命士 (2019-02-03 12:40) 

Kim

田舎消防救命士さん、コメントありがとうございます。

また、いつも読んでいただき感謝申し上げます。私もしっかり理解しているとは言えませんが、少しは頑張っているつもりなので、多くの人に救急救命士さんについて分かっていただけるように努力したいと思っています。色々教えていただければ幸いに存じます。

山Pが主演で映画かテレビドラマが出来るように、救急救命士さんが主人公の小説でも書いてみようと思うのですが、才能が、、、、、、

by Kim (2019-02-03 17:45) 

田舎消防救命士

小説楽しみにしております(笑)
by 田舎消防救命士 (2019-02-06 00:30) 

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