SSブログ

検査データだけで全てが分かるわけではありません。 [看護師さんへ]

 患者さん向けの話でもあり、研修医の先生向けの話でもあります。

 看護師さんも患者さんのデータをよくご覧になっています。時々、患者さんの○○が高いので治療をしなくて良いのでしょうか?と我々の見逃しをなくすために努力をしてくださいます。当然「ありがとうございます。見逃していました!」という事もありますが、それは承知で、データは異常だけれども、この患者さんには問題ないから放置しているという事もあります。カルテに書くまでのことじゃないと考えていたと言う事です。

 そのような場合は、カルテに「これこれこう言う理由で問題ないので介入は不要」と付け加えることにしています。

 さて、検査データとは何なのか?考えてみましょう。

 これから話題になると思われるので、インフルエンザの検査を例に考えてみます。

 医師が知りたいのは、患者さんがインフルエンザウイルスに感染しているかどうか?です。なぜなら、インフルエンザウイルスに感染していれば、他の人にうつす可能性があり、例えば入院患者さんであれば、感染対策を考えなければならないからです。しかし、先に言っておきますが、インフルエンザに感染しているかどうかを調べる検査はありません。ないんですよ!

 ちょっと専門的になりますが、感染しているとはどういうことかというと、以下の三つを満たす場合と言われています。

(1)病原体が身体に侵入している。
(2)病原体がある組織で増殖している。
(3)それによって、身体に何か不利益が起こっている。

 上記の一つでも満たさなければ、感染とは言いません。たった一つの病原体が侵入しても(寄生虫は除きます)感染することはありません。増えないと感染しません。
 例えば、腸の中には大量の細菌がいますが、感染しているとは言いません。なぜなら、腸内細菌は我々に悪さをしていないからです。(1)(2)は満たすのですが(3)を満たさないという事です。

 インフルエンザの検査は、鼻の粘膜にインフルエンザウイルスの抗原があるかどうかを調べる検査です。細かいことは抜きにして、(1)を調べる検査です。あるいは(2)も有りえるかも知れません。

 よって、インフルエンザ検査が陽性でも、インフルエンザウイルスに感染していない場合があります。(3)のインフルエンザウイルスが悪さをしていると言う事を証明する検査は今のところ存在しません。どうしているかというと、医者の判断しかないのです。今の時期だし、インフルエンザと言われた(その人が本当にインフルエンザウイルスに感染していたかも定かではないのですが)人と接触しているし、インフルエンザかなあ?みたいな感じです。インフルエンザはほとんど自然に治りますし、インフルエンザ治療薬は大きな副作用が発生する頻度が低いですので、インフルエンザの可能性を高める必要はあまりありません(この辺りの事は以前書いた気もしますが、今見つけられませんでした)。

 繰り返しますが、インフルエンザの検査は、インフルエンザ感染であるということを証明する検査ではないのです。

 血圧もそうですが、血圧が低いと通常は組織への酸素供給が減ってしまってまずいだろうから、血圧が低いと問題になるのです、血圧そのものがどうこうではなく組織への血流を知りたいのです。本当は。

 別の例を挙げると、ある道路が充分な広さかどうかを渋滞しているかどうかで検査したとします。その道路が使いやすいかどうかと言う点で言えば渋滞しているかどうかは良い指標になると思いますが、道路が狭くても交通量が少なければ渋滞しませんし、道路が広くても交通量が広ければ渋滞するでしょう。また信号が上手く連携していなければ渋滞するでしょう。決して道路の広さを示す良い指標とはなりません。
 検査も生産量と排泄量によって値が異なる物があり、排泄能の指標として使っているんだけれど、実は産生量が増えていたために検査値が上昇していたなんて事もあります。直接知りたいことを調べられる検査というのはそんなにないんですよね。

 よって、検査データがこうだから治療すべきだとか、しないで良いとか、単純なものではありません。インフルエンザの場合であれば、感染しているかどうか?感染しているとして治療が必要かどうか?は医師が別の条件を考慮して判断を下さなければならないのです。医師は特にそれを説明はしませんが、そういう物です。

 下町ロケットでバルブの耐久試験が3000回を超えました!みたいなシーンをやっていますが、あれもバルブがロケットの打ち上げできちんと動くかを知りたいのであって、3000回とか5000回耐えられたら大丈夫だろうという事でやっているだけです。実際の打ち上げで壊れずにすむか?と言う事を事前に調べる方法はたぶんないでしょう。

 昔イチローさんがセオリーに反するプレーをしたそうで、それに対して記者がどうしてあのようなプレーをしたのか?と聞いたところ、引退したら話しますと言ったそうです。つまりは、単に答えられるような話じゃないという事でしょう。

 最近診療看護師さんを中心に臨床推論というような言葉が流行っていますが、医師は普段からそれをしているのです。患者さんや看護師さんに本当は説明すべきなのでしょうが、簡単に説明できる話ではないので、まあ検査データがこうだからこうでいいんじゃない?まあ、この人は治療しなくても大丈夫でしょ、、、、、、等と言っているんです。どうしても知りたければ、一晩語り明かすぐらいの時間が必要です。希望があれば、いつでもご連絡ください(^^)。


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。